森保ジャパンはアウェーの中国戦で3-1の勝利を飾り、アジア最終予選の突破にまた大きく前進した。
決して簡単な試合ではなかったが、要所で日本代表の強さが見られ、それが結果に表われた試合でもあった。特に後半、1点を返されて、2-1とされたところから相手に流れが行きかけたところを持ち直して、再び突き放したことは象徴的だ。
通常の68メートルより横幅が狭いと見られるピッチで、コンパクトな4-4-2で固める中国に対して、日本は攻め手に苦しみながらも前半にセットプレーから2点を奪ったが、後半の立ち上がりに守備のバランスが崩れたところを突かれて、FWリン・リャンミンにゴールを割られてしまった。
しかし、数分後に小川航基のこの日2点目のゴールが、反撃ムードにわく中国の観客を黙らせた。
後ろのビルドアップから前向きにボールを受けた町田浩樹が縦に運んで、シャドーのポジションから左に流れた南野拓実を経由すると、同サイドの前方でパスを受けた中村敬斗がマイナスのドリブルで中を向いて持ち出し、大きなサイドチェンジを入れる。
4-4-2をベースとする中国のディフェンスはボールサイドに寄っていたため、日本は右サイドに大きなスペースを得ており、中村からの展開を右ウイングバックの伊東純也が大外で余裕を持ってトラップした。
中国は左サイドバックのフー・フェアタオが伊東に寄せてくるが、手前でフリーになっていた久保建英にバックパス。中国の左サイドハーフであるシエ・ウェンノンのスライドが後手に回り、そこをフー・フェアタオがカバーしようとしたところで、久保は少しタメてから伊東にリターンパスを出す。
伊東は遅れ気味に対応してきたフー・フェアタオに揺さぶりをかけて、バランスを崩させてから右足のクロスを上げると、ファーサイドで小川が見事にヘッドで合わせてゴールを破った。
伊東のクロスに関して、小川はインドネシア戦の前から「シンプルに合うっていうか、良いボールが来るっていうだけの話で、単純にキックの質も高いですし、本当にヘディングで当てればゴールに入るようなクロスをくれる」と語っていた。
伊東にその言葉を伝えると「普通に蹴ってるだけですけど(笑)」と前置きしながら、「航基はボックス内のそういう駆け引きの後のワンタッチのヘディングだったりっていうのが得意だと思うので。そこにうまく合わせられればいいなと思います」と説明してくれた。
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まさしく2人のイメージ通りのゴールになったが、2人の関係だけで完結したゴールではなく、左サイドで起点になった南野が、そこからゴール前に入ることで右センターバックのジャン・シェンロンの注意を引き付けたことも大きかった。
そこから小川は事実上、右サイドバックのヤン・ゼーシャンとのマッチアップになったが、伊東が右サイドで切り返す間に、外側にマークを外してポイントを作っている。さらに言えば、左からサイドチェンジを展開した中村も3人目のターゲットとしてボックス内に走り込んでいた。
実は伊東が久保から縦パスを受けた瞬間に、ボックス内の3人の中で最もフリーに近い状態だったのは中村だった。そのタイミングで伊東はクロスを上げず、二度の切り返しをする間に小川がフリーになったが、中村が事前に効果的な動きをしていたことも影響していたはず。
ポゼッションからサイドでクロスに持ち込める時は、必ずと言っていいほど3人はボックス内に飛び込むというのは練習から何度も繰り返しているが、一度、反対サイドで起点を作る役割をしてから、タイミング良く入っていくのは簡単なことではないだろう。
失点そのものは日本側にも問題があり、今後に向けて反省するべき点がいくつも出たシーンであることは間違いないが、相手が勢いづくところをしっかりと封じて、自分たちの追加点につなげたこと、そのための明確なプロセスとビジョンで、選手たちの個性を発揮する形から結果を出したのは、中国戦の勝利に加えて、チームの糧になっていくものだろう。
取材・文●河治良幸
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