【ドラディション】鈴木が35年越し初シングル制す 長井「やってよかった。でも次はない」

『DRAGON EXPO 1978』後楽園ホール(2024年11月22日)
○鈴木みのるvs長井満也×

 鈴木が35年越しに実現した長井とのシングル初対決に勝利。敗れた長井は「やってよかった。でも次はない」との意向を示した。

 1991年にリングスでデビューした長井はその前に新生UWFに在籍。当時の先輩だった鈴木とはこれまでタッグでの対戦経験はあるが、この日、シングル初対決が実現した。

 慎重な立ち上がりとなったが、長井のチョップと鈴木の逆水平の打ち合いに突入。フロントハイキック合戦に突入し、長井がカウンターの一撃で先手を取ってみせる。鈴木も殴りかかってきた長井をぶら下がり式腕ひしぎ逆十字で捕獲。客席めがけて投げ飛ばし、リング設営用の工具で暴行した。

 長井もヒール殺法はお手の物。「東」の鉄看板に何度も叩きつける。「西」コールのリクエストに応えるように西側客席でエルボー合戦を展開。リングに戻ると鈴木がサッカーボールキックで蹴り飛ばし、アキレス腱固めで絞め上げながら「何がリングスじゃ!」と挑発。長井もアキレス腱固めを極め返し、鈴木をエスケープに追い込んだ。

 鈴木もフロントハイキック、ランニングローキックの連続攻撃で逆襲。顔面を踏みつけて挑発する。意地の長井もキャプチュードで反撃し、魔界ドライバーからストレッチプラムで絞め上げる。ハイパーニー空牙を発射し、腕ひしぎ逆十字固めで絞め上げた。が、逃れた鈴木は時間差ロープワークからのスリーパーで捕獲。耐える長井をゴッチ式パイルドライバーで突き刺して3カウントを奪った。

 試合後、鈴木は拍手で長井を称え、ファンにも歓声をあおる。自ら右手を差し出したが、長井が握手に応じようとすると手を引っ込めた。

 二人が新生UWF時代に出会ってから35年。ようやく実現したシングル初対決だったが、長井はこのカードを藤波から知らされた時に「やった方がいいのか、やらない方がいいのか、ちょっと正直、悩んだ」というが、「自分が引退した時に、あそこでやっとけばよかったなと思うのも嫌だし。俺と鈴木さんがやることでドラディションだったり、会場に身に来てくれてるファンがわくわくしてくれたり、喜んでくれるんだったら、選手としてやった方がいい」と考え、この日を迎えた。

 会場にはオールドファンはもちろん、今現在のプロレスファンも多く集まった。その中で長井は「長いスパン見てくれてる人ものめり込んでみてくれて、なおかつ今の新しいファンの人たちに、過去の予備知識がなくても、プロレスって面白いじゃんっていうふうに思ってもらえる試合がしたかった」といい、「今、試合終わったばっかりで自分でこの試合がどうだったかわからないですね。でも、やってよかったかなとは思ってます」と振り返った長井だが、「でも次はないです。一回しかやらないカードがあってもいいのかなと思う」との考えを示した。

【試合後の鈴木】

――UWFの3文字がよぎった戦いだったが?

▼鈴木「気のせいだろ。化石だぞ、そんなもの。昔々の大昔、川から大きな桃がどんぶらこ流れてきました。それと同じだ。昔の話だ。プロレスは今も生きてる。姿かたちは変わるが、出てるやつはどんどん変わる。主人公が代われば敵も変わる。どんどん変わっていくけど、一つだけ変わらないのはずっと殴り合い、戦いをするってことだ。今も昔も。お前らもいつまでも昔話、何年あおってんだ? 俺が大嫌いなのそこだよ。昔俺こんなことやったことある、昔ベルト獲ったことあるっていう自慢の試合。俺が一番嫌いなのはそれだ。関係ない。たった今の殴り合いが大事だ。それ以外俺にはなんも必要ない。だから俺はヨソで何かベルト持っても、アメリカのベルトを持ってたとしても俺は持ち歩かないようにしてる。俺がそのベルトを見せるのはそこの団体だけって決めてんだ。関係ない。お前ら知らないうちにいろんな世界のベルト持ってるぞ。お前らが知らないだけで、世界と名の付くベルトは山ほどあるからな」

――長井選手との殴り合いは楽しかった?

▼鈴木「そうだね。シングルマッチやるまで、あいつの顔初めて見た時から35年、36年か。それだけ俺の方がさきあるいてるってことだ。かな。もし長井がまた俺と戦いたければ、俺のいるステージはもっともっと先だぞ。日本のみならず、自分たちの誰かの権力の下で用意してもらった舞台じゃない。自分のこのパンツとシューズ一丁でつかみ取ってる場所だ。悔しかったら、そこまで上がってこい」

【試合後の長井】

――鈴木選手とはシングル初対決となったが?

▼長井「初めてですね。僕が覚えてるのが新日本プロレスでたかやま&鈴木組vs長井&柴田組。テイセンホールでやったのが一回と、あとリアルジャパンで10年ぐらい前だと思います。だから鈴木さんと初めて会ってからシングルするまで35年ぐらいかかりましたね」

――1対1で

▼長井「面白かったですね。でもぶっちゃけたこと言っちゃえば、藤波さんから最初このカードと言われて、やった方がいいのか、やらない方がいいのか、ちょっと正直、悩んだんだけど、自分が引退した時に、あそこでやっとけばよかったなと思うのも嫌だし。俺と鈴木さんがやることでドラディションだったり、会場に身に来てくれてるファンがわくわくしてくれたり、喜んでくれるんだったら、選手としてやった方がいいかなという考えがありましたね。それは今の自分じゃわからないですね。どうだったか」

――試合中に鈴木選手の口からリングスの名前が出たが?

▼長井「昔から自分や鈴木さんを見てる人はそういうフィルターで見るだろうし、逆に今の新しいファンからしたら、そんないざこざがあったこと自体知らないだろうし。そういう長いスパン見てくれてる人ものめり込んでみてくれて、なおかつ今の新しいファンの人たちに、過去の予備知識がなくても、プロレスって面白いじゃんっていうふうに思ってもらえる試合がしたかったなと思うんですけどね。ちょっと今、試合終わったばっかりで自分でこの試合がどうだったかわからないですね。でも、やってよかったかなとは思ってます。息上がってるんで、粋なことが今言えない。でもドラディションとしての後楽園ホール、これだけのお客さんが入ってくれたんで、僕としてはやってよかったなと思います。でも次はないです。一回しかやらないカードがあってもいいのかなと思う。また頑張りますので、皆さんよろしくお願いします」