「ただ一人、妻だけが私を“キモイ”と言わなかった」余命宣告された森永卓郎氏が身辺整理で見せた妻への愛

ただ一人、妻だけがキモイとは言わなかった

妻と距離を置こうと思ったのは、もう一つ理由がある。

私がメディアの世界で一番仲良くしている倉田真由美さんのご主人が、2024年2月に膵臓がんで亡くなった。

くらたまさんは情が深いという点が妻とよく似ている。そのくらたまさんが「夫の使っていた座椅子がどうしても捨てられない。思い出があるから」とネットに書いていた。

彼女の思いは痛いほどわかるのだが、そうしているといつまでも独り立ちができなくなる。

そこで私が死んだあと、妻が一日も早く一人で生きていける状況を作っておかないといけないと思ったのだ。それが私の妻に対する身辺整理だと考えたのだ。

だから私は妻に嫌われようと思った。そうすれば、妻はすぐに立ち直れる。

ただ、正直言って、この身辺整理は、まったくうまく行っていない。

これまでの人生で、私はほぼすべての女性から「キモイ」と言われ続けた。

ただ一人、妻だけがキモイとは言わなかった。

そんな唯一の存在を冷淡に扱うことは、なかなかできないというのが、残念ながら、私が抱える限界なのだ。

写真/shutterstock

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身辺整理 死ぬまでにやること

森永卓郎

2024/10/151,650円(税込)208ページISBN: 978-48772333102023年12月、ステージ4すい臓癌で突然の余命4か月告知。 あした死ぬことがわかった私は終活をはじめた。 モノ、時間、お金、死を目前にしたとき、なにを始めたのか。 著者、渾身の一冊。