「極悪女王」ブームで全女レスラーがリリースした楽曲も再脚光「悪役レスラー系のレコードは高額で…」

11月18日放送のバラエティ番組『しゃべくり007』(日本テレビ系)に、ダンプ松本、長与千種、ライオネス飛鳥、ジャガー横田、ブル中野らが出演した。Netflixのオリジナル配信ドラマ「極悪女王」のヒット以来、彼女たちをテレビやネットニュースで見ることも増えた。そんな彼女たちは当時、女子プロレスラーをしながら歌手活動もしていて…。

「極悪女王」ヒットで再ブーム! 全日本女子プロレス音楽

話題作が続々と登場している、Netflixの配信ドラマ。

中でも2024年7月に配信が開始された「地面師たち」(全7話)は大ヒット。

劇中、ピエール瀧が口にするセリフ「もうええでしょう」が、「現代用語の基礎知識」選 2024ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたほど。

そんな2024年のNetflixの配信ドラマの中でもう一本、注目されたのが、9月に配信された「極悪女王」だ。

1980年代の全日本女子プロレスを題材に、悪役レスラーのダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)、アイドル的人気を誇ったクラッシュ・ギャルズの長与千種(唐田えりか)とライオネス飛鳥(剛力彩芽)らがプロレスに青春を捧げる姿を描いた。

同作のヒットもあって、各登場人物のモデルになった女子プロレスラーたちに再び脚光があたる機会も増えた。

11月18日放送のバラエティ番組『しゃべくり007』(日本テレビ系)には、昭和に活躍した女子プロレスラー、ダンプ松本、長与千種、ライオネス飛鳥、ジャガー横田、ブル中野らが出演。

知られざる舞台裏を明かし、Xのトレンドにも番組タイトルなどが浮上した。

そんな『しゃべくり007』の同回でMC陣(ネプチューン、くりぃむしちゅー、チュートリアル)をびっくりさせたのが、当時、音楽活動も並行していたクラッシュ・ギャルズのバックバンドをDREAMS COME TRUEの吉田美和、中村正人が務めていたこと。

SNSでも、

《クラッシュギャルズのバックバンドがドリカムだったのビビる》
《クラッシュのバックバンドやってたんだ!! 知らなかったわぁ》

とドリカムの意外な過去に驚きの声があがっていた。

そもそも「極悪女王」を鑑賞した若い世代の中には、当時の女子プロレスラーたちが歌手活動も行なっていたこと自体「知らない」という人もいるだろう。

彼女たちが音楽番組に出演したり、レコードを数万枚、数十万枚売り上げたりするなど旋風を巻き起こしたのは、今ではちょっと考えられない現象だ。

そんな当時の女子プロレスラーたちの歌が入ったアナログレコードの収集にハマっているのが、大阪を拠点に、1980年代をモチーフとする歌手・DJの活動を行なっている田中りぼん氏だ。

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女子プロレスラーたちの曲の特徴

りぼん氏は「永遠の16歳」を自称する平成世代。もちろん1980年代の全日本女子プロレスブームはリアルで体験していない。

そんなりぼん氏は約6年前からアナログレコードの魅力に取りつかれ、全国のレコード店で“中古レコード漁り”をするように。

現在では自宅に数千枚、レコードを保有しているという。気になる作曲家、編曲家が携わった楽曲をたどっていくうちに、それだけの枚数までふくらんだそうだ。

女子プロレスラーのレコードを集めるようになった理由も、もともと女子プロレスに興味があったわけではなく、やはり作曲家、編曲家がきっかけだったという。

初めてゲットした女子プロレスラーの中古レコードは、コンピレーションアルバム『リングの女神達〜女子プロスーパースター列伝〜』。

そこに収録されているミミ萩原の曲『セクシーパンサー』に惚れ込み、女子プロレスラーのレコードを探すようになった。

りぼん氏は女子プロレスラーの中古レコード事情をこう明かす。

「ビューティ・ペア、クラッシュ・ギャルズ、マッハ文朱、JBエンジェルス(ジャンピング・ボム・エンジェルス)、ミミ萩原、風間ルミ、デビル雅美……。

手に入る限りのアルバム、シングルを集めました。中には、歌ではなく試合後のインタビューが入っている変わったレコードもあったりして。ただ、悪役レスラー系のレコードは高額なものが多いので、なかなか手が出せないんです」

それにしても、女子プロレスラーたちはどんな内容の曲を歌っていたのだろうか。

「たとえばクラッシュ・ギャルズはフレッシュでパワフルな楽曲が多いです。だけど長与さんのソロ曲は、めちゃくちゃ乙女チック。

男性とデートするとき、『一緒に車に乗ると緊張して私は何も話せなくなるから、私は別でバイクに乗って行くね』という風なものとか。

男性はクーペに乗って、長与さんはバイクで移動して。だけど途中で寄り道して一緒に夕陽を見たりするところなんかに、恋愛感情の繊細さが伝わってきます。

これは女子プロレスラーのみなさんの多くの曲に言えることなのですが、リングの上ではたくましいけど、マイクを握ると途端に乙女になる。そのギャップがたまらないんですよね」

と、りぼん氏は分析をまじえながら、それらの楽曲の魅力を語ってくれた。

ちなみに、女子プロレスラーの曲は当時ヒットしたものや「良曲」とされているものであっても、後にCD化やサブスク配信されているのはごく一部。

そのため各レスラーのアルバムやシングルを全作集めようとすると、必然的に中古レコードに手を出すことになるのだという。

また当時は女子プロレスラーだけではなく、野球選手、力士らさまざまなスポーツ選手もレコードをリリースし、ヒットを飛ばすことがあった。

「私も、フィギュアスケート選手だった佐野稔さんのレコードを持っています。博多のレコード屋さんで見つけました。佐野選手を存じていたわけではなく、ジャケットを気に入って買いました」

と購入当時のことをりぼん氏は振り返る。

りぼん氏いわく「アイドルの曲のような感覚で聴くことができる」という、女子プロレスラーの楽曲。「極悪女王」の影響で昭和の女子プロの破天荒エピソードなどがクローズアップされているが、そのムーブメントは音楽面にまで波及するかもしれない。

取材・文/田辺ユウキ