伝説のアジア杯から20年。宮本恒靖が中国で感じた不変と変化。主将から会長になった47歳は頬を緩め――ピッチ縮小にも言及【現地発】

[北中米W杯アジア最終予選]日本 3-1 中国/11月19日/廈門白鷺スタジアム

 森保一監督が率いる日本代表は11月19日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第6節で、中国代表と対戦。3-1で快勝し、グループC首位の立場をより揺るぎないものとした。勝点を16まで伸ばした結果、来年3月に埼玉スタジアムで行なわれるバーレーン戦に勝てば、8大会連続でのW杯出場が確定する状況となった。

 キックオフ前の国歌斉唱ではブーイングが飛び、試合中にはレーザーポインター攻撃。スタジアムの雰囲気は完全アウェーとなったこの日、森保ジャパンは立ち上がりから決定機まで持ち込めない時間が続き、やや苦戦を強いられる。

 それでも39分に久保建英のCKに小川航基が合わせて先制点を奪うと、45+6分にも伊東純也のCKから板倉滉がゴール。ただ、後半に入って48分にカウンターから1点を返されるも、その6分後に伊東のピンポイントクロスに反応した小川が、再びヘッドで叩き込み、相手の反撃ムードを一蹴した。
【画像】日本代表の中国戦出場16選手&監督の採点・寸評を一挙紹介! MOMは2発を叩き込んだストライカー。最終予選初出場で躍動のDFらも高評価
 試合後、日本サッカー協会の宮本恒靖会長が現地で取材に対応。チーム一丸でモノにした2024年最終戦をこう総括した。

「相手にはシュートは打たれていなかったと思うし、そのなかで自分たちがシュートに行って、先制点も(久保のシュートをGKが)弾いた後のコーナーだから、やっぱりゴールに向かった結果。時間帯が良かった。2点目も。で、1点やられたけど、すぐに取り返すのは、相手にとってのダメージも大きいし、ゲームマネージメントが良かった」

 ここまで2次予選から合わせて計11試合戦い、失点は先月のオーストラリア戦(最終予選4節)でのオウンゴールのみだったなか、今回初めて流れの中から、崩されて得点を奪われた。この“初失点”に関して、現役時代はCBとして活躍した47歳は次のように語った。

「ああやって局面局面のところで、ちょっと後手に回った瞬間にかわされてというのは、あり得る失点の形だから、それは選手のみんな分かっていると思う。2-1にされて、最終予選的な空気になったけど、そこでも変に浮き足立たずに…3点目って結構、繋いで繋いでサイドチェンジからの最後の崩しだから、みんなが冷静にやった結果だと思う」 
 両サイドのラインを約1.5メートル内側に引き、ピッチの幅を狭めるという相手の奇策に対しても、特段問題なく対処したと見ている。

「ロングボールがずれたのは1回、2回ぐらい。そこまで選手たちはあれ(苦にせず)だったと思う。逆にこの雰囲気で『やってやるぞ』ってなったんちゃうかなと」

 宮本氏と中国といえば、2004年に同地で開催されたアジアカップが想起される。その際も激しいブーイングを受けながら、粘り強く勝利をもぎ取った。

 ヨルダンと戦った準々決勝のPK戦では、中村俊輔と三都主アレサンドロが続けて足を滑らせて失敗し、当時の宮本キャプテンがエンドの変更を要求。それを見事に通し、劇的勝利に繋げたのは、“伝説の交渉”として語り草だ。その後、ジーコジャパンは準決勝のバーレーン戦、そして決勝の中国戦も制し、アジアカップ2連覇を果たした。
 
 それからちょうど20年。ユニホームからスーツに着替えたレジェンドに、再び中国での戦ってみての感想を尋ねると、「だいぶ遡りますね」と頬を緩めた後、こんな答えが返ってきた。

「中国の応援のスタイルとか雰囲気は変わらないし、俺らの時もやっぱりブーイングもあった。でも相手のリスペクトは当時より感じる。それはチームの中だけじゃなくてスタジアム全体から。これはこの20年、日本のサッカーが積み上げてきたものかな」

 先達の想いも背負い、着実に進化する森保ジャパン。次節のバーレーン戦で8度目の歓喜の瞬間を迎えられるか。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部/現地特派)

【記事】「日本がアジア最強だ」3発快勝で首位独走の森保ジャパンに韓国驚嘆! 対戦国にも注目「日本に3失点なら中国はよくやった」「よく1点取ったな」【W杯最終予選】

【記事】「日本代表に勝つチャンスはあるか?」中国代表監督への質問に会見場がまさかの“爆笑”。指揮官の答えは?「君の同僚はみんな笑っていたが…」 

【画像】三笘薫、鎌田大地ら海外組が到着!私服で登場した日本代表戦士!