八方尾根のコース整備に参加してみた。「HAPPO‐ONE PANORIN KUSAKARI」

山の高いところがなかなか白くならず、やきもきしながら過ごす今年の秋。そんななか、スキー場の許可のもと、有志によるコースの草刈りをするイベントが開かれた。
いち参加者として作業に加わった模様をレポートしよう。

このイベントの舵取り役は小林優太、北江正輝、山崎恵太、山下龍、佐藤 太一ら「HACHI CREW」。
八方尾根をベースに活動し、スキー場のアドバイザーをしている彼らが、目を向けたのは隠れた名所、パノラマ林道。通称パノリンだ。

パノリンはパノラマコースを迂回する初心者向けの迂回路コース。いつの頃からこのコースの各所にある、サイドヒットや落ち込み、迂回路の壁が面白いと、周りを気遣いながら楽しむ人が増えていき、いまでは細かな地形を拾いながらコースを3次元に楽しむスノーボーダーやスノースケートはもちろん、スキーヤーもフリースタイルな匂いを嗅ぎつけて、このコースをお気に入りにする滑り手は多い。

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小雪の影響もあるのか、最近はこのコースの壁や斜面に伸びたブッシュや垂れ下がった枝がニョキニョキと点在しているため、安全に遊ぶためにきれいにしよう、ということで「HACHI CREW」が草刈りをイベントにしてインスタグラム上で声がけをしたのだ。

前日に現場を見た人が言うには、ススキは背丈以上に伸び、草刈りをする場所はなかなかの急斜面になるという。現場は案外ハードなようだ。 雪のないパノリン、パノラマ林道はどうなってるのだろうか。

土曜の8:30に集まった人たち。円の中心で作業の説明をする北江正輝

草刈り当日。集合場所の咲花ゲレンデ駐車場に続々と人が集まってくる。それぞれが愛用の刈払い機やチェーンソーなどを手にした、作業慣れした感じの人が2/3ほど、それ以外は鎌や手ノコを持った人が、総勢20人ほど集まった。まずは参加者一同、顔を合わせて作業の流れを確認。

パノリンのコースでも、とくに遊べる3ヵ所を選別して、草刈り場を設定。それぞれを小林優太、北江正輝、山崎恵太がリーダーとなって作業現場に向かうことになった。ひとつのグループは大体6〜8名ほど。手際よく準備を進めて、咲花駐車場から林道を車で上がっていく。

パノリンへ向かう林道。いつもなら真っ白な頂を見せる山もご覧の通り。山の裏や北面に僅かに先日の降雪が残る。紅葉も終わりかけで、あとは雪が降るのを待つばかり

現場には当然、雪はなく、白くないコースを見ながら、参加者がそれぞれの頭のなかで、滑るラインを想定しつつ、どこのヤブや枝を刈ったらいいのかイメージに入る。とくに誰が指示を出すのでもなく、壁にとり付き、草刈りがスタート。径が5cm以上の硬い木や枝はチェーンソーで、それ以下のものは刈払い機でカットしていき、滑走ラインを妨げたり、安全に滑るのに邪魔になりそうな障害物を手際よくカットしていく。

迂回路から少し斜面を上がったところで伸びる枝をチェーンソーでカット。簡単そうに見えるが足元は不安定かつヌメヌメと滑る。安全には最大限に留意して作業を進める

壁は思いのほか斜度があり、足元はぬかるみ、刈ったヤブや朝露に濡れた草が滑って、壁に張り付くのも難儀するほど。滑っているときはまったく気にならない斜度もスキーを履いていないと、こんなにもズルズルと滑り落ちそうになるとは。

事前に伝えられていた通り、なかなかハードな作業。キリいいところで斜面から降りて、全体を見渡しながら、どのラインで滑るとヤブが邪魔になるのかなどを話をしつつ、ラインを想像して次の作業場所へと移っていく。

刈り取る斜面を見ながら、イメージを膨らませる。手前は疲れが溜まったときに頼りなる白馬の柔道整復師「Mt.CARE」の武藤和結樹。その横には想像が止まらない様子の山崎恵太

全員が滑り手だから、それぞれが滑るラインをイメージしながら草刈をしている。
「雪がついたら雪の重みでこの枝は寝るからさ、この辺りはそこまで刈り込まなくていいよね」とか「雪の重みで枝が垂れ下がるから、入るときに邪魔だからカットしておくわ」、「あまり綺麗にしすぎると、ジャンプのきっかけがなくなるから適度に切っておけば……」など、みんなで話しながら場が盛り上がりつつ、手足が動く動く。
ここにいる人たちはパノリンが好きなのはもちろんのこと、滑ることが本当に好きな人たちばかりだ。

ヤブまみれの斜面へ降りていき、刈り取っていく。バッサリと切ってしまう箇所もあれば、雪の重みで倒れるように寝かせられるように切り込む箇所も。そうすることで雪が溜まりやすくなり、地形にきっかけができあがる
斜面の各所に入って各々が考えながら手入れをする。ここ、パノリンのどの場所か分かりますか?

「やり始めたら、あっちもこっちも気になっちゃって……」と作業を終えるタイミングを見失うほど夢中になった北江正輝は、一種の”ヤブ刈りHIGH”に。昼前には、はじめに設定した作業場所をおおかた刈り終え、咲花の駐車場まで降りていく。

HACHI CREWを代表して北江正輝が最後にまとめた。

「スキー場の許可を得て作業ができ、怪我人なども出ずに安全にできたのが良かった。初めての開催だったけど、ヤブ刈りの様子がわかったので、毎年もしくは木が伸びたタイミングでまた開催したい。

今回はハードな場所が多かったけど、場所によっては鎌や手ノコを使って安全にできる作業なので、誰でも参加できるような形にして、広げていきたい」

仕事などで途中で抜けた人もいたが、無事に作業を終えて咲花ゲレンデの駐車場へ戻ってきた。ハードな作業の割にみなさん、清々しい感じ。

滑る場所を自分たちで手をかけて整備し、安全に楽しめるコースへと仕上げていく。シーズン終了後のクリーンアップ同様に、滑り手が参加できるイベントはスキー場への愛着度が格段に増す。
なにせ自分が手入れしたコースに雪がつくとどうなるのか? 雪がついたら一目散に行ってみたい。いまからそれが楽しみでならない。

■HACHI CREW https://www.instagram.com/originalhachi/

■八方尾根スキー場 https://www.happo-one.jp/