医療の「エビデンス」とはそもそも何なのか? 適切な医療や健康情報を手に入れ、活用するために必要なヘルスリテラシーとは

〈エビデンスレベル4〉

「症例対照研究(後ろ向き研究)」や「コホート研究(前向き研究)」など。

症例対照研究は、ある病気を発症した人と発症しなかった人のそれぞれの生活習慣や基礎疾患の有無などを、カルテなどの記録から過去にさかのぼって調査し、病気の要因を見つける方法です。

時間軸をさかのぼって研究するため、「後ろ向き研究(retrospective study)」とも呼ばれます。「後ろ向き」とは、考えかたが消極的だとか、物体の後ろ側が見えているといった意味ではありません。たとえば、「心筋梗塞と喫煙歴の関連性について、心筋梗塞になった人とそうでない人について、カルテを過去にさかのぼって調べて、喫煙歴を比較する」といった研究方法を指します。

一方、「コホート研究(cohort study)」のコホートとは「大きな集団」を指し、まだその病気にかかっていない多数の人を集めて、現在から未来に向かってデータを収集します。この研究方法では、どのような要因や特性を持つ人が発症するのかを長期にわたって追跡し、分析します。時間軸に沿って研究するので、「前向き研究」と呼ばれます。

たとえば、「喫煙している人と喫煙していない人を、数年から数十年にわたって追跡し、心筋梗塞の発症率を比較する」といった研究の方法をいいます。

世界的に評価が高いことで知られる日本のコホート研究に、1961年から九州大学が実施している「久山町コホート研究」が挙げられます。福岡県の久山町で、住民を対象にした脳卒中、虚血性心疾患、認知症、慢性腎臓病、高血圧、糖尿病、胃がん、大腸がん、ゲノム疫学、眼科、心身医学などの疫学調査が行われています。

後ろ向き研究と前向き研究では、同じレベル4であっても、「コホート研究(前向き研究)」のほうが信頼性は高くなります。後ろ向き研究でいざデータを集めようと思っても、そもそもデータがカルテなどに記録されていなければどうしようもありません。その点、前向き研究の場合はこれからデータを集めるので、正確に調べることができるからです。

また、「横断研究(cross-sectional study)」と「縦断研究(longitudinal study)」に分類することもあります。前者は、アンケート調査など、特定の集団に対してある一時点で調査する研究のことで、これもレベル4に含まれます。後者は特定の集団に対して長期間にわたって追跡調査を行い、データを収集します。前述の前向き研究、後ろ向き研究がこれに該当します。

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〈エビデンスレベル3〉

「非ランダム化比較試験」を実施した研究。
非ランダム化を理解するには、先に「ランダム(random)化」(次の項目・レベル2の研究デザインのこと)とは何かを把握したほうがわかりやすいので、まず、そちらを説明します。

「ランダム化」とは、くじ引きなどを使ってグループを分ける方法です。まさにランダムに振り分けられ、恣意的にグループ分けを操作することができません。一方、「非ランダム化」とは、そこまで厳格には分けない方法のことです。たとえば、カルテ番号を偶数と奇数で分けるとか、来院の順番に交互に振り分けるなどです。

このように、ランダムなグループ分けをせずに実施された「非ランダム化比較試験」の結果は、ランダム化比較試験より信頼性が低くなるため、レベルがひとつ低いレベル3として分類されます。