風向きが変わり始めた「60分漫才」挑戦
大波 でも、考えてみると、2023年の選考会に出たときの、あのときの感じがわけわからなくて。三四郎さんに負けたんだけど、なんとなくあの大会をきっかけに、急に追い風が吹いてきた感じもあって。そこから1年間、「60分漫才」で全国をまわって、なにか結果が出たとかではないんですけど、2024年に出場したときになにかにつながった気がしました。
――「60分漫才」をクラファンしてまでやってみようと思ったのはなぜですか?
大波 僕らはずっと何をやるにも、「集客」の問題がつきまとってきたんです。ライブやるにしても、いつも最終的に集客で終わってしまう。でも、そのあたりが変わり始めたのがその2023年のあとに感じた追い風のあたりからで。全国まわりたいけど、僕らの知名度では無理かとなったんですけど、クラウドファンディングをやってみたら、応援してくださる方が出始めて。結局、それで実現できたんです。
安部 配信が入ったことで、関東に住んでいなくてもタモンズを見てくれる人が出て来た感じはありました。なんだろう、環境が変わり始めた感じでしたね。
大波 でも、よくよく考えてみると変わり始めたのって、僕たちのM-1ラストイヤー(2021年)の前年で。やっぱり2人でやっていこうとなったときに、もう1回、漫才に向き合うようになって。映画『くすぶりの狂騒曲』でも描かれてましたけど、体感としてはそのあたりから変わり始めたんじゃないかなと。まぁM-1には間に合わなかったんですけど。
出典: FANY マガジン
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映画化の理由は「いちばんくすぶってたから」
――『THE SECOND』で決勝戦に行き、その流れで自分たちの話が映画化されるってすごい流れだと思うんですが、どういう経緯だったんですか。
安部 『THE SECOND』の前から映画の話はあって。最初に話がきたのはだいぶ前。 「大宮セブンで映画が作りたいけど、ただのサクセスストーリーではなく、お笑い芸人で夢を持っているやつの現実みたいなものを描きたい」と、最初にプロデューサーの方に言われたんです。
僕は「最後もうまくいかないまま終わりたい」ということを言ってたので、なんなら、『THE SECOND』の決勝戦がなかったほうが映画的にはよかったのかもしれないんですけど(笑)。その当時、いちばんくすぶってたのがタモンズだったから、僕らが中心の話になったということなんですけど。
大波 でも、いろんなミラクルがあって。4月の沖縄国際映画祭で初めて先行上映したタイミングと、僕らが『THE SECOND』のノックアウトステージでダブルアートと戦って決勝に行けるとなったのが同じ日の同じ時間やったんです。
それで、主演の和田正人さんが舞台挨拶をしている最中に、スタッフさんが入ってきて「決勝決まりました!」と伝えて盛り上がったという話も聞いて。ある意味でいろいろと出来すぎてて、「これ来年、絶対に予選で負けるっていうフラグだな」と思うほどなんですけど(笑)。
出典: FANY マガジン
――そこも含めて、まさに映画みたいな話ですね。映画もすごく面白かったんですが、どこまでがフィクションで、どこまでが本当なんだろうっていうのが気になりました。
安部 囲碁将棋の根建さんが、ラストのほうで僕にいろいろ言ってくれるシーンがあるんですけど、あれはホンマに言うてました。あと、僕の奥さんの感じとかもほんまです。実際の映像を使ったんやないかなっていうほどで。
――大宮セブンを演じている俳優さんたちも、見た目でなく、言い方や佇まいみたいところが「似てる!」と思いました。
大波 主演の和田さんに聞いたら、役者さんたちは逆に似せないようにしようと話していたらしくて。つまり、モノマネになってしまうとよくないから、役に入ればおのずと似てくるはずと。だから、俳優さんならではの高度な技ですよね。
ただ、僕らを題材に映画にしてもらいまして、いろいろよかったよと言っていただけたりするんですけど、正直、僕らは何もしていないので(笑)。
安部 自分たちの話だけど、「どうですか?」と聞かれても、僕らは何もしてないので何とも答えようが難しくて困るという。役者さんたちはすごくて、「最高でした」と言いたいけど、それって自分たちのことを最高と言っているような感じでもあるし。言いづらいところはあります。