大相撲の元横綱でNHK大相撲中継の解説の「顔」でもあった北の富士勝昭さんが亡くなった。82歳だった。角界からは追悼の声が相次ぎ、現役時代に叱咤激励をされ続けた二所ノ関親方(元稀勢の里)は「『お前には遊びが足りない。相撲をたっぷり教えてやる』と言われました」と2人でよく食事に行ったことを明かしていた。

 北の富士さんは1998年、相撲協会を55歳で退職。その後、NHKの専属解説者を務め「ご意見番」以上の存在感を発揮したが、最も気にかけていたのが、九重親方時代に故・千代の富士とともに横綱になり理事長まで上りつめた愛弟子・八角親方(元横綱・北勝海)のこと。

「八角親方が理事長に就任してからも相撲協会は不祥事続き。そのため北の富士さんは場所の千秋楽が終わると必ず八角部屋を訪れ、理事長を含め後輩たちにはっぱをかけていました」(古参の相撲担当記者)

 八角理事長にとっては後ろ盾を失ったことになるが、「ポスト北の富士」の一番手は誰か。70歳までの再雇用期間中でありながら67歳で協会を退職した元大関琴風の中山浩一さんが今場所前にNHK専属解説者に就任したことで名乗りをあげた。

「舞の海さんもそうですが、NHKの専属契約は1年ごとに更新される。北の富士さんが亡くなったことで、今後このポジション争いが激化することは間違いありません」(夕刊紙記者)

 角界は日本出身横綱の誕生において四苦八苦が続いている。「北の富士さんも何よりそれを一番気にしていた」(前出の古参記者)というが、大きな柱を失ったことは間違いない。

小田龍司

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