五月病、HSP、カサンドラ症候群、自律神経失調症は病気じゃないのか? それでもこれらの症状をほうっておいてはいけない理由

「カサンドラ症候群」でつらいときは

近ごろ、患者さんから耳にすることばのひとつに、「カサンドラ症候群」があります。たとえば、「わたしはカサンドラ症候群です。とても憂うつで将来には不安しかない」「カサンドラ症候群かもしれません。受診してはだめですか」といった声です。

カサンドラ症候群とは、発達障害のひとつである「アスペルガー症候群※」のパートナーや家族など、身近な人とのコミュニケーションが原因でストレスが積み重なり、心身に多様な不調が表れることをいいます。

カサンドラはギリシャ神話に登場するトロイの王女の名で、神の呪いで苦しんだ境遇になぞらえてその名が付けられたといわれます。カサンドラ症候群も、病名や病気ではありません。しかし、パートナーや家族などへの対応の方法について知識を得たり、専門機関に相談したりすることは重要でしょう。

また、五月病やHSPと同様に、そのことで悩んで心身の不調が長引き、日常生活に差し支える場合は、適応障害やうつ病といったメンタルの病気の可能性もあります。

※アスペルガー症候群は現在(2013年のアメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』の発表以降)、「自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)」のひとつに分類されています。

(広告の後にも続きます)

「自律神経失調症」は状態の総称

ヒトの体には、「交感神経(主に興奮しているときに働く神経)」と「副交感神経(主に穏やかな気分のときに働く神経)」という2つの自律神経系があります。それらが互いにバランスを取り合って、心拍や血圧、消化、代謝、発汗などの生命活動を調整しています。

「自律神経失調症」とは、この2つの自律神経のどちらかが過度に優位になって、互いのバランスが崩れている「状態」の総称であり、病名ではありません。

具体的な不調は、疲労感、頭痛、肩こり、腰痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、下痢、便秘、腹痛、胃痛、吐き気、しびれ、多汗、頻尿など、個人によって多岐にわたります。

自律神経の不調はさまざまな病気に伴います。たとえば、うつ病の際にも、頭痛や肩こり、胃痛などの自律神経症状が見られます。また、何らかの身体的な病気に伴って、これらの複数の症状が表れることもあります。

病名ではないと聞くと、単なる疲れだろうと自己判断をしてがまんする人もいますが、後になって重篤な病気が発見されるケースも現実に多いのです。不調が続くなあ、と思う場合は早めに、不調の部位から判断した診療科を受診しましょう。診察や検査の結果次第で、適切な診療科を紹介されるでしょう。