過去最大規模の全国ツアーを行ったLUNA SEAが11月14(木)および15日(金)に地元である神奈川県の神奈川県民ホールにて<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 3- LUNACY 黒服限定GIG FINAL DAY1 / DAY2>を開催した。過去と未来を行き来するタイムリープの旅ともいえる全41本のロングツアーの“FINAL”と位置づけられたものだ。
もちろん、2025年2月23日(日/祝)に東京ドームで開催されるグランドファイナル公演に加え、急遽発表された同会場で前日に行われるGLAYとの対バンイベント<The Millennium Eve 2025>が控えてはいる。が、全国各地を、そして時代から時代へと過去のLUNA SEAを検証、再現する旅はメジャーデビューアルバム6作品のライヴに黒服限定GIGが加わった最終章<EPSODE 3>でひとつのピリオドを打ったと言っていいのかもしれない。
約1年の活動休止を目前に控えた1996年12月23日に横浜スタジアムで開催した<真冬の野外>、REBOOT後の2010年12月25日に東京ドームで行われた入場料無料の<黒服限定GIG〜the Holy Night〜>。記したのはほんの一部に過ぎず、LUNA SEAは前代未聞の挑戦を続け、その先の景色を見るために数々の伝説を作ってきた。そして35周年の節目に最大規模のツアー<ERA TO ERA>を実現させるなんて、誰が想像しただろう。LUNA SEAらしいと言ってしまうのは簡単だが、今なおリスク覚悟の挑戦を続けている彼らは驚異的な存在である。そして新たな世代、男性のSLAVE(LUNA SEAファンの呼称)が増え続けている中、黒服で埋め尽くされた会場の熱量が‘90年代と変わらないことも驚異的だ。その最終日、DAY2の模様をレポートしたい。
ドラムセットの上に電飾のクロスが配されたほの暗いステージ。開演予定時刻18時30分をまわり、自然発生的にハンドクラップが沸き起こると、抑えきれない期待で会場に「やばい やばい!」という声が響く。やがてSEが爆音に変わるとどよめきで空気が大きく動いた。幾筋もの赤い照明が注ぎ、ステージ上部に”LUNACY“という文字が浮かび上がる中、メンバーが定位置につき、大歓声の中、投下されたのは「SEARCH FOR REASON」だった。INORANのリヴァーブが効いたギターにSUGIZOの切り裂くような狂気的なフレーズが加わり、RYUICHIが歌い出すといきなり悪夢に引きずり込まれる感覚。不穏な世界観を刻む真矢とJのリズム。目の前にいるのは今のLUNA SEAだが、ミラーボールの反射する光、全てが赤に染まる演出もあいまって時空が歪むような感覚に襲われる。
初日はフルサイズで演奏されたこの曲の空気を裂くように特効と共に投下されたのは「PRECIOUS…」。弾けるアクトにSLAVEもレスポンスで参戦。長い髪をまとめ、レザーに身を包み侍のような趣のJと、今回もエナメルのニーハイブーツで当時の衣装を彷彿とさせるSUGIZOが背中合わせになり、ドレッドヘアのINORANがドラム台にかけ上がる。研ぎ澄まされた演奏とパフォーマンスに釘づけだ。
「神奈川、会いたかったぜ! 今日この会場にいるみんな、全員でありえない世界を見に行きましょう!」──RYUICHI
RYUICHIが絶叫し、その勢いのまま「SLAVE」を投下。前半からカオスに放り込まれる。Jのベースラインと真矢のシャープなドラミングが超絶クールな「BRANCH ROAD」はSUGIZOとINORANのギターのアンサンブルが狂気と浪漫を感じさせ、RYUICHIの“絶望”という声が響き渡る中、ノイジーでハードコア且つプログレッシブな「SYMPTOM」では場内に無数の拳が突き上げられた。まさに冒頭のSLAVEの叫び通り、「やばい やばい」である。
LUNA SEAがインディーズ時代に生んできた楽曲たちは発想の宝庫である。パンク、メタル、プログレ、洋邦を超えてあらゆるジャンルを呑み込んで、“俺ならこう弾くこう叩くこう歌う”とそれぞれの主張をぶつけ合わせ、ライヴという主戦場で昇華されていったLUNACY時代の曲の数々が後の独自性を持った洗練されたアンサンブルへと繋がっていった。
感謝の言葉を短く述べた後に披露された「SANDY TIME」はその片鱗を感じさせるナンバーであり、REBOOT後にさらにスケールアップされた。低域の色気が際立つRYUICHIのボーカル、砂混じりの風が舞っていくようなサウンドスケープが素晴らしい。そして余韻に浸っている暇もなく、2ndデモテープ「SHADE」に収録されていた「SUSPICIOUS」が再び空気を変える。ブレイクの嵐の攻撃的な前半からSUGIZOがヴァイオリンに持ち替え、儚く幻想的なセクションへと移行するヴァージョンはREBOOT後の東京ドームでも披露された。ミラーボールの光とクロスが浮かび上がり、INORANのギターが場内に響きわたる。
そこからインディー時代から存在し、メジャー2ndアルバム『EDEN』に収録された「LASTLY」に。繰り返されるSUGIZOのメインフレーズとJのベースラインに中毒性があり、間奏ではJのソロから曲を彩るテクニカルなSUGIZOソロへ。拍手と大歓声、陶酔のため息の中、第一部が終了した。
約15分のインターミッションを挟んで、赤と青の照明がクロスするように注ぐ中、第二部は真矢のドラムソロからスタート。一打一打に魂が込められているドラミングは飽きさせることがないが、いつも以上にエッジが立っている気がしたのは“黒服限定GIG仕様”だろうか。強力な場内からの「真矢!」コールに「もっと来いよ!」「今日はこの長い長いツアーのファイナルだから。悔いのないように気合い入れて全開で行こうぜ!」。煽りに負けないパワーで応えるSLAVEたちが頼もしい。
イントロから大歓声が上がったのは「MECHANICAL DANCE」だ。Jが前に出てベースを凶暴に弾き、勢いの塊のようなキレのある演奏をみせる。RYUICHIの気迫に溢れたボーカルが凄まじく、メロディックで畳みかけるサビは特に秀逸。INORANのキレのあるカッティングと突風を吹かせるようなSUGIZOのソロ。ベースで終わるエンディングまで全てが刺激的だ。
「ツアーはここ(神奈川県民ホール)で終われたらいいなと思っていたので、盛り上がっていきたいと思います」──RYUICHI
終幕前から立ってきたこの会場は2025年3月で休館になる。そして、ファイナル公演で驚かされたのはRYUICHIのボーカルだ。まだ完全なベストコンディションではない中、長いツアーを敢行するのは生半可なことではない。実際、この夜のMCは声が掠れていたこともあり、聞き取りづらい箇所もあった。にも関わらず、歌い出すと実にパワフル。しかもシャウトをためらわない。その喉のコントロールもプロフェッショナルだ。
曲名を絶叫し、投下されたのは1stデモ音源未発表曲であり、<黒服限定GIG 2022 LUNACY>でもSLAVEを驚かせた激レアハードコアナンバー「KILL ME」だった。後半戦は息もつかせないセットリストだ。Jのベースから雪崩れ込んでいく「SEXUAL PERVERSION」はREBOOT後、何度か演奏されていたこともあり、すっかり「TIME IS DEAD」の原型だと認識されているのか、怒涛の大合唱に。SUGIZOのロングトーンが最高に心地いいギターソロで魅了し、その横でRYUICHIがひざまづく。神奈川県民ホールの空間自体が、狂気かつ狂喜。
「BLUE TRANSPARENCY(限りなく透明に近いブルー)」に続くファストナンバー「CHESS」ではINORANが一心不乱にギターをかき鳴らし、SUGIZOがアンプの前でくるくる回る。そして真矢の音を合図に「SEARCH FOR REASON」の後半パートに突入。切り裂くようなRYUICHIのシャウト。突然、途切れる幕切れに鳥肌が立った。
アンコールではSLAVEたちが企画したおなじみの寄せ書き横断幕やグッズのタオルを持ってメンバーが登場。“EPISODE1、2、3、完走おめでとう”と書かれた横断幕はドラムセットの下に飾られた。ダウンピッキングで疾走する高速ナンバー「SHADE」で、“この苦しみを呉れてやる”と漆黒の世界にいざない、その暗闇から解き放つように「Déjàvu」が放たれた。ステージも客席も白い光に包まれ、全力で歌いまくるSLAVEたち。エンドで真矢のスティックが宙高く舞い上がった。
そして本ツアーの最後を飾るメンバー紹介。一番手は、地元・はだのふるさと大使でもある真矢だ。
「これだけ多くのツアー、廻りきれるかな?といろいろ考えたんだけど、廻りきれたことが嬉しいんじゃなくて、全箇所みんながいてくれたことが嬉しくて。みんなは俺たち5人の最高の誇りだ! 今日もみんながカッコよくてさ。感動して本当に泣けてくるよ。ありがとう。ここは神奈川だけど、秦野駅の駅メロ(をLUNA SEAの曲にする)署名活動してくれる仲間がいて。その仲間、そして俺達を応援してください。神奈川をLUNA SEAで染めようぜ。来年2月は東京をそして日本をLUNA SEAで染めようぜ!」──真矢
「神奈川!! ファイナル! ここまで来ました! 改めてみんなに感謝したいと思います。そして今日、この会場に来られなかったみんな、“今頃(ライヴ)やってんだろうな”と思っている全国のみんなにLUNA SEAのメンバーからお礼を伝えてくれ。真矢くんが言った通り、35周年で一箇所一箇所、自分たちが作った曲を改めて演奏して、一緒に燃え上がって。本当に俺たち幸せなバンドだなと改めて思ってます! 一本一本景色が全然違って、一本一本学ぶことがあって。今日でファイナルを迎えると思うと、寂しいという気持ちとたくさんの感謝といろいろな感情が渦巻いていて、あまり言葉にできませんが、ありがとう。35周年の節目にLUNA SEAの駅メロだぞ! 本当にありがたいよ。東京ドームまでこのまま行こうぜ!」──J
そして「僕ら神奈川出身ってわけじゃないんだけど」と言い間違えて会場から「えーっ!?」という声が上がったINORANはアクシデントがあったからこその熱い言葉を届けた。
「カッコつけないでしゃべるよ。ファイナルでメンバーともみんなとも会えなくなるのが本当に寂しい。(ツアーで)季節も3つ超えました。何年ぶりの場所だったり、いろいろ行ったけど、何をしたかじゃなくて、誰といたかなんだよ。このメンバーとツアーを支えてくれたスタッフが40〜50人いる。地方でもその時に来てくれるスタッフがいて、そしてお前らもいるんだよ。心から感謝を申し上げます。どうもありがとう! そして、東京ドーム。誰といたいか。俺はお前らといたいからさ! 絶対来いよな!」──INORAN
SUGIZOはマイクを通さずに生声で「神奈川!」と3度も絶叫した。
「このツアー、相模大野(グリーンホール)からスタートさせてもらって、ここ神奈県民ホールで終わる。神奈川を背負って立つLUNA SEAです。グランドファイナルは東京ドーム。神奈川の誇りを背負って、グランドファイナル・東京ドーム。全員の顔が見たいから、全員の顔を覚えて帰るから、一緒に旅を続けてください。俺たちの旅は2月まで続くから、今後のストーリーを一緒に体験しましょう。“この苦しみを呉れてやる”、“この悲しみを呉れてやる”と歌っていますが、その心は“この喜びを呉れてやる”です。心から愛してます」──SUGIZO
客席から「RYUICHI」と呼ぶ声が上がる中、RYUICHIはSUGIZOに「かながわ観光親善大使。神奈川の誇り」と紹介され、生声で「愛してるよ!」と叫び、いつものようにスタッフに惜しみない拍手を送るように告げた。
「さあ、今年最後の“#LUNAPIC”(スマホでの静止画撮影OK)かな。「WISH」で思いきり楽しみながらライヴ写真を撮って」──RYUICHI
みんながスマホの操作に夢中なため、リアクションが薄いことを笑いながら、「神奈川県! 全員でかかってこい!」と煽った「WISH」では放たれた銀テープが3階まで到達した。終演後、SLAVEたちによる愛に満ちた写真がSNSに溢れることになるのだが、SUGIZOは客席まで降り、Jは下手スロープでシャッターを切るポーズ。RYUICHI、INORAN、Jが真矢の前に集合する一幕もあった。その最後はRYUICHIがこう挨拶した。
「ドームのチケットが売れたから喜ぶとかじゃなくて、俺たちにしかできないドームのショーの在り方をきっとみんなと一緒に作っていけると思うんだ。それを作り上げた時、初めて“東京ドームに立ててよかったな”と感じると思う」──RYUICHI
みんなで手を繋ごうとしたその瞬間、盛大なアンコールの声が神奈川県民ホールに響きわたった。終わらないで欲しいという気合いがこもったコールに集まって打ち合わせをする5人。JのOKのリアクションに怒涛の大歓声が沸き起こった。
「じゃあ、もう一丁行こうか! ファイナルだからね。地元だしね。俺たち、全87曲をタイムリープっていうのかな。いろんな年代の曲たちと向き合って、とにかく、すごい日常を過ごしてきました。LUNACYの扉を開いたのはこの曲なのかな」──RYUICHI
SLAVEたちの熱い熱い想いがあって実現したダブルアンコールで投下されたのは真矢のパワフルなドラミングで始まる1stアルバム『LUNA SEA』の1曲目に収録されている「FATE」だった。神奈川県民ホールが揺れるほどの暴れっぷりは爽快。黒服限定GIGにふさわしいフィナーレだった。
残すは東京ドーム2DAYS。グランドファイナル公演を<35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE-LUNATIC TOKYO 2025-黒服限定GIG->と銘打ったLUNA SEAは、その先にどんな景色を描くのか。RYUICHIが発言した通り、ドームをソールドアウトさせることより、体感したいものがあるから立つのだろう。旅の続きは未知数だ。そして、LUNA SEAはそういうバンドだ。だから、奇跡を起こし続けてきた。見逃すわけにはいかない。
取材・文◎山本弘子
撮影◎田辺佳子
■<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 3- LUNACY 黒服限定GIG FINAL DAY2>11月15日(金)@神奈川県民ホール SETLIST
01. SEARCH FOR REASON
02. PRECIOUS…
03. SLAVE
04. BRANCH ROAD
05. SYMPTOM
06. SANDY TIME
07. SUSPICIOUS
08. LASTLY
-Drum solo-
09. MECHANICAL DANCE
10. KILL ME
11. SEXUAL PERVERSION
12. BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
13. CHESS
14. SEARCH FOR REASON
encore
15. SHADE
16. Déjàvu
17. WISH
18. FATE
■<LUNA SEA / GLAY The Millennium Eve 2025>
2025年2月22日(土) 東京ドーム
開場16:00 / 開演18:00
■<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE-「LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-」>
2025年2月23日(日/祝) 東京ドーム
開場15:00 / 開演17:00