大本命だったニコ・ウィリアムス(アスレティック・ビルバオ)の残留の決断を受けて、即座に次点のダニ・オルモにターゲットを切り替え、獲得に至ったというのが、バルセロナの今夏の補強を巡る動きだと一般的に認識されていた。しかし、このインターナショナルブレイク中にスペイン紙『ムンド・デポルティボ』が公開したインタビューの中で、スポーツディレクター(SD)のデコはその通説を否定するような発言をしている。
「今夏我々がニコに関心を抱き、獲得に動いたのは事実だ。しかし、我々はダニ・オルモを獲得した。私がもっともプライオリティーを置いていた選手だった。彼のようなタイプの選手がチームに欠けていると考えていたからね。一方のニコの獲得には、前線の競争を活性化させようという狙いがあった。でもバルサに関心を示さなくなった時点で、我々は彼の話をすることはなくなった」
この発言を受けて同紙の編集長、サンティ・ノジャ氏は、「デコのロードマップの中で、ニコも選択肢の一つだったが、常に優先順位の最上位にいたのはダニ・オルモだったようだ」と述べている。その関心の高さは、ダニ・オルモ本人の言葉からも窺える。
「デコは最初の段階から、熱意を示してくれた。過去のバルサの誰からも伝わってこなかった本気度を感じた」
実際、ダニ・オルモのバルサ復帰説が浮上したのは今夏が初めてではない。スペイン紙『AS』のフアン・ヒメネス氏によると、「2021年夏に獲得直前でジョアン・ラポルタ会長に梯子を外された」ことがあったようで、『ムンド・デポルティボ』紙も「2022年のカタールW杯期間中に、当時監督だったシャビがダニ・オルモの父親に直接会って、復帰の可能性を打診した」と伝えている。
今回ダニ・オルモはデコの「君の獲得を最優先に考えている」という言葉を信頼し、合意に近づいていたとされるバイエルンをはじめ、他クラブからのオファーを保留して朗報を待ち続けた。すべてはダニ・オルモ曰く、「最高の場所、最高のチーム、最高のクラブ」に復帰するためだ。
デコが認めるように、バルサはEURO2024でスターダムにのし上がったニコ・ウィリアムスの獲得に動いた。話題性もあったし、左ウイングというバルサの補強ポイントと合致していた。ただそれは、たびたびニコ・ウィリアムス側との接触をほのめかして獲得への機運を盛り上げていたラポルタ会長の意向が強く、デコの頭の中には常にダニ・オルモの存在があった。そのラポルタ会長もダニ・オルモの入団後の活躍を受けて、昨今の移籍市場の傾向に照らし合わせると比較的安価な4700万ユーロ(約77億円)で獲得できたことを自画自賛している。
機を見るに敏なのは一部の識者も同じで、『スポルト』紙のコラボレーター、ジョアン・マリア・バトレ氏のように、「ダニ・オルモがいることで、レバンドフスキはより大きな自由とスペースを享受し、ペドリは自身のクオリティーを高めるポジションでプレーできるようになり、そしてバルサは偉大なラフィーニャを発見した。ラフィーニャはニコが同じチームにいたら、ここまでプレーする機会は与えられなかっただろう」といった意見も出ている。
ジャーナリスト兼作家のシャビエル・ボッシュ氏も『ムンド・デポルティボ』紙のコラムで、次のように主張する。
「ニコが加入して、ダニ・オルモがいなかったら、ラフィーニャはどうなっていただろう? バルサはどうなっていただろう? それは誰にも分からない。でもだからこそ人生は面白いのだ」
文●下村正幸
【動画】12節のバルセロナ・ダービーでダニ・オルノが2Gの活躍!
【動画】インドネシアが強豪サウジアラビアに2ー0で勝利!
【記事】「日本の火力に崩れた!」敵地で3発快勝の森保ジャパン、韓国メディアも強さに注目!「中国は焦ってしまった」