新潟県上越市は日本海に面しながら雪も降って山もある、という自然に恵まれた環境の地域だ。周囲には野沢温泉やアライマウンテンリゾート、シャルマン火打など、極上のパウダースノーと広大な非圧雪バーンで知られるスキー場がある。その上越市の中の山際にあるキューピットバレイが、実はトンデモないパウダーの潜在能力を持ったスキー場だということは、実はあまり知られていない。
24-25季にはキャットツアーが行われ、広大な非圧雪コースを貸し切れるサービスも登場。そんな注目の山をスキーヤーの廣瀬健と、スノーボーダーの蛭間太祐の2人が滑った。
ローカルが集まる、知る人ぞ知るゲレンデ
まず、キューピットバレイの名を聞き馴染みない人のために、どこにあるのか把握しておきたい。
キューピットバレイは縦に細長い新潟県の南部、長野県に隣接する上越市にある。豪雪で馴染み深い妙高、野沢温泉、津南に囲まれた場所にあり、キューピットバレイがある上越市安塚区の年間降雪量は799cm(平年値)にもなる。
キューピットバレイは安塚区の中でも奥まった山間にあり、さらに雪が深い。訪れる人は、キューピットバレイが近づくに連れ雪の壁が一段と高くなることに驚く。スキー場のトップは標高720m、全ての斜面が北向きである。
日本が誇る豪雪地帯にありながら斜面は全て北向き。そんな夢のような環境にあるスキー場がなぜこれまで我々のアンテナに引っ掛からなかったのか。それはキューピットバレイがこれまでファミリースキー場として謳っていたからである。スキー場の下半分は緩斜面が豊富なので、ファミリーや近隣小学校のスキー授業にも利用されていて、まさに、スキーデビューに最適。しかし、ゲレンデ上部の地形は入り組んでおり、沢や急斜面、ボウルのような地形など多彩。これまで隠されていたスキー場の本当の面白さが最近認識されてきたのだ。
まずは2人が滑った映像を見て頂きたい。
そんなキューピットバレイを頻繁に滑っているのが、スキーヤーの廣瀬健。今回は仲間のスノーボーダーである蛭間太祐とともに滑りに来た。住まいのある群馬県からわざわざキューピットバレイを目がけて滑りにくるという。そこまで惹きつけるものはなんなのだろうか?
廣瀬:「キューピットバレイの魅力はとにかく降雪量が多くて、コースやツリーラン含め、非圧雪エリアが広い点です。それなのに、パウダーを狙いにくる人はまだ少ない。競争率が低いので、降った日には1日じゃ滑り尽くせないほどのパウダーが眠っています。2,3日はパウダーが残っているので、他のスキー場では雪が残っていない日や絶対にパウダーを滑りたい日にオススメです。パウダーエリアに行くまでにトラバースする必要もなく、ツリーランエリアの中は地形変化も多いので、スノーボーダーにも面白いスキー場だと思います。
雪が少なかった昨シーズンは、BCエリアを除いたスキー場でしっかりとしたパウダーを滑ったのは12月のキューピットバレイだけでした。積雪が多く、山に出かける前にスキー場で新しいギアをパウダーで試せる良い機会にもなります。」
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雨予報を覆し、キューピットバレイだけ大雪
蛭間:「私は普段、野沢温泉をベースにしていますが、キューピットバレイは雪がいいイメージがあって、年に数回は野沢温泉からわざわざ足を運びます。北向きだし、緩く滑れるので、気分転換に訪れるという感じです。野沢温泉からだと1時間半かかりますが、インバウンドも少ないし競争率も低いし、それくらいの時間をかけても来る価値があるんです。
今回びっくりしたのは、滑り出しが早朝だったので、キューピットバレイに前泊したのですが、夜中に到着すると麓は雨だったのに、キューピットバレイだけ雪に変わってるんですよね。予報は雨だったのに。しかも、それでいい雪がちゃんと積もっているんです。一晩で腰くらいまで積もりましたね。
それで撮影が終わって麓に戻ると、雪が積もった形跡がないので、やっぱりキューピットバレイにだけ大量に雪が降ったんです。廣瀬くんも絶賛するだけのことはあるな〜と、あれには本当に驚きました。
スノーボーダー的には急過ぎない斜面だし、地形変化が豊富なので雪に乗っている感覚が楽しいですね。ツリーランの中でもスピードが出過ぎることもないので、安全で安心して滑れます。当て込むところもたくさんあるし、誰が来ても楽しめるんじゃないかなと思います」
蛭間の言う通り、前日の麓は結構な量の雨。しかも撮影当日も安塚地域は雨予報。しかし、撮影部隊が到着すると雨ではなく雪が降っていた。なんなら大量の雪に変わったおかげで、早朝から集合して撮影に臨もうと思っていたにもかかわらず、圧雪車の圧雪が間に合わず、また大量の降雪のおかげで視界不良となり撮影開始が遅れたというのは嬉しい悲鳴。雨でなかったのは喜ばしいものの、まさか大雪になるとは……。誰も予想しなかったシナリオである。