高齢者ゴルファーが目標に掲げる事も多い「エイジシュート」。
実は目標を掲げることが、老後の健康維持にもつながる?
目標をもち続けることの大切さ
先日、朝3時半に起きて栃木県の鬼怒川カントリークラブでラウンドしてきた。スタート時間は9時45分だったが、バイクで家を出たのが4時半。八王子駅5時03分発の中央線に乗り、西国分寺駅で武蔵野線に乗り換え、南浦和駅では京浜東北線に、さらに次の浦和駅で宇都宮線に乗り継ぎ、宇都宮駅に着いたのが7時51分と、ほぼ3時間の電車の旅。乗り換えのたびに重いキャディバッグを担いで、駅の長い階段を昇り降りし、宇都宮駅に出迎えてくれた友人のクルマに乗り換えてゴルフ場に到着したのが8時55分。家を出てからゴルフ場まで、なんと4時間半もの行程だった。
地方に住むとクルマなしのゴルフは考えられない。人口減少で公共交通機関がどんどん縮小・廃止されているからだ。よく老人の交通事故に絡めて高齢者の免許証返上が話題になるが、エイジシュートを目指す人に免許証を返上しろというのは「ゴルフをやめろ」と言うに等しい。それが果たして健全な福祉国家のありかたと言えるだろうか。高齢者が心身ともに健康な生活を送ろうと思えば、できるだけ外出して友人や仲間と交流することが望ましい。外の世界との接触を断って自宅に引き籠る生活がどれだけ不健康なことかは、昨年からの「コロナ自粛」で痛いほど身に染みたはずだ。
エイジシュート通算1476回の植杉乾蔵さん(熊本県・95歳)は、90歳のときにクルマを新車に買い替えた。そしていまも週に2〜3回は自分でハンドルを握ってゴルフ場に通っている。高齢者が健康で生き生きとした老後を送るためには、目標をもって挑戦し続けることが何よりも大切なのだ。そういう意味でエイジシュートは、心身ともに健康な老後を送りたいという人にとって最高の目標といえるだろう。
一方で、公共交通機関の発達した首都圏は、2時間かけると大半のゴルフ場に電車でいける。お陰で私は70歳をすぎたいまも電車でのゴルフ場通いを続けている。たとえば群馬県のゴルフ銀座である高崎や前橋は八王子から八高線で2時間だし、静岡県の御殿場にも横浜線と小田急線でほぼ2時間。千葉県の房総半島のゴルフ銀座も東京駅まで行き、そこでアクアライン経由のバスに乗り換えて木更津金田バスターミナルまで2時間ぴったり。バスターミナルに着けば、ゴルフ場のクラブバスが待っているし、長野県の軽井沢も上越新幹線との乗り継ぎを使って2時間で行く。
しかも私は、宅配便を使わずにキャディバッグも自分で運ぶ。駅の長い階段を10キロもするキャディバッグを担いで昇り降りするのは大変だが、金を払ってスポーツジムに通う人もいることを思えば、無料で筋トレできることに感謝しないといけない(笑)。しかし、それもこれもエイジシュートという目標があればこそ。目標=生き甲斐をもつと、人はどんどん発想がポジティブになっていくようだ。
高橋健二
●たかはし・けんじ / 1948年生まれ。ゴルフライターとしてレッスンやクラブ情報などを執筆。HC8。
イラスト=丸口洋平