女性はライフイベントによってキャリアプランの見直しを迫られる機会が多くあります。出産や育児、子どもの自立はもちろん、結婚も女性の人生において暮らしを変化させる大きなライフイベントです。
結婚を機に転職を考えた場合、結婚前と結婚後ではどちらのほうが最適なタイミングといえるでしょう?今回は結婚前後の転職について、メリットやデメリット、転職活動のコツをご紹介します。
働く女性の現状
厚生労働省が発表した「令和3年 雇用動向調査」によると、結婚を機に転職する女性は2.2%。これに対して男性は0.5%という結果なので、女性にとって結婚は転職を考えるきっかけになっているといえます。年齢別で特にこの傾向が強いのが、25歳から29歳までの女性です。この世代の転職理由は結婚が10%と、他の世代と比較しても特に多い結果になっています。
近年では晩婚化が進み、多くの女性が20代後半で初婚を経験することからも、女性の転職と結婚には関係性があるといえるでしょう。女性は出産や育児などライフイベントにあわせた働き方の選択が求められますが、結婚もキャリアライフに関わる大きなライフイベントといえます。
結婚を考える女性が転職する理由
結婚を考える女性が転職する理由は、ライフスタイルの変化です。たとえば結婚後は家事と仕事の両立のため、残業の少ない仕事や毎月決まった休みを希望する声があります。また子どもができれば短時間勤務の希望や残業・休日出勤を望まない傾向が特に強くなるでしょう。
結婚に際して夫の扶養に入り、勤務量を調整することもあります。パートナーの扶養に入れば税金が控除されるため、結婚前の働き方や雇用形態を見直すケースです。
また結婚を機に引っ越しをする人も多くいます。パートナーの勤務地や転勤の都合にあわせて引っ越す場合、現在の職場を離れる選択を迫られる女性も多いようです。近年ではリモートワークが可能な職業も増え、職場に出勤せずに仕事をする働き方もあります。
しかし依然として完全在宅勤務に対応する企業は少なく、結婚を機に転職を考える女性が多いのが現状です。
メリット・デメリットで比べる結婚前or結婚後の転職
結婚前と結婚後の転職にはそれぞれメリット、デメリットがあります。ポイントをご紹介しましょう。
結婚前に転職するメリット
結婚前に転職すれば、仕事の残業時間や繁忙期、休日、給料などを把握してから結婚生活に入れるため、生活をイメージしやすいメリットがあります。結婚すると生活が大きく変わりますが、仕事に慣れて安定していれば、気持ちも楽に結婚生活を迎えられるでしょう。
結婚後すぐに妊娠を考えている場合は、結婚前の転職がおすすめです。産休に取得条件はなく働く女性なら誰しもが取得が可能ですが、新しい職場に移ってすぐは言い出しづらいという人もいるでしょう。また育休の取得条件は会社によって異なるため、労使協定を結んだ場合は入社1年以内の育休を適用外とする企業もあります。
仕事を軸にライフスタイルを組み立てたい人は、結婚前の転職がおすすめです。結婚後すぐの転職は産休や育休、引っ越しの可能性があるため、転職活動で不利に働く傾向があります。選べる企業や職種の幅を広げ、未経験から挑戦できる求人の選択肢を増やすなら、転職活動は結婚前に済ませておくとよいでしょう。
結婚後に転職するメリット
結婚後に転職すれば、結婚生活にあわせた企業を選べます。結婚前の生活とはライフスタイルが異なる場合もあるので、収入や勤務時間、休日などをパートナーと相談したうえで転職活動に臨むことが大切です。また結婚後の新しい生活に慣れてから転職することで、生活と仕事のミスマッチを減らせるでしょう。
結婚後は名字や名義が変わって、多くの手続きが必要です。結婚後の転職なら、社内で必要な手続きを転職と同時に済ませられます。結婚生活を軸にライフスタイルを組み立てたい人は、結婚後の転職がおすすめです。
結婚前に転職するデメリット
結婚前に転職するなら、結婚後に生活と仕事のミスマッチが生じる可能性があるので注意が必要です。たとえば結婚後は残業や休日出勤をなくして家事やパートナーとの時間を大切にしたいという希望や、パートナーの扶養に入るため勤務時間を調整したい、パートナーと一緒に住むために引っ越しが必要など、ライフスタイルの変化が生じることがあるでしょう。予想していた結婚生活と現実の暮らしに違いがあった場合、会社にかけあったり再度転職活動をする手間が発生します。
転職直後の仕事に慣れていない時期に結婚準備が重なると、精神的にも身体的にも大きな負担となります。スケジュールを見直して、不自由のない転職・結婚計画を練る必要があるでしょう。
結婚後に転職するデメリット
結婚後に転職する場合、転職活動が難航する可能性があるので注意しましょう。結婚後の女性には産休や育休、パートナーの都合による引っ越しの可能性があるためです。企業が採用の意義を見出しにくいというデメリットがあります。また産休に取得条件はありませんが、育休は会社によって取得条件が異なります。労使協定を結んだ場合、入社1年以内の育休を適用外とする企業もあるので注意が必要です。
ただし既婚者は結婚による退職のリスクがない人材です。出産を考えている場合も、長く働く意志をあることを伝えると有利に働くかもしれません。出産や育児のサポートを得やすくなるのでおすすめです。
転職のベストなタイミングは結婚前
転職のタイミングは結婚前がよいでしょう。求職者は結婚後のライフスタイルを想定したうえで幅広い選択肢から転職先を選ぶことができます。結婚後の女性は転職活動で不利な場合がありますが、結婚前なら未経験の職業にもチャレンジできるでしょう。転職後は残業時間や繁忙期、休日、給料などを把握できるので、結婚生活をイメージしやすいメリットがあります。
出産を考えている場合は、結婚前に転職して職場と信頼関係を築いておくことで、気兼ねなく産休・育休制度を利用できます。育休制度は会社によって取得条件が異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
企業にとっても、結婚後の女性より結婚前の女性のほうが採用の意義を見出しやすいメリットがあります。産休・育休の取得を前提に、妊娠までの期間は自社に貢献してくれると考えるでしょう。それまでに仕事能力や人柄を判断して最適な配置を検討できます。転職活動では結婚後より結婚前のほうが有利です。
転職先を選ぶコツ
転職活動では、パートナーとよく相談することが大切です。これから暮らしを共にしていくパートナーとお互いの価値観やライフスタイルをすり合わせて、ミスマッチのないよう調整します。たとえば家事の分担や休日の過ごし方、転勤があるかどうかでもお互いの暮らし方に大きく影響するでしょう。
パートナーと相談したうえで、転職先に求める条件を整理します。出産を考える女性は産休や育休、時短勤務制度などの整備と取得実績を確認しておくとよいでしょう。残業時間や休日出勤、転勤があるかを確認することも大切です。また家族手当や扶養手当の充実度も、家族との生活に大きく関わってきます。自身のキャリアプランを見直して、ライフスタイルにあわせた転職先を見つけてください。
転職時に確認したいポイント
結婚前後の転職活動では、以下のことをまとめておくとよいでしょう。
転職活動にかける期間
現在の職場で業務の引き継ぎにかかる期間
転職先の勤務時間や勤務内容の希望
結婚後の社会保険料・税金・年金の支払いについて
結婚後の居住地
結婚後の世帯年収と必要経費
結婚後の暮らし方の希望
転職活動は1〜3か月ほどかかるのが一般的です。また引き継ぎには、業務内容にもよりますが1か月程度をみておきましょう。転職前にかかる時間がわかれば、逆算して結婚準備を進められます。
結婚後の暮らしについては、パートナーとよく相談してください。転職後に結婚生活と仕事のミスマッチがわかると、せっかく時間と労力をかけて行った転職活動が無駄になってしまいます。居住地や暮らし方のイメージから、必要経費や保険料・税金・年金といった金銭的な部分までしっかりと話しあって、結婚後の暮らしの見通しを立てることが重要です。
今後人生をともにするパートナーなので、支えあって暮らしていけるようお互いの希望や理想をしっかりと出しあいましょう。
転職活動を成功させるための注意点
転職活動を成功させるためには、面接の際に伝えるべきポイントがあります。以下の点に注意して面接に挑みましょう。
転職の条件を明確にしておく
ライフスタイルの変化や転居などは正直に伝える
「出産の予定は?」ときかれた場合の答えを準備しておく
長く働きたいという意欲を示す
まず自身が転職で叶えたい条件を明確にしておきましょう。これは結婚前後に限らず、転職活動を行ううえで重要なポイントです。年収や休日、福利厚生、勤務地などでも選択肢が変わってきます。加えて、結婚後の暮らしをイメージして希望条件を整理することが大切です。
結婚によってライフスタイルの変化や転居の可能性があることを正直に伝えます。あらかじめ伝えておくことで、採用後のサポートを得やすくなるでしょう。さらに結婚前後の女性がきかれやすいのが出産予定の有無です。伝えるべきことをしっかり伝えて、長く働きたい意志もあわせて示しましょう。
転職活動が難航したら、転職エージェントに相談するのも一手です。転職エージェントでは、選考の対策や履歴書の添削を行うだけでなく、女性にとって働きやすい企業の情報も提供しています。転職のプロの視点を借りて転職先を選ぶと安心です。
働き方に配慮した健康経営企業
従業員が健康に生き生きと働くことで、経営面に成果を期待する健康経営。健康診断の実施や健康相談といった健康促進事業はもちろん、ワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方改革やスキルアップ研修を行なって精神的な健康を図るなど、取り組み方はさまざまです。
働く女性に焦点を当てて、健康経営に取り組む企業もあります。女性の社会進出が促進され、共働き世帯が増加傾向にある近年。企業にとって女性は重大な戦力です。ワーク・ライフ・バランスへの配慮や産休・育休制度の推奨、 短時間勤務やフレックスタイム制の導入などで家庭と仕事の両立を推進しています。健康経営に取り組み一定の基準をクリアしている企業は、経済産業省が健康経営優良法人として認定しています。転職活動の際にはチェックしてみるとよいでしょう。
ライフイベントからキャリアを見直して、より良い転職を実現しよう
結婚前後の転職について、メリットやデメリット、注意したいポイント、転職活動のコツなどをご紹介しました。結婚前と結婚後では転職にもそれぞれメリットやデメリットがありますが、何よりも自身のライフスタイルやキャリアプランにあった選択をすることが大切です。
おすすめの転職時期は結婚前ですが、その結果は将来的に結婚後の生活へ大きな影響を与えます。転職を考えた際には、まずパートナーとよく相談しましょう。結婚前後の生活リズムや利用できる制度を考えて、理想のライフスタイル・キャリアプランを築いてください。
関連コラム
転職や今後のキャリアが不安!30代女性の仕事で抱える悩みについてご紹介
あなたの働き方タイプは?多様化する女性の働き方問題について考える
女性は何歳まで働くのが理想?既婚・独身女性の平均的な退職年齢は?