【DeNA】ポストシーズン不在の悔しさに戸柱への想い…「それがまた来年に生きる」“求道者”山本祐大が切り開く未来

☆不在のポストシーズン

 23年後半にブレイクを果たし、今シーズンは開幕から正捕手の座を奪取した。オールスターではセ・リーグの捕手で56万2807もの票を集めトップ選出。山本祐大は今季、一気にスターダムの道へと登っていった。

【画像】横浜DeNAの優勝に華を添えた「diana」を特集! シーズンを振り返って「ここまで試合に出られたのは今年が初めてですし、そういった面ではすごくいいシーズンでした」と頷いた。同時に「やっぱ終わりが悪いんで。後味的にはすごく自分の中で悔しいのが残ってるんで…」と忸怩たる思いも吐露した。

 本来ならクライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズと活躍を続けた先に、あるいはプレミア12への出場の可能性もあったのかもしれない。

 中心選手として攻守ともに貢献していたが、激しいペナントレースの最中の9月15日、右手首に死球を受け骨折。チームは扇の要を失いながらも、ベテランの戸柱恭孝を中心にその穴をカバーし、3位でリーグ戦をフィニッシュした。さらに敵地でのクライマックスシリーズを勝ち抜き、ついにはパ・リーグの絶対王者・ソフトバンクを倒して日本一の座を手にした。

 自分がいない中での栄冠。またライバルでもある戸柱はCSでMVPと輝きをみせた。そのことに「出れないことの悔しさはありました」とプレーヤーとしての心中を素直に告白。しかし「トバさんが出ていて、なんで俺じゃないんだ、みたいな悔しさは全くなかったです。もう納得でした」と言い切った。

 それには「みんなも言ってますけど、やっぱり練習は裏切らないんだなって。本当に朝からトレーニングして、バッティングしてというのを毎日欠かさずにやってましたし」とし「ライバルですけど、 僕にもすごいいいアドバイスをくれるんです。僕が分かんなくなった時、トバさんはすごく気にしてくれていて。頼りがいがある先輩なので、 僕的にはすごく嬉しいなって。ほんとにそういう人が活躍できるようになってるんだなって、僕も思えました」と自分に厳しいながらも、ライバルには優しい、そんな先輩キャッチャーの躍動を、シンプルに喜べる理由があった。
 ☆GG賞受賞への喜び

 今シーズンは108試合に出場で、打率.291、本塁打5、打点37とバットでの貢献も目を見張るものがあったが、守備率も.997をマークし、盗塁阻止率も.352としっかりと守り抜いた。

 その結果、「第53回三井ゴールデン・グラブ賞」のキャッチャー部門で217票を集め、堂々の初受賞となった。

 相川亮二バッテリーコーチは、「僕よりも今まで一緒にやってきた人、独立の時から彼の作り上げにしたものが、そういう評価になったっていうことです」とし「それぐらいの技術は持っていたので、もう試合に出ていくだけだっていうのが彼の課題であったところ。それが去年から今年へと繋がっていきましたね。試合に出ればね、こういう結果になるのはなんとなく想像はできていました」とコーチングよりは経験が評価に直結したと分析する。

 本人は「守備に関しては負けたくないっていうのはあったので。 それで1年間通しての評価をいただけたと思ってるので、そういった面でもやっぱり取れたのはすごく自分の中でも価値がありますし、嬉しいなと思います」と笑顔。「来年もまた取れるように頑張ります。またそういう風に見られてるっていうのを自覚しながら、来年また1年間プレーできたらなと思ってます」と苦労人らしく、すぐさま気を引き締めた。
☆心は来季へ

 レギュラーキャッチャーとして過ごした初のシーズンは、スタートとゴールで全く違う風景となった。「でもそれがまた来年に生きる。今すごく来年のために前を向けてやれてるので、1年間完走してシーズンを終えるのは、それはもちろんいいことですけど、今はそれもあってすごくモチベーションとしては高いので、そういった面ではグッドシーズンだったと思います」とポジティブに捉える。

 そしてその目は、すでに未来を見つめている。「怪我する前よりレベルアップして帰りたいなとは思ってますし、 守備もそうですけど、バッティングも全てにおいてレベルアップしたいなとは思ってるので。練習あるのみですよ」。思えばプロになるため、大学進学よりも独立リーグを選んだ求道者。名実ともに日本一のキャッチャーになるために、山本祐大はどんな困難も乗り越える強さがある。

取材・文●萩原孝弘
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