結婚、出産、育児とライフステージが変わっても働き続けることを選択する女性が増えています。近年では女性の社会進出が促進され、働き方も多様化している現状です。
その一方で女性に特有のライフイベントによって、さまざまな悩みが生じています。今回は、働く女性の現状と悩み、悩み別の解決策をご紹介しましょう。
働く女性の現状
厚生労働省が発表した「令和2年版 働く女性の実情」では、労働力人口総数に占める女性の割合は 44.3%。社会で働く人の半数近くが女性であるというデータです。一方、男女共同参画局が発表した「令和3年版 男女共同参画白書」によると、出産によって約5割の女性が離職を経験しています。
女性の社会進出が推進される半面、多くの女性がライフイベントやライフステージにあわせた働き方の見直しを迫られているといえるでしょう。そのなかで仕事はもちろん、家庭や自分自身についての悩みを抱える女性が多くいます。
働く女性によくある5つの悩み
働く女性に多い悩みは仕事、健康、子育て、美容、食事などがあげられます。悩み別に詳しくみていきましょう。
①仕事の悩み
仕事の悩みは、男女を問わず社会人に多い悩みのひとつ。その内容は給与やキャリア、仕事内容、職場環境についてなどさまざまです。仕事内容や職場環境についての悩みは多くの人が抱え、年代によっては退職理由のトップにもあげられます。給与やキャリアアップについての男女差は近年問題視され、是正されてきました。
しかし業界や職種によって対応が異なる現状があり、女性管理職はまだまだ少ないことが問題視されています。
女性は男性と違い、結婚や出産、育児などのライフイベントによる悩みも生じます。結婚にあたってこれまでの働き方が変化したり、パートナーにあわせて引っ越ししたりすると、それまで積み上げてきたキャリアの見直しをしなければなりません。また出産にあたって産休や育休を取得すれば、描いていたキャリアプランに遅れや変化が生じるでしょう。
仕事に悩む女性の多くは現在の職場や業務内容についてばかりでなく、家庭や将来の悩みもあわせもっていることが多くあります。
②健康の悩み
社会人が抱える健康の悩みといえば、疲れやすい・肩こりがひどいといった慢性的な疲労や、普段の生活態度が影響する生活習慣病。日々の忙しさから健康管理がおろそかになり、生活や仕事に影響が出るケースです。さらに精神的ストレスから思い悩むメンタルヘルス不調も、健康の悩みといえるでしょう。
女性には、男性にない病気のリスクもあります。たとえば以下のような病気は女性に特有の病気です。
月経前症候群(PMS)
月経不順
子宮内膜症
子宮筋腫
子宮頸がん
不妊
貧血
女性は年齢によってかかりやすい病気が異なります。これは女性に特有の病気がホルモンの影響を大きく受けるためです。女性ホルモンの分泌量が増える20〜30代は、特に病気のリスクが高まります。また結婚や出産、育児を経験する年齢でもあるため、ライフイベントに関わった悩みも増えるでしょう。
③子育ての悩み
男女共同参画局が発表した「令和3年版 男女共同参画白書」によると、第1子出産前後に離職する女性は約5割。これまでは6割前後の女性が出産を機に離職していたので、就業継続率は増加傾向にあります。
近年には女性の社会進出が推進され共働き世帯が増えてきましたが、ライフイベントによる働き方の見直しを迫られる女性は依然として多い現状です。仕事と子育ての両立は、女性の大きな悩みといえるでしょう。
④美容の悩み
年齢によって変化する美容の悩み。ライフスタイルに関わらず、多くの女性が美容や健康を意識しています。特に働く女性は仕事の忙しさからゆっくりと美容に向き合えず、悩みを抱えながら対処できずにいる人も多いでしょう。
20代はニキビやニキビ跡、毛穴の黒ずみといった肌トラブルが多い傾向です。20代後半から30代はホルモンバランスの変化やストレスによって小じわや体形の変化が気になりだします。妊娠・出産を経験してライフステージや体質が変わることで、これまでのケアでは対応できず悩みを抱えることも多くあるでしょう。
40代からは肌のくすみやシミ、しわが増え、ほうれい線や頬のたるみが目立つようになります。40代後半ごろから生じるのがほてりや発汗、のぼせなどに代表される更年期に特有の悩みです。このように女性は年齢によってさまざまな美容の悩みを抱えています。
⑤食事の悩み
忙しい社会人が抱える食事の悩み。「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、食生活を意識しながらも、仕事や家事、育児などによって食生活を改善する時間がないという回答が多くあります。
食生活の乱れは本人の健康を損なうばかりでなく、企業にとってもマイナスです。栄養がきちんととれていなかったり食べ過ぎ・食べなさ過ぎを繰り返したりすると、免疫機能が低下し、風邪や体調不良につながります。風邪や体調不良の状態では、仕事で最大限のパフォーマンスを発揮できないでしょう。
働く女性に特に多くみられるのが新型栄養失調。摂取カロリーが不足したりたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素が不足している状態です。体形を気にしすぎたり誤った健康・美容法を実践したりすることが原因として考えられます。
家事のひとつとして、食事づくりを負担に感じる女性もいます。パートナーとの家事分担が増えてきたとはいえ、多くの女性が家事を担当しているのが現状です。なかでも買い物や献立を考えるのにかける時間と労力、栄養バランスへの配慮など、食事づくりは負担が大きい家事といえます。暮らしの負担として、食事に悩みを抱える女性も多いようです。
悩み別におすすめの解決策5つ
働く女性に多い仕事、健康、子育て、美容、食事の悩み。それぞれの解決策をご紹介します。
①ストレスと向き合い、キャリアプランを立てる
仕事についての悩みを解決するためには、ストレス対象を明らかにして対処したり生涯を通したキャリアプランをたてたりすることが大切です。給与やキャリア、仕事内容、職場環境についてなど、仕事の悩みは男女を問いません。仕事に悩みはつきものですが、悩みを放置してストレスを抱えた状態が続くとメンタルヘルス不調に陥る危険性もあります。
悩んでいると感じたら、どのようなことで悩んでいるのか、何がストレスの原因になるかなどを明らかにして、対処することが重要です。周囲の人や専門家に相談したり、しっかりと休養をとったりしましょう。ときには部署異動や転勤を願い出る、転職を考えることも必要です。
ライフイベントによって変化する女性の働き方には、直近の目標ではなく将来的に達成したいことを意識して、長期的なキャリアプランを組み立てるとよいでしょう。結婚や出産、育児のタイミングは本人の意思ばかりでは決められません。また状況はそのたびに変わってきます。変化するライフスタイルのなかでも自分が大切にすることを明確にして、実現できるキャリアプランを練ることが大切です。
②ホルモンバランスを整える
慢性的な疲労や生活習慣病は、普段の生活態度が大きく影響します。健康管理をおろそかにせず、自身の体調に気を配りましょう。十分な睡眠と適度な運動、正しい食生活が重要です。またメンタルヘルス不調も健康な生活に大きく影響します。適度にストレスを発散したりストレス源から距離を置いたりして、精神的な健康にも気を配りましょう。
女性に特有の健康課題には、ホルモンバランスを整えることが重要です。女性は年齢によってかかりやすい病気が異なりますが、ホルモンバランスの変化に気を配り適切に対処することでリスクが軽減されます。定期的に婦人科へ通って健診を受けたりヘルスチェックを行ったりして、体調の変化に気づけるようにしましょう。
またホルモンバランスの乱れには、ストレスや無理なダイエット、睡眠不足も影響します。生活習慣を見直して、ホルモンバランスを整えましょう。
③頼れるものを頼って子育てと仕事を両立
子育てと仕事の両立に悩んでいるなら、家事にかかる負担を見直すとよいでしょう。仕事との両立ができるようパートナーや家族の理解を得て、協力をあおぐことが大切です。また近年ではネットスーパーや家事代行サービス、便利家電などの便利な機能・サービスが発達しています。仕事と子育ての両立を支援した国や職場の支援策もあるので、頼れるものを頼って時間を有効に活用してください。
便利なサービスを利用することに罪悪感があるという人もいるかもしれません。しかし働く女性が子育てしながら自分らしく暮らすためには、便利なサービスを利用することも立派な手段のひとつです。完璧を求めすぎず、負担に感じることは周囲の助けを得ながら、自分らしく暮らせるよう心がけましょう。
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④自分の肌質や悩みにあわせて対処する
年齢によって変化する女性の美容の悩みには、自分にあったスキンケア方法を見つけることが大切です。ネットやテレビで話題の美容法も、個人の体質やライフスタイルによって効果がないこともあります。個人差を理解して、自分なりのスキンケアを見つけましょう。
毛穴の黒ずみやシミ、しわなどピンポイントで悩みがある場合は、悩みに対応する化粧品を使ってみるのも効果的です。また十分な睡眠や適度な運動、バランスのとれた食事は美容・健康の基本。美容の悩み解消には、生活リズムを整えることが重要です。
⑤栄養バランスに気を付けて、外食や総菜も利用する
食事に悩む大きな原因は、忙しさから食事にかける時間がないこと。問題は栄養がきちんととれていなかったり食べ過ぎ・食べなさ過ぎを繰り返したりすることですが、外食や総菜を活用しても解決できます。
たとえば、好きなものや健康によいとされるものであっても、同じ食べ物ばかりを食べないようにします。また外食はビタミン・ミネラルが不足しがちなので、フルーツを意識的に取り入れるとよいでしょう。ときには青汁や野菜スムージー、サプリメントなどを補助的に活用するのもおすすめです。手軽に摂取できるので、野菜が不足していたり体がだるいと感じたりしたときには試してみてください。
家事のひとつとして食事の悩みを抱えている場合でも、外食や総菜の活用は有効です。また調理の際は簡単食材を組み合わせて調理負担を軽減したり、食材宅配サービスを利用して献立を考える手間を減らしましょう。食材を検索するだけでレシピや献立がヒットするアプリやサイトもあります。便利なサービスを利用して、食事づくりの負担を見直してみてください。
女性が働きやすい職場づくり
健康経営の観点では女性の健康保持・増進に向けた取り組みも注目されています。女性の健康課題を解決するべく取り組むことで、健康経営の推進につながるでしょう。
健康経営とは
従業員の健康が企業の生産性を向上させるという観点から、企業が従業員の健康管理を戦略的に実践する健康経営。健康診断や健康相談の機会を設ける健康促進はもちろん、ワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方改革やスキルアップ研修による精神的健康のサポートなど、取り組み方はさまざまです。
経済産業省では健康経営を積極的に推進する企業に健康経営優良法人としての認定を行なっています。認定のためにはいくつかの要件を実践する必要があり、そのなかに「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」も含まれています。働く女性をサポートしてくれる企業の目安になるので、就職や転職活動の際にはチェックしてみるとよいでしょう。
健康経営と女性の健康課題
女性の健康課題を解決するためには、身体的な健康の促進はもちろん、妊娠や出産、育児などのライフイベントを経験しても働き続け、能力を発揮できる環境整備が求められます。たとえばワーク・ライフ・バランスへの配慮や産休・育休の積極的な取得、 短時間勤務やフレックスタイム制の導入などは家庭と仕事の両立のためにも有効です。
女性が働きやすい環境を整備することで、長期的な人材の確保や経験豊富な人材による生産性の向上といったメリットがあります。また長く働きつづけることでキャリアアップや管理職登用も期待できるでしょう。少子高齢化によって人手不足が問題視されるなか、女性の活躍の場はますます広がっています。女性一人ひとりが自分らしい働き方を実現するためにも、健康経営の理念に基づいた健康支援が重要です。
悩みと向き合って、より良いキャリアライフを築こう
働く女性の現状と悩み、悩み別の解決策をご紹介しました。ライフイベントやライフスタイルの変化にあわせて生じる女性に特有の悩み。近年では女性の社会進出が促進されて、働き方も多様化しています。妊娠や出産、子育ては女性に特有のライフイベントですが、時期や対応は本人の意思ばかりでは決められません。
また状況もそのたびに変わってきます。変化するライフスタイルのなかでも悩みに対処して自分らしい生活を送るためには、大切にすることを明確にして、実現したいキャリアライフを練ることが大切です。働く女性の悩みは尽きませんが今回ご紹介した解決策を参考に、よりよいキャリアライフを築いてください。