子供がスポーツする機会を得られない?蔓延するスポーツ格差をなくす画期的な仕組み

部活動改革に大企業が集まり、事業アセットを提供


久留米市立諏訪中学校で行った「ブカツ未来アクション」のイベント

その一例が、CORD PROJECTが展開している、中学校の部活動改革を通してスポーツ教育格差の是正を推進する「ブカツ未来アクション」だ。このプロジェクトには家電量販店で知られるヤマダホールディングスや、電機メーカーのNEC、チョコレートなどの製菓で有名な明治グループのハウスエージェンシーである明治アドエージェンシーが連携。コンソーシアムを形成して取り組んでいる。


ヤマダホールディングス協力のもと行われた陸上教室

「コンソーシアムのみなさんには、事業アセットを提供していただいています。たとえばNECさんは、指導者のメソッドを蓄積して将来に繋げていけるようにインターネットツールを提供していただいたり、明治アドエージェンシーさんにはスポンサーを集める活動をしていただいたり、ヤマダホールディングスさんはイベントの際に人を出していただいたり、みんなで力を合わせて取り組んでいます」

CORD PROJECTでは無料で質の高い指導をすることで、子どもたちのスポーツにおける教育格差が軽減され、これによってアスリートの価値が上がり、さらにそれを応援する企業の価値もあがるという、プラスのループが生まれている。

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誰もがスポーツを楽しめる社会に


福岡県久留米市開催で行われた障がい児イベントの様子

また、CORD PROJECTでは、障がいによってスポーツの機会を失っている子どもたちのためのスポーツ支援も行っている。特に知的障がいのある子どもたちのスポーツ参加に目を向けた池淵氏は、大学時代の同級生でもある日本大学スポーツ科学部競技スポーツ学科の近藤克之准教授に相談。近藤氏は、東京2020パラリンピックで解説を務めるなど、アダプテッド・スポーツに精通している。

「近藤先生に、障がい者スポーツを民間の力で変えたい、と相談したところ『お前らしいな、じゃあ全力で手伝うよ』と言ってくれました。そこで近藤先生のゼミ生と一緒に知的障がいのある子どもたちをターゲットに、軽度から重度まで受け入れられる体制を作ろうということでスタートしたんです。最初のイベントは、日大の三軒茶屋キャンパスを借りて開催しました」

知的障がいのある子どもたちを集めたイベントはスタッフや安全の確保や、そのためのコストなど乗り越えなくてはいけないハードルがたくさんあった。そこで池淵氏は連携しているヤマダホールディングスに「僕の声は世の中に届かないかもしれない。でも、一人でも参加してくれる人がいるならやるべきだと思っています。ですから参加者は一人かもしれませんが、資金援助をしてください」と、その思いを伝えたそうだ。ヤマダホールディングスはその場で快諾。イベント当日は、予想に反して多くの子どもたちが参加してくれたという。

「参加してくれた人たちにアンケートをとったんですが、普段は休みの日でも、あまり外に出ることはないそうなんです。でも、後日参加者の保護者の方から手紙をもらって、子どもがいきなり走り出したり、大きな声を出したりしたときに、自分たちはどう見られても構わないけれど、子どもに目を向けられるのが辛かった。だから、こういう場を作っていただいて本当にありがとうございますと書いてあって、やってよかったなと思っています」

障がいのある人に向けたスポーツ支援をするにあたり、池淵氏は知人から「あなたはもしかしたら本当の障がいのある人に今まで出会ってないかもね」と言われ、ハッとしたそうだ。

「それまで、僕の友人のなかには知的障がいのある人がいなかったと気付いたんです。なぜかと考えたら、そういう子どもたちが、社会に出づらい社会構造になっていて、それは優しくない社会だからじゃないかと思いました。子どもの時から、障がいのあるなしに関係なく友達になれれば、今の状況も変わってくる。それを変えられるのがスポーツの力じゃないかと思っています」