ハースF1代表の小松礼雄は、ザウバー/アウディが拠点を置くスイスの平均賃金の高さから予算上限の補正が検討されている事に対し、反対の姿勢を明確にした。
F1には2021年から財務規則(ファイナンシャル・レギュレーション)が導入され、各チームの年間予算に上限が儲けられている。そうした状況の中、平均賃金が高いスイスに拠点を置くザウバーは、イギリスやイタリアといった他の国をベースに活動するチームと比較した際に、労働力という面で不利な立場に置かれることになる。同じ金額で雇える人数が、少なくなってしまう可能性があるからだ。
こうした事情からFIAは、OECD(経済協力開発機構)のスイスの賃金データと生活コストに対応するため、2026年の予算上限の修正案を提出した。
その修正案は最終的に決定されていないが、ハースの小松代表はザウバー以外の9チームがこれに反対していると明らかにしており、FIAが一面的な考え方をしていると指摘した。
「スイスに拠点を置いているチームにどうして控除があるのでしょうか? 誰もがチームを設立する場所を選んでいるんです。ロンドンやオックスフォード、イングランド北部でも金額は様々です」
小松代表はそう語る。
「では、どこで線引をするのでしょうか? そういったことを考慮すると、社会保障やその他様々なことを全て考えていく必要があります。スイスに住んでいる人にしても、理由は様々ですよね?」
「以前、ザウバーから人を雇おうとしたことがあったのを覚えていますが、その人はチームを愛していましたし、(スイスの)山々を愛していました。ですからイギリスには来たがらなかったんです。つまり、そういうこと全てが関係してくるんです」
「ある一面だけを見て『ここは高い』と言うのはとても危険なことだと思います。ビールか何かの値段を見て、そして『よし、ここは非常に高価だから、控除を与えよう』と言う事ができてしまうんです」
小松代表は、イギリス国内でも地域によって生活費や平均賃金が異なっていることを指摘しており、さらにイタリアにおける経済状況の違いなども挙げた。そしてFIAが財務規則に修正を加えることは、さらなる問題の引き金になりかねないと警告。シンプルに保つようにFIAへ促した。
「F1委員会の会合では、面白いことにザウバーを除いた全チームが反対しています。なぜFIAがこの件を全面的にプッシュしているのか、私には分かりません」
「イタリアの人達はどうなんだと言わざるを得ませんよ。フェラーリが拠点を置いていて、RBも施設を置いています。そして我々も半分はイタリア、もう半分はイギリスに施設があります。どこで止めにするんでしょう?」
「イタリアについて言えば、最初の4年間は大きな税制の優遇があります。これは競争のためのものです。ロイック・セラが、メルセデスからフェラーリへと移籍したのはその一例です」
「彼を引き合いに出したい訳ではありませんが、シニアエンジニアがイギリスからイタリアへと移る場合、イタリアでは経済的に大きなメリットがあります。ではそれも補っているのかといえば、そうではありません」
「あらゆる側面を検討していなければ、完全に公平にすることはとても、とても難しいです。それができるのか? 私は難しいと思っています」
「FIAのことを過度に批判したいわけではありません。ですが他のルール……例えば予選における安全な時間の確保やトラックリミット等の扱いなどスポーティングルールもそうです」
「特定の詳細を定義して規制しようとすると、あらゆるシナリオをカバーしなくてはなりません。ですが、詳細に踏み入れるにつれ、それらをカバーするのは難しくなってしまい、別の問題を生じさせてしまいます」
「つまり、彼らが『スイスは例外』と言ったら、次はどうなるでしょうということです。先ほども言った予選での件もそうですが、アウトラップなどで、ある問題を解決しようとして、別の問題を生み出してしまっています。だから私は、シンプルなままにしておくほうがずっといいと思っています」
なおザウバーは今季大苦戦しており、全10チーム中唯一無得点。しかし2026年からはF1に新規参戦するアウディのワークスチームになることが決まっている。