11月19日の中国戦から後半戦に突入した日本代表の2026年北中米ワールドカップ・アジア最終予選。ここまで4勝1分の勝点13で首位独走状態ではあるが、15日のインドネシア戦(4-0)に象徴される通り、敵地での一戦は一筋縄ではいかない。やはり中国戦も序盤は相手の激しい球際と寄せに苦しみ、日本は攻めあぐねる格好となった。
森保一監督がスタメンを5人変更したこともあり、この日の日本は立ち上がりから連動性にややかける嫌いがあった。しかもピッチ幅が狭められており、伊東純也と中村敬斗(ともにスタッド・ドゥ・ランス)の両ウイングバックが相手マークに引っ掛かり、ボールを奪われる状況が続いた。
普段から同じチームで共演している2人の同時出場には大きな期待が寄せられたが、予想外の展開に陥ったのだ。
「前半、ピッチが狭いのがあった。中国は三笘(薫=ブライトン)選手の対策をしてきていて、サイドへのスライドがかなり速かった。常に2対1の状況でなかなか前向きに仕掛けることができなかった」と中村も苦しかった胸中を吐露したが、伊東の方も普段はないようなボールロストが目につき、前半は思うようなサイド攻撃を仕掛けられなかった。
それでもセットプレーから2点をリードし、試合を折り返せた。ハーフタイムも前向きな機運のなか、選手たちが改善策を話し合う場が持たれた様子だ。
「敬斗が大きく純也君までフィードするのを狙っていこうというのを話していた」と南野拓実(モナコ)も言う。前半は南野と中村の左の関係も不完全燃焼で、「もう一工夫、何か必要だったかな。悔しさみたいな部分の方が強いし、たぶん敬斗もそうだと思う」と南野も語っていただけに、もっと大外を使う意識を持って後半に入ったという。
それが具現化したのが、54分の3点目だ。この直前に失点を食らい、2-1に詰め寄られていた日本は、すぐさま反撃に打って出る。左の町田浩樹(ユニオンSG)から縦パスを受けた南野が中村に展開し、中村はインサイドに持ち込んで一気にサイドチェンジ。
それで中国の守備ブロックのスペースが少し空き、伊東と久保建英(レアル・ソシエダ)が右の大外で局面を打開。最終的には伊東が蹴り込んだクロスを小川航基(NEC)が打点の高いヘッドで決め切る形だった。
「試合前からそこ(大きなサイドチェンジ)は狙っていて(敬斗に)言ったんですけど、前半はあいつのところのプレスが速くて難しかった。でも後半はうまく空いてきて、良いサイドチェンジが(できた)。普段からそういうのはチームでもやってるんですけど、うまくサイドチェンジが来て、そこからタケ(久保)と良い崩しをして、クロスを入れられたかなと思います」と、今回のアジア予選通算アシストを9に伸ばした男は納得の表情を浮かべた。
伊東のアシスト数はアジア予選で断トツ。それだけのお膳立てができる選手に良い形でボールを供給しないのはもったいない。だからこそ、より大きな展開を積極活用すべきだった。
3点目の後はそういったシーンがスムーズに出るようになったが、“ランスコンビ”が日頃からやっている関係性を代表にうまく持ち込んでくれれば、確実に攻撃のアクセントになる。それを2人は改めて実証したのではないだろうか。
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伊東は11月シリーズの最初に「今、敬斗はチームで得点に絡んでますし、あいつが今、6点で1アシストしてて、俺は3得点・4アシスト。得点で離されないようにというのは先輩としてありますし、ゴール関与数でも負けないようにしたい。“ライバル”でもあると思ってるので。チームで存在感を出して、代表に持ち込めればいい」とコメント。中村の活躍が大きな刺激になっている様子だ。
誰よりも彼の能力を熟知している分、活かし・活かされる関係も構築しやすい。共存の優位性をもっともっと引き上げていくべきだ。
中村の方も「前回のオーストラリア戦(1-1)で自分としては良い形で仕掛けられていただけに、そのイメージのままプレーしたかったけど、全然違った。今回は難しかった」と悔しさをにじませたが、今後へのヒントを掴んだのは大きな意味がある。
試合の中で最適解を見出したことを前向きに捉え、伊東との両ワイドの強みや迫力をより研ぎ澄ませていくことが、代表での出場時間増にもつながるだろう。
日本屈指の両翼が1つの結果を出した中国戦で、日本は勝点を16に伸ばし、8大会連続W杯出場に王手をかけた。次の2025年3月シリーズまでは4か月ある。2人には所属クラブでの時間を大事にしてほしいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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