筑波大GK佐藤瑠星にJスカウトも熱視線! 陸上の要素も取り入れるなど論理的かつ多角的にアスリートとしての能力も向上

 190センチのサイズと長い手足。そしてずば抜けた反応速度と機敏な身体操作。筑波大の3年生GKの佐藤瑠星は今、大学サッカー界を代表するGKの1人として大きな注目を集めている。

 関東学生サッカーリーグ1部最終戦。1位の明治大と最終節までもつれ込む優勝争いを演じていた筑波大は、駒沢大との一戦において大差で勝たなければ優勝の可能性が限りなく少ない状況だった。

 試合は1-0で勝利をしたものの、第二試合で明治大が流通経済大に4-1で勝利をしたことで、勝点差3、得失点で8の差をつけられて2位に終わった。

「もっと防げる失点があった。そういうものの積み重ねが結果に出てしまう」と佐藤は悔しさを口にしたが、この試合で彼は実に二度のビッグセーブでチームを救い、それ以外でも安定感抜群のゴールキーピングを見せた。

 61分に駒沢大MF明石梓希のミドルシュートは味方DFのブラインドになったが、ゴールの上隅を捉えたライナーに対し、佐藤は軽やかなジャンプを見せるとボールの軌道を見極めてから右手でゴールバーの上に弾き返した。

「ボールの出所は見えなかったのですが、シュートが来ると思ったので一度ポジションを下げて準備をしてから、ボールが飛んできた瞬間に反射寄りの反応をしました」

 予測、反応、身体操作、技術すべてにおいてハイレベルなビッグセーブで会場をどよめかすと、69分には左からのクロスに対し、相手FWと味方DFが一斉に集結するなかで、勇気を持って飛び込んだ。

「ボールが落ちてくるのも早かったので、瞬時にキャッチではなくパンチングに切り替えました」と、空中で判断を変えたにもかかわらず、右手でペナルティエリアの外まで弾き飛ばすパンチングでピンチを断ち切ってみせた。
 
「あの2つのセーブは普段の練習から邪念をなくすとか、先に動かないなどを意識したからこそ出たものだとも思います。僕は今季からコンスタントに出番を掴めて、1試合を重ねるごとに成長を実感できたシーズンでした」

 今季、佐藤はリーグ19試合に出場し、明治大に次ぐリーグで2番目に少ない失点数で乗り切り、ベストイレブンにも選出されるなど、ブレイクの時を迎えた。

 もともと大津高時代からその秘められたポテンシャルは注目を集めていた。ハイボールに強く、セービングのセンスも抜群だったが、まだフィジカル面やステップ面で改善の余地は多かった。

 そのことを彼自身もよく理解しており、「高卒ですぐにプロの世界で戦うにはメンタルも技術も足りないと感じたからこそ、筑波大というサッカーを論理的に学べる環境で4年間を通して自分の武器をしっかりと伸ばそうと思った」と筑波大の門を叩いた。

 そこで、佐藤が高3の時に筑波大のGKコーチで、浦和レッズのGKコーチを務めるジョアン・ミレッのメソッドを1年の時から身体に染み込ませた。サイドステップやクロスステップ、そしてコースの消し方など多岐かつ細部に渡って論理的に整理されているメソッドで技術が飛躍的に伸びた。

 さらに陸上の谷川聡(筑波大体育系准教授)氏に走り方を学ぶことで、肩甲骨の可動域を広げたり、背後のボールやクロスに対しての飛び出す初速やスピードの出し方を身につけた。佐藤が望んだように論理的で多角的に、GKとしてだけではなく、アスリートとしての能力を向上させたことで、今年の飛躍に繋がった。

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 すでにJ1、J2の複数クラブの練習に参加し、プロのスカウトの視線が集中するなかでも、佐藤は自分の進化を貪欲に追い求めている。実際、2か月前に比べて明らかに肩幅が大きくなっていた。

「1年前に左肩を怪我して、秋前くらいまでセービングの時に痛みがあったのですが、この先を考えた時にきちんと肩周りを強化していかないと、セービングなどの質やパワーが上がらないと思ってかなり鍛えました」

 最終戦で見せた2つのビッグプレーを振り返ってみても、反応しただけではなく、いずれもピンチにならない場所に弾き出すパワーがあった。まさに秋以降に課題を持って取り組んできた努力の成果だった。
 
 佐藤の今季の大学サッカーはこれで終わりではない。来月からは全国タイトルのかかったインカレが開幕する。

「お世話になった4年生と共に日本一になりたい。感謝の気持ちと来季への責任感を持ってゴールに立ちたいです」

 まだまだ進化の途中。スケールの大きな逸材は、その身体をさらに大きく見せ、相手に脅威を、味方には安心感を与えるべく、自己研鑽を続ける。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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