『Z』『ZZ』でアクシズ/ネオ・ジオンを率いた女傑、ハマーン様は、小惑星基地「アクシズ」を地球圏へ移動させての参戦でしたが、なぜこのようなデカブツごとやってきたのでしょうか。



アクシズ/ネオ・ジオンを率いて戦い続けたハマーン。「RAH DX ガンダム・アーカイブス ハマーン・カーン」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【ちょいクセ強め?】こちらジオン再興のために戦ったアクシズ生まれのMSです(6枚)

アクシズを持ってくるしか選択肢はなかった

「ハマーン様」こと「ハマーン・カーン」は、アニメ『機動戦士Zガンダム』の後半で参戦すると、強烈な印象を視聴者に与えました。類まれな指導力とカリスマに加えて事態を俯瞰(ふかん)する洞察力を持ち、反地球連邦組織「エゥーゴ」と「地球連邦軍」の急進派「ティターンズ」の双方を手玉に取っています。そのさまは女傑と呼ぶにふさわしいもので、ファンのあいだでは自然と名前が「様」付けになりました。

 そのハマーン様は、自勢力呼称の由来であり、拠点である小惑星基地「アクシズ」を丸ごと動かして地球圏にやってきます。『機動戦士ガンダム』のラストで「ジオン公国」が敗北したのち、多くのジオン兵はスペースコロニー「サイド3」のジオン本国ではなくアクシズに逃れ、そしてそこがジオン復興を目論む彼ら残党の拠点となっていたのです。

 では、なぜハマーン様たちは故郷であるサイド3に戻らず、アクシズに留まったのでしょう?

 それは、サイド3が負けを認めた「裏切り者」だからです。

『ガンダム』第34話では、TVで戦争を観るだけの人と、前線で戦う人の差が描かれました。戦争の当事者であるサイド3の人びとはあそこまで呑気ではなかったにしても、本土は一切、戦火にまきこまれず、報道管制も敷かれて都合のよい情報しか入ってこなかったはずで、両者の温度差は相当大きなものになっていたのではないでしょうか。

 そして戦後、サイド3とアクシズの人びとは「お前らアクシズが抵抗するから平和にならないし、サイド3が白眼視される」「独立戦争を止めて日和った裏切り者」と、互いを罵っていたとしても不思議ではないのです。

 アクシズを結束させる上でサイド3という裏切り者は役立ったでしょうし、サイド3でもアクシズが不満のはけ口にされただろうことは、想像に難くありません。

 そして、ハマーン様の蜂起にサイド3が呼応した……などという話もありません。

 ではなぜ、ハマーン様が地球圏にやってくる際、わざわざアクシズを動かしたのでしょうか。理由は、3つあると考えられます。

 ひとつはアクシズの位置で、火星と木星のあいだでは地球圏と戦うのに遠過ぎます。

 もうひとつは環境の厳しさです。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』第9話でハマーン様は「寒い……ここにあと何年……」とつぶやいており、暮らしのつらさがうかがえます。

 そして最後は「誰も信じられなかったこと」ではないでしょうか。

 祖国であるサイド3は自分たちを裏切り、愛する「シャア・アズナブル」も自分の元を去ってエゥーゴに参加しました。そのようななかですから、アクシズを誰かに委ねることも、誰かに艦隊を預けて送り出すこともできず、アクシズを引っ張ってくるしかなかったのでしょう。

 地球圏に戻ってからのアクシズの暮らしは、『機動戦士ガンダムZZ』第18話を観るに、だいぶ良くなったようです。ビル街には果物が豊富に並ぶ市場があり、「エルピー・プル」はパフェを食べていて、「寒い……ここにあと何年……」とつぶやいてしまうような環境には見えません。

 この豊かさが地球圏帰還でもたらされたのなら、やがてアクシズの民心はバラバラになり、徹底抗戦派の勢いも弱くなっていったのかもしれません。