みなさま、深海魚は好きですか?

深海魚はエサが少ない深海でも餓死しないように脂を蓄える性質をしており、また、その脂で浮力を保つため、非常に脂がのっている子が多いです。

そして深海魚にも旬はあるけど、個人的には季節や生息地による味の変動幅は少ないように感じます。

つまり美味しさにおいて深海魚は信頼できる。安心・安全の深海魚と私は思っています。

でも深海魚は見た目がちょっとアレだったり、無名すぎて味や食べ方が知られていないために不人気で、未利用魚になってしまいがちですね。

先日行きつけの魚屋「海鮮市場マルモト」(神奈川県伊勢原市伊勢原1-3-37)の地魚(未利用魚)コーナーをのぞいた際にも

あれ? スミクイウオ(深海魚)が大量に余ってる? やっぱり買われづらいのかなぁ(´ω`)

売れ残ってしまうかもしれないのであるだけ全部お持ち帰りしてきました!

大量購入したはいいものの、スミクイウオを食べたことのない私は「美味しくなかったらどうしよう……」とちょっと不安。

まぁ食べてみないと分からないし、マズイなら美味しくなる調理法を見つけるだけ!

というわけでさっそく調理して食べてみたいと思います(`・ω・´)

そして今回は「新鮮な魚は美味しいに決まってる! 冷凍保存しても美味しいのか? それも大事よ!」ということで、2か月ほど冷凍保存して味に劣化はあるのかも確認したいと思います。

スミクイウオ

スミクイウオはスズキ目スミクイウオ科に属し水深100m〜1000mに生息する深海魚です。スミクイウオ科はかつてはのどぐろ(アカムツ)と同じくホタルジャコ科に含まれていましたが、近年系統解析によって独立したそうです。

生態はよく分かっていないのですが、北海道以南の日本周辺の海から、太平洋やインド洋、南アフリカ周辺まで広く生息しているお魚みたいです。

深海はいま……

スミクイウオや深海魚について調べていると無視できない論文が目に入りました。海洋ゴミ問題についてです。

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査研究によると、深海ゴミの33%がプラスチックで、そのうち89%がレジ袋など日常的に使われている使い捨てプラスチック製品であるというのです。

また、最近新たに房総半島沖の水深6000m付近の海底から大量のプラスチックゴミが発見され、海流の関係で日本周辺の深海底はプラスチックゴミの溜まり場になっていることが示唆されています。

そのゴミの中にはほとんど無傷で印刷も鮮明なまま「昭和59年(1984年)製造」と記された食品包装もありました。

水温の低い深海ではプラスチックがほとんど劣化せず、極めて長い時間残り続けてしまうのです。

2050年には海洋中のプラスチックゴミの重量が魚の重量を超えるという試算もあります。

海はそんなに大変なことになっていたのか……海を守るためにできることはなんだろう……難しすぎて思考停止しそうになりますが、さらに調べてみるとなんと

「ゴミのポイ捨てをしない」こんな極めて当たり前のことが実は重要だというのです。。

実は海洋ゴミの7~8割は街から出たものであり、日本財団と日本コカ・コーラの共同調査によって「ポイ捨てや集積所からあふれ出たゴミが雨や風によって排水溝・下水道に流され、そして川や海に流れ着く」ことが分かりました。

ポイ捨てをしない、ゴミは袋から漏れないように出す、たったこれだけのことでもとても大切なのです。

豊かな海を守るために、身近にできることから取り組んでいきたいですね。

スミクイウオを捌く

スミクイウオはウロコが脆くてとれやすいため、市場に出る頃にはゾンビや筋肉丸見えの人体模型のようになっている子もいます。見た目的には確かに食欲をそそりませんね(・∀・;)

私のところに来た子たちもけっこうウロコが落ちていたので、ウロコ処理はせずに3枚おろしにしちゃいます。大きなまん丸おめめが深海魚らしくてかわいい(´ω`*)

口の中を見てみると、その名の通り墨を食ったように口の中まで真っ黒です! お腹も真っ黒!

歯も深海魚らしく鋭く尖っています。

▲これは冷凍保存していたのを解凍した子たちです。なのでおめめがカラカラ。魚の鮮度は「目の水分がたっぷりでぷっくりと張り出ているか」をみるのが一番分かりやすいです。

身はご覧の通り水分量多すぎ&柔らかすぎ状態。皮を引くのが無理そうなので今回は全て皮つきで調理していきます!

本日のお品書き

・焼き霜作り(炙り)

・ムニエル

・照り焼きつくね

・塩焼き

です。

スミクイウオの焼き霜作り(炙り)

水分量が多いのでキッチンペーパーで包んで一晩寝かせたあと、皮目を炙りました(ガスコンロで直火焼き)。

時間が経つと身が白濁しますね。

では頂きます(。・н・。)パクッ

やっべーコイツはうまいぞ!!!!!!!!

とにかく甘い!! 脂がたっぷりのってて甘い!!!!!!

水分量が多くほぼ歯ごたえがないぐらい柔らかい身質で、ネットリした食感です。

最初は味がなくて「?」と思いきや、すぐに強い甘みが脳天を直撃し、次にうま味と皮目の香ばしさが追いかけてきます。

なんか普通の魚の脂の甘さと違うんだよな。濃厚なのに雪のようにスーッと解けていく上品さがあるというか。

そしてうま味もたっぷり!!!! 白身魚の繊細で上質なうま味が複雑に絡み合って舌に広がります。

寝かせるとうま味がより引き出されるタイプの魚っぽいし、3日ぐらい寝かせても全然平気だったので、刺身で毎日味わいの変化をみるのも楽しそうです。

すごい美味しい魚なので未利用魚でいるのはもったいない! やはり安心と信頼の深海魚ですね。

スミクイウオを冷凍保存→解凍する

ここからはジップロックに裸のまま雑にぶち込んで2か月ほど冷凍保存→解凍した子たちを使います。

一般家庭では食べきれない魚は冷凍されるのが普通なので、やはり解凍後の食味も確かめておかないと。

一度冷凍すると身が凄まじくグズグズになるので3枚におろすのが大変でした(・∀・:)

これは刺身にするのははとっても無理。冷凍したら加熱調理以外の選択肢はなさそうです。

あと解凍した身は粘りが出るのか、キッチンペーパーに包んでの水抜きは不向きです。キッチンペーパーが貼りついてしまい剥がすのが大変になります。

スミクイウオのムニエル

切り身に塩をふったあと小麦粉をまぶして発酵バターでじっくり焼き上げました。

スミクイウオ本来の脂と発酵バターが喧嘩したらどうしよう……とドキドキしつつ頂きます(。・н・。)パクッ

これはうまい!!!!!!!

口に入れた瞬間から甘みとうま味が怒涛のように押し寄せてきます!

加熱すると身はしまって繊維質を感じる硬さになります。でも硬いわけではなく、柔らかくも適度に噛み応えがあるという感じ。

スミクイウオは皮が厚くてしっかりしているのですが、パリっと焼けていて皮目の香ばしさとバターの風味がマッチしていて香りもとても良いです! 喧嘩するどころか仲良し。

塩をふって焼いただけなのに高級感あふれる手の込んだ味わいです。

お裾分けした近所の人も「この間行ったちょっと良いレストランで頂いた魚料理がこんな味だった」と言っていたので、この美味しさは私の勘違いじゃないはず!

スミクイウオのつくね

背骨と中骨に大量に残ってしまった身をスプーンでこそげ取り、ネギのみじん切り、塩、片栗粉を入れて粘り気が出るまで練ってから楕円形に成形して焼きました。

冷凍保存で脂が酸化したためか少々古いイワシのような匂いがするので、醤油、酒、砂糖を煮詰めた照り焼きソースを絡めて頂きます。

う~ん? やっぱり古いイワシのような魚臭さが気になる……

味も食感も魚のうま味が追加された鶏つくねといった感じで美味しくはあるのですが……魚臭さが気になります。

うーん……どうも醤油がこの臭みを引き出してるっぽいな。臭み消しとして照り焼きソースに味噌を練り込んでみるか。

うん!! ソースに味噌を入れたら臭みがなくなって美味しい!! つくねで食べるなら練る時に味噌を入れるか照り焼き味噌ソースにするのが良いかも!

スミクイウオの塩焼き

塩をふってからキッチンペーパーに包み1時間ほど冷蔵庫で寝かせグリルで焼きました。

冷凍保存前の新鮮な時にも焼き魚にして食べたのですが、その時にはなかったホッケのような匂いがします。

魚の臭みが苦手な人はちょっと「ウッ」となるかも。

でも匂いは揮発性なのですぐに消えるし、食べると臭みはないです!

もちろん美味しい!!!!!!

ホクホクで柔らかくも適度に繊維質を感じる噛み応えで、鯛やイボダイに似た味わいの、上品でうま味のつまった非常に美味しい焼き魚です。

スミクイウオはこの独特のコクのある甘みがとても良いです!!!!!!

魚嫌いの家族も「これは美味しい!!」と思わず唸り、完食しました!

おまけ:世界一美味しい味噌汁?

スミクイウオを軽く湯通ししてから冷水にとり、ウロコやぬめりを落としてぶつ切りにします。

それを昆布出汁で煮だした肝入りの味噌汁が「世界一うまい!」と聞いたので試してみたところ……

画像の通り脂がすごい!! 昆布しか入れていないのに芳醇な旨みと甘みが広がり美味しい!!!!

が、苦すぎる……

肝の苦味がダメな私は苦すぎて飲めずに断念しました……

でも内臓の苦味が好きな人にはたまらない、「世界一美味しい味噌汁」なようですので、肝が好きな人はぜひチャレンジしてみてください!

スミクイウオの評価

星4.5

刺身だと身の水分量が非常に多くて柔らかすぎる点は好き嫌いが分かれそうだけど、とにかく味は良いし、刺身でも加熱しても高級魚に負けない美味しさです!

うま味たっぷりで他の味付けは不要だから、基本は塩で食べるのが一番おススメです。

小型の魚なので小分けにする必要はなく丸のまま保存ができて使い勝手が良いし、冷凍庫の幅もとらないし、冷凍保存しておけばめちゃくちゃ便利だと思います!

身が柔らかいのでちょっと捌くのが難しいけど、手軽に深海魚の脂の旨さを堪能できるし安いので、みなさまも見かけたらぜひ食べてみてください(・∀・)

※画像は全て筆者撮影

海鮮市場マルモト

https://www.0-to.com/[リンク]

国立研究開発法人海洋研究開発機構の深海ゴミ調査

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308597X17305195[リンク]

https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20210330/[リンク]

日本財団と日本コカ・コーラ株式会社の「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」調査結果

https://www.coca-cola.com/jp/ja/media-center/news-20200221-11[リンク]

(執筆者: ゆずくん)