2024年11月8日(金)、東京発スリーピースロックバンドReccaが東京・下北沢SHELTERにて全国51箇所を巡ったツアー<keeping myself in your memories tour>のファイナル公演を開催した。約半年をかけて、1st demo『keep in BLUE』を各所へ届けた同ツアー。at Anytime、Brown Basket、JasonAndrewの3組をゲストに招き、自身の進化を提示した最終公演の様子をお届けする。

トップバッターを担ったat Anytimeは、中村直矢(Vo, G)の「いこうか!」の合図から「STILL IN BELIEVE」でティップオフ。颯爽と駆け抜けていくギターソロでは、山本優樹(B, Cho)が中村の背中に隠れてひょっこり顔を出したりと、結成20周年を迎えたとは思えないお茶目な一面でハートウォーミングな空間を生成していく。「よう知らんおっさんが出てきたろ」と笑いを取りつつ、自分たちのステージへオーディエンスを引き込んでいく力は、長年の鍛錬で培われてきたものであり敬服するばかり。着古したTシャツを身に着けてフロア前方で熱唱するファンの姿は、数十年後のReccaと観客の関係を想起させた。

「せっかくやから、一緒にやろう」と投げかけた中村に、会場も両腕をハンズアップして応答した「LIVE BY FEEL」を終え、「結局、自分次第で誰も助けてくれへん。だけど、ライブハウスに来ることで1歩を踏み出すことができたら」と最後に披露されたのは「OVERCOME」。須崎勇登(Dr, Cho)のどっしりとしたビートを先頭に、繰り返される<Don’t be afraid.>の一節が力強く響いていく。幾年も走り続けてきた彼らが放つ「恐れるな」のメッセージは切で、3人の背中が大きく見える。ライブ中盤、3人は「無事にツアーから帰ってきてくれて嬉しい」と話していたが、ツアーの過酷さを知っている彼らが溢したこの言葉は心からの祝福に満ちていた。後輩への愛情と共に、先輩の貫禄を見せつけたat Anytime の30分だった。

「Reccaと初めて会ったのは東京・府中Flightで。まず人が好きになって、音楽が好きになって、ライブが好きになった。この瞬間、この日にやれてることが嬉しいです。これからもやっていくんで、その瞬間にいてください」。岸本和憲(Vo, G)のこのMCは、2番手に登場したBrown Basketがこの日にかける想いを示していた。omochi trip(G)のアルペジオが切り込む「リメンバーユー」をのっけからぶっ放した4人は、「SHELTER、遠慮すんな!かかってこい!」「声出せ、SHELTER!」と煽りながら「切に願う」「アンラッキー」を連打。いつにも増して咆える岸本からは「滅茶苦茶(ツアーの本数が)あった中で、どこに呼んでくれるかなと思っていた。ファイナルに呼んでくれて嬉しい」と語った通りの喜びが染み出ていたし、そんなポジティブな空気につられて、会場もスカダンスあり、ステージダイブありのカオスティックな様相を呈していく。

エンディングに華を添えた「君の声を」では、フロント3人がそれぞれ客席へ飛び込んだり、白井紘雅(Recca Gt,Vo)と熱い抱擁を交わす一幕も。乱れに乱れたチューニングだろうと、ビートとボーカルだけであろうと、物足りなさを一切感じることがないのは、服を脱ぎ捨て文字通り身一つで熱演を繰り広げる岸本の存在も大きい。ヒートアップする場内に決して満足することなく、泥臭く高みを追究したBrown Basket。汗だくのショータイムで、いよいよツアーファイナルも後半戦へ!

数々の盟友たちとバトルを繰り広げてきた<keeping myself in your memories tour>最後の刺客は、JasonAndrewだ。逆光の照明が4人のシルエットを縁取る中、ひと際ヘビーなサウンドが火を焚べる「Statement」で幕を上げると、続けざまに「Drain」をプレイ。12月にリリースを控えた『STATEMENT』の流れさながらに迎えたオープニングからは、彼らの最新作の完成度と絶好調っぷりを伺うことができるだけではなく、最新型のJasonAndrewでReccaを迎え撃とうという気迫もひしひしと伝わってくる。

ムーのハイトーンボイス(G, Vo)とタカギユウスケのローの効いた声色(G, Vo)、Ryosei(B, Vo)の野太いシャウトが混ざり合えば、ハードコアらしい肉体的なフロアが出現。これにはRyoseiも破顔していたが、おそらくメロデックパンクを主軸に置いたタッグにアウェイも想定していたのだろう。しかし、日々ライブハウスで遊び慣れたオーディエンスには、そんな心配もご無用。会場を味方につけて畳みかけた「Roll Along」では、ムーとタカギが上下に散ってソロを炸裂させ、風神雷神を彷彿とさせる迫力を放っていた。

「お祝いだ、今日は!」とパーティーを宣言しプレイされた「Vintage」では、一発目を鳴らした瞬間に怒号が舞い、Ryoseiも「そんなに湧くんですか?」と驚きを浮かべる。オーバードライブのかかった分厚いベースと裏で刻まれるギターがゆっくりと身体を揺らせば、「分かってるよな? かませ!」を号砲に爆発。フィジカル的でありながら、時に軽快に踊らせたJasonAndrewが完全に空間を掌握し、この日の主役Recccaへ襷を手渡した。



先輩3組からの激励を受け、遂にツアーファイナルの舞台へ姿を現したRecca。オープニングナンバーに据えられた「天つ風」の曲中、白井紘雅(G, Vo)は〈走る 走っていく 変わる 変わっていく〉のラインで自身を指差した。この数秒の仕草には、半年に及ぶツアーを経て変化したものや変わらなかったもの、変わって欲しくないと願ったもの、それら全てをこの場所で確かめようとする気概に満ちていたと思う。ライブ中、白井が「50本を終えて、こっから見る景色は全然違う。でも、あなたの目の輝きとか、俺の気持ちは変わってない」「いつも通り、いつも以上のライブハウス作ろうぜ」と幾度も可変と不変について口にしていたことは、その表れだろう。ツアーを完走できた感慨深さを時折滲ませながらも、今しかないこの瞬間を刻み付けるように3人は「蜻蛉」「春すぎて」を連投し加速していく。



「半年かけて、出してきた音、吐いてきた言葉全てがひとつになる。変わらないガキみたいな、真っ青で真っ白な衝動が俺たちの武器」と叫んでドロップされた「keep in BLUE」から「何も変わらない衝動の歌」と称された「ボーイ・ミーツ・ミュージック」を連ねたブロックは、まさしくこの日を象徴するワンカットだった。胸の高鳴りを燃やし続けることを誓う歌と音楽の稲妻に打たれた日の歌を、白井は一段と優しい目でフロアを捉えながら紡いでいく。その姿は、この曲を鳴らす度に彼らが今日を思い返すこと、Reccaが次の世代への種を早くも撒き始めていることを確信させる。思えば、彼らもこうやってライブハウスでトキメキの灯を受け継いできたはず。音源化されていない楽曲にもかかわらずフロアを埋め尽くしたシンガロングは、彼らが新たなアンセムを生み出していることの証明にほかならなかった。





「色んな所で、色んなライブをしてきたけど、やっぱりライブが好きだなと思います。俺が繰り出す衝動とあんたの衝動がぶつかる、このライブハウスが好きなんすよ」と告げ、ドロップされたのは本ツアーで欠かすことなく鳴らしてきた「Starry Night」。ここ1番のシンガロングとリフレインされる〈あなたといたい〉のラインに、これは孤独を分かち合う歌なのだとハッとする。そんな確信を裏付けるが如く、白井はトラブルで鳴らなくなったギターの生音を微かに響かせながら「初日にこの曲は約束なんだって言って披露した。ファイナルになっても、何一つ変わらないよ」と言葉を残す。衝動が不変であることを改めて揺るぎないものにするように語ると、ギターサウンドは帰還し、クライマックスが爆音で彩られていく。あまりにもドラマチックな終盤に涙腺も緩む中、「今日からこいつ(ヤマギシ)、正規」なんてあっさり告げて、最後のサビへ。狂喜乱舞するフロアに響いた〈今もあの日のまま〉で示唆されている「あの日」は、初めてギターを握った時や誓いを交わしたツアー初日とシンクロしている。しかし、新生Reccaが一音目を鳴らしたこの瞬間は、未来から今日を眺めた時、間違いなく大切な「あの日」になるのだと思った。



ゆっくりと熱を繋ぐように「lien」「渚」を添えて、ついにピリオドが打たれた<keeping myself in your memories tour>。まだまだReccaは走り始めたばかり。ライブハウスでは今日もReccaの青い炎が揺れている。



Text:横堀つばさ
Photo:ハマムラノゾミ、タカギタツヒト

2nd digital single『keep in BLUE』

2024年8月4日(日)リリース
配信:https://linkco.re/6ND6tzMc



1st demo『keep in BLUE』

2024年4月26日(金)
1,200円(税込)会場限定販売



◆Reccaオフィシャルサイト