大手メーカー研究職から独立起業、オリジナルブランド開発にかける「生活を豊かにしたい」思いとは?

成長期の過ごし方が自己肯定感につながる

——今はさらに違う会社も設立されて、子ども向けのヘルスケアブランド「GROWNIQUE(グロウニーク)」を立ち上げられました。子ども向け事業を始めようと思ったきっかけは?

大学の先輩の伝手で、専門職大学の客員教授をするようになり、大学生に接する機会が増えたことがきっかけかもしれません。それまでは、キャリア形成においては大学時代におよそ決まるものだと思っていたんですが、実は大学に至るまでの成長期の過ごし方が大学以上にその後の人生の進路選択や職業選択に影響を与えているんじゃないかと感じるようになったんです。

一方で、夫が子ども向けの運動スクールを経営していて、そこで保護者の方たちから子どもの成長に関する悩みを直接聞いたことも一因です。「子どもの身長が伸びない」「たくさん食べているのに周りと比べて背が低い」など、成長に関する悩みやおすすめの栄養補助食品を聞かれる機会がありました。そこで調べてみると、身長が人生に影響を与えるという学術論文がたくさんあったんです。身長は個々の価値を決める要素ではありませんが、社会的な影響や将来の展望を考える際には一定の役割を果たすということがわかりました。

こうした子どもの成長に関して「生活を豊かにする」ために、自分のバックグラウンドで何か活かせるものがあるとしたら、健康面でエビデンスのあるものでサポートすることだと考えたんです。私自身、過去にひどい肌荒れを経験したとき、まともに人の目も見ることができないくらい自信をなくしていました。肌や身体の健康状態は、心にも影響を与えます。次世代を担う子どもたちが健やかに成長することで、自己肯定感が高まり、いろんな挑戦をしやすくなれば、より良い未来に繋がっていくと信じています。

——これからキャリアを選択する高校生や大学生に伝えたいことはありますか。

学生の皆さんはきっと勉強をたくさん頑張っていると思うのですが、世の中には勉強以外のものさしがたくさんあることをぜひ知っておいてもらいたいです。私自身、大学を出てから感じたことですが、社会に出た途端、勉強以外のものさしで測られることが増えるんです。当たり前のことですが、勉強がいくらできても幸せになれるとは限りません。キャリアもその一つですが、自分にとっての幸せを実現するためには、どのものさしが必要なのか考えてバランスよく揃えていくことが大事だと思います。

また、実際に社会で働いているリアルな大人に会ってほしいと思います。今って便利な情報がたくさんありすぎて、逆にわかったつもりになってしまうことが多いですよね。でも、インターネットだけでは出てこない情報もあるので、ぜひ機会があれば、いろいろな大人の生の声を聞いてみてほしいと思います。

加藤 志穂(かとう しほ)︎中学・高校をスペインで過ごし、イギリス系の教育を受けて育つ。帰国後、東京大学・東京大学大学院にて化学を専攻。修士課程修了後は国内消費財・化粧品メーカーや外資系化粧品メーカーにて研究員として技術・商品開発に従事。独立後は化粧品事業などを展開。専門職大学における客員教授としての経験や、夫が経営する子ども向け運動スクール事業の参画経験から、「未来の人づくり」を目指し、子ども向けヘルスケアブランド立ち上げのため2024年に合同会社ペドラルベスを設立。