●こぼれ話
「古い価値観を打破し、若い人たちが大きな挑戦をする会社にしよう」という創業の想いが込められた社名「フューチャー」。当時はまだ聞き慣れなく、よく言い間違えられたとのこと。幸いにも、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がヒットしたことにより、「これはいける!」と確信したのだそう。金丸恭文さんは、バック・トゥ・ザ・フューチャーの映画のパネルを見せながら、創業当時の想いを語ってくださった。
「大企業でワン・オブ・ゼムになりたくなかった」という金丸さん。幼少期は、異端児、変わり者、反逆児とまで言われながらも、自分の芯を持ち続け、確立させてきたことを感じさせる言葉だ。PCの黎明期、求めれば求めるほどに新しい情報に触れることができ、どれも刺激的。そんな環境は、反骨精神旺盛でやる気に満ちた当時の金丸さんをどんどん仕事にのめり込ませたに違いない。それはそれは、好奇心が刺激される日々であったと思う。寝る間も惜しかったというのは、言葉通りなのだろう。充実していた日々を語る金丸さんの言葉の端々から、当時の躍動感を感じる。今、AIに感じているような期待や興奮に似たようなものが、次々押し寄せる感じだろうか。当時の激務を想像して、「身体を壊しそうだな…」と思いつつも、ニュース満載な日々にうらやましさを感じる。
「何をするにも、とことんですね」と同席した社員の方に話を振ってみると、大きくうなずきながら、「そうなんです」と実感のこもった言葉が返ってきた。フューチャーの受付には、観葉植物がいっぱい。というよりは、まるでジャングルだ。会議室に向かう道中には池がある。茶目っ気たっぷりに「落ちた人も何人かいるよ」と金丸さん。やるなら思いっきりやり切る感じがこんなところにも現れている。チャレンジは特別なことでなく日常であるのが、金丸さんでありフューチャー。その企業文化をつくり上げたことは、企業価値の一つになっていることは間違いない。ジャングルの中の椅子に腰をかけて、ツーショットを撮りながら、そんなことを思うのであった。
(奥田芳恵)
心にく人生の匠たち
「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)
<1000分の第361回(下)>
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。