指導者も練習場所も地元で調達
本気派、エンジョイ派、合同での練習風景
写真提供:星野直人氏
2つのチームはあくまでも地域のクラブチームのため、入部の条件は、東林、新町、上鶴間中学校、星野氏が勤務している相模台中学校に在籍をしていること。あるいは、小学校時代に東林、新町、上鶴間、相模台のいずれかの地域の少年野球チームに在籍していたことを原則としている。指導するのは星野氏の他、指導を希望する当該中学校の野球部の顧問や、両クラブの代表など全部で11人。いずれも地元にかかわりのある人ばかりで、いわゆる指導者を派遣する民間企業などは利用していない。
練習場所はこの活動を後押しする相模台中学校のグラウンドを使用している。その他にかかる諸経費はチームに所属する中学生たちが払う月3000円の会費で賄っているので、部活動の民間移行でよく問題となる費用面では、それほど大きな負担はないという。スタートした4月には選手は60人ほどだったが、中学校の部活の仮入部期間に野球部に所属し、野球に興味を持ったのでクラブにも入ってみたいと思った子どもたちも参加するようになり、現在は両クラブ合わせて70人を超える選手が所属する。
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理解を深めた丁寧な対話
自治体によっては部活動の地域移行だけでも、なかなかうまくいかないという話も聞こえてくる。その上さらに、「本気派」と「エンジョイ派」の2つのクラブチームを作るという取り組みが、わずか1年ほどで実現できたのは、なぜなのだろうか?
「新しい形のクラブだったので、まずは理解をしてもらうために、いろんな人に会ってたくさん話をしたことが大きかったと思います。たとえば、各中学校の校長先生に集まっていただき話をしたこともあります。それから、当事者である中学生やこれから中学に進学する小学6年生向けの説明会を地域の児童館や公民館で何度か行いました」
説明会では、まだ形の見えない新しいクラブに関して、子どもたちはもちろん、参加した保護者からも疑問や不安の声があがったという。その段階ではまだ不確定な要素もあって、はっきりと答えられないことが心苦しかったそうだが、それでも丁寧に説明を続けるうちに、「どうやらこの組織は単なるクラブではなく、文科省(国)が目指している部活動の地域移行に対して、ちゃんと考えそれを実行しようとしているんだな」ということが、子どもたちやその親、そしてそれぞれの学校の教職員にも伝わって理解されるようになっていったそうだ。
「部活動のように学校という組織の中だけでやるとなると、当然顧問の人数にも限りがありますし、教師一人で全部をやるとなると難しいです。でも、地域の組織の依頼から始まったことで、地域でやっていくんだったら協力したいと力を貸してくれる人たちが現れて、今一緒にやっている各中学校の野球部の顧問の先生たちも協力しますと言ってくれたので、これならやっていけると強く思うことができました」