古今東西の人気ロボットが集合したゲーム「スパロボ」には、しかし、登場していても不思議ではないほどの知名度を持った作品でも、いまだに参戦していないこともあります。その理由とはなんでしょうか。



『銀河漂流バイファム』より。実はスパロボ未参戦って知ってた? 「ROBOT魂〈SIDE RV〉バイファム(サンライズ スピリッツ)」(BANDAI SPIRITS) (C)サンライズ

【あっ…(何かを見た)】こちらスパロボ参戦が待たれる「未参戦作品のロボ」です!(4枚)

『エヴァンゲリオン』もスパロボ参戦に反対意見が

 人気ゲームシリーズのひとつである「スーパーロボット大戦」シリーズ、通称「スパロボ」は、古今東西のスーパーロボットたちが共演するゲームで、最初の作品の発売から33年経過した、いまや定番のコンテンツです。

 しかし、いまだにスパロボに参戦(作品として参加すること)していないロボットアニメ作品があります。それには、それぞれの事情があるといわれてきました。その理由について触れる前に、これまでのスパロボ参戦作品の歴史を振り返ってみましょう。

 もともとスパロボは「機動戦士ガンダム」シリーズ、「マジンガーZ」シリーズ、「ゲッターロボ」シリーズの3作品、いわゆる御三家が中心になって始まりました。これを基準にして独自の世界観を構築、それに合わせて各スーパーロボット作品が参戦していったわけです。

 しかしそのなかには、スパロボ参戦がファンのあいだで物議を醸した作品もありました。その最初となったのが、いまやスパロボの常連である『新世紀エヴァンゲリオン』です。

 同作品は、こんにちではロボットアニメであるという意見が大多数でしょうが、TVアニメ放送直後に参戦した際には疑問視する声も少なくありませんでした。「エヴァンゲリオン」は人造人間であって、ロボットではないという人もいたからです。

 このほかにも、『機動戦艦ナデシコ』は主力兵器としてロボットである「エステバリス」が登場するものの、「タイトルがロボットではない」ことなどを理由に拒否反応を示すファンもいました。いまでは無理やりな理屈と思う人もいることでしょう。しかし、ファンの考える参戦のルールというものは、それだけ個々に違っていました。

 やがて、ロボットは出るものの変身ヒーローものである『宇宙の騎士テッカマンブレード』、スポーツが主体で本来は戦闘をしない『疾風!アイアンリーガー』、ロボットの登場が頻繁ではない『ケロロ軍曹』、ロボットが登場せず、戦艦同士の戦闘がメインの『宇宙戦艦ヤマト2199』といった作品の参戦が、徐々に参戦のハードルを下げていきました。

 いまではスマホゲームという、常に変化を求められるジャンルの普及により、さらに自由度が増しています。特撮作品である『恐竜戦隊ジュウレンジャー』、劇中劇からの参戦であった『クレヨンしんちゃん』など、その自由度は当初とは比べ物にならないくらいにまで広がったといえるでしょう。

 つまり、こういったファンから物議を醸す作品の参戦が、確実にスパロボの参戦ハードルを低くして、参戦の間口を徐々に広げてきたのでした。しかし、本来なら参戦してもおかしくない作品がいくつか未参戦のままです。それはなぜでしょうか。



2021年に発売された30周年記念の現行最新作『スーパーロボット大戦30』(バンダイナムコエンターテインメント)

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参戦のハードルを上げている大人の事情とは…

 放送当時の人気も高く、アニメ雑誌の表紙を何度も飾り、いまでも登場するロボットの立体物が発売されている……それほどの作品でありながら、いまだにスパロボに参戦していないのが『銀河漂流バイファム』です。OVAは4作がリリースされ、本編放送から15年後にTVで外伝アニメ作品が放送されたこともありました。

『バイファム』が参戦しない理由、それはストーリーを思い出すとよく分かるかもしれません。戦争で星を追われた13人の子供たちが、異星人の捕虜となった家族を救出するため宇宙での旅を続けるというものです。

 この13人の子供たちは、周囲の大人がすべていなくなったことで武器を持ちました。この作品のテーマといえるのが、そうした「大人のいない空間」です。この重要なポイントは、ほかの作品とからむことで瓦解することでしょう。つまり仮にスパロボで他作品と合流すれば、子供たちは保護される対象となり戦う理由を失うわけです。

 これが『バイファム』の、スパロボ参戦を遠ざけている理由でしょうか。スパロボのプロデューサーであった寺田貴信さんも、この意見とほぼ同じコメントを過去に残していました。つまり『バイファム』をスパロボ参戦させるなら、相応の舞台が必要ということでしょう。

 たとえば人気も知名度も高かった『戦闘メカ ザブングル』も、荒廃した地球が舞台だったことで長らく参戦できませんでした。それを未来の地球や、別次元の地球という形で参戦を果たします。つまり『バイファム』も、参戦するためには世界観の構築が必要なのでしょう。

『機甲艦隊ダイラガーXV』もいまだに参戦していない作品のひとつです。ロボットアニメのなかで、ややマイナーな作品という点も参戦していない理由かもしれません。ファンからは、15体合体でパイロットも15人も搭乗しているため、使用できる「精神コマンド」が多くなりすぎるから、ともいわれていました。

 上記の理由もあるでしょうが、それ以上に深刻なのが版権問題です。『ダイラガー』は過去に『百獣王ゴライオン』と共に『ボルトロン』というタイトルへ改題し、海外で放送されて人気を博したことがありました。

 これがきっかけで現在『ダイラガー』の版権は、『ボルトロン』として譲渡されて海外にあります。このことが参戦を難しくしているのでしょう。ちなみに『ゴライオン』はタイミングに恵まれ、スパロボ参戦を果たしています。

 まったく事情が分からない作品といわれるのが『惑星ロボ ダンガードA』でしょうか。それゆえにさまざまなうわさも流れていますが、どれも信ぴょう性に欠けるものでした。当時の作品人気も高かったので、いまだに根強いファンも多い作品です。

 このほかにも『マグネロボ ガ・キーン』や『超人戦隊バラタック』といった1970年代の人気作品、1990年代の人気シリーズである「勇者シリーズ」も半数がいまだに参加していません。

 多くの未参戦作品は人気面や知名度から見送られていますが、そのなかにも別な理由がある作品もあります。スパロボファンのなかには、それぞれに参戦してほしい作品がある人もいることでしょう。いまだにスパロボに参戦しない理由を考えてみると、意外な事実を知ることになるかもしれません。