「お、ねだん以上!」でおなじみの家具・インテリアメーカーのニトリが始めた外食事業が、3年8か月という短い期間での撤退を発表した。なぜ撤退にいたったのか、同社の担当者が取材に応じた。
ニトリグループ初の外食事業
2021年3月から始まったニトリグループ発の外食事業「ニトリダイニング みんなのグリル」および「みんなのサンド」。“グリルならではの焼きたてのおいしさを、もっと手軽に”をコンセプトにかかげ、オーダーを受けてから1つひとつ焼きあげる本格派の店を目指し、経営を続けてきた。
もちろん「お、ねだん以上。」の精神も忘れず、値段はかなりお手頃。人気商品のひとつである240gのチキンステーキは590円(税込み)。さらにライスやスープはそれぞれ150円でお代わり自由のうえ、セットにすると250円だ。
ドリンクもホットコーヒー150円、コーラ150円、オレンジジュース100円、生ビールグラス(中)300円、ハイボール180円、ワイングラス180円、ワインデカンタ500円など非常に良心的な価格だ。
物価が上がり、飲食店が軒並み値上げしている中でもこの価格帯で提供しているとあって、利用したユーザーからの評価は好意的だった。
〈安いしおいしいから行列店になると思ったんだけどな〉
〈味悪くないし値段も良心的、さすがお値段以上のニトリがやってるだけある〉
〈ウリのチキンステーキ食べてみたけど、この値段でこの味なら十分美味しい!〉
〈値段と味のバランスは良さそう、おそらくサイゼと競合しそうだけど、こっちはライスサラダスープバーありだからいいんじゃないか〉
〈お手頃価格でなかなか美味しかったのに。これからどこで、香ばしく焼けた鶏肉&パリパリ皮を食べたらいいのよー〉
その一方で、店内はあまりにぎわってはいなかったという。ちょうど先日、東京の環七梅島店に行った男性が証言する。
「金曜日の20時頃に訪問したのですが、客は2、3組だったでしょうか。閉店時間が21時とはいえ、少し寂しさを感じましたね。ただ、私がこの店に初めて来て思ったのは、“もっと早く来ればよかった”ということ。それだけクオリティーは申し分なかったし、お肉がとても柔らかく、まさに『お、ねだん以上。』の満足感でした」
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担当者が明かした撤退の理由
こちらの「みんなのグリル環七梅島店」は11月24日をもって閉店するが、そのほかにも「みんなのグリル成増店」「みんなのサンドホームズ川崎大師店」も11月17日で閉店し、生き残っていた3店舗は11月で一斉に閉業する。
なぜ閉店にいたったのか、株式会社ニトリパブリックの外食事業部マネジャーが取材に応じ、理由を明かした。
「昨今の市場環境の変化により、飲食業からの撤退を決定致しました。また、業態を変更したり、メニューを変更したりさまざまな取り組みを実施しましたが、多店舗化することは難しいと判断いたしました」(外食事業部マネジャー、以下同)
2023年の11月30日に「みんなのグリル ホームズ川崎大師店」を閉店し、同年12月21日にサンドイッチ専門店の「みんなのサンド」をオープンするなど、確かに試行錯誤をして取り組んでいるようだったが、結果的にこの店も1年弱での閉店となってしまった。
なお、料理やドリンクの価格が良心的すぎたことが原因なのではないか? と聞くと、「関係ございません」とのことであった。
今後、またニトリグループが外食事業をする可能性については、現在のところはないそうで、しばらくはあの低価格で楽しめるレストランが見られなくなりそうだ。
大型家具店とレストランの組み合わせといえば、コストコやIKEAのフードコートは非常に人気が高いため、ニトリが外食事業に進出すると発表されたときは、期待の声も多かった。
大きな資本があっても、まさかこのような結果になるとは。外食産業の難しさを改めて感じてしまう。
取材・文/集英社オンライン編集部