世界的人気マンガ『ONE PIECE(ワンピース)』の「扉絵」は、短期の連載や本編に関わる重要な伏線が描かれることもある、見逃せないコーナーです。尾田先生はこの扉絵を利用して、他のジャンプ作品が連載終了する際に、さりげなく漫画家たちへ熱いメッセージを残しています。



堀越先生にとって思い出深いスモーカーが描かれた『ONE PIECE Log Collection “LABORATORY”』(エイベックス・ピクチャーズ) (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

【画像】「とんでもない事が起きています」こちらが『ワンピ』77巻のSBSを見た堀越先生の反応です

細かい部分まで仕込まれたメッセージが天才的

 人気マンガ『ONE PIECE(ワンピース)』の「扉絵」は、短期集中の連載や伏線が潜んだイラストなどが掲載されることもあり、読者の楽しみのひとつです。なかには作者の尾田栄一郎先生が「週刊少年ジャンプ」(集英社)の他作品が終わる際、漫画家へのメッセージを込めた粋な扉絵もあり、たびたびファンをうならせています。

 記憶に新しいのが、『僕のヒーローアカデミア』(作:堀越耕平)の最終話へ向けた1122話「イザッテトキ」の扉絵です。尾田先生は、「22年前に愛知県の少年が描いてくれたスモーカーの絵をマネしてみて」というお題で、堀越先生が高校時代に描いたスモーカーを再現しました。このイラストは、コミックス23巻の「ウソップギャラリー海賊団」に掲載されていたものを、尾田先生がまねたものです。

 堀越先生は、イラストが採用されたお礼を尾田先生に直接言うことが長年の目標で、2015年のジャンプの新年会で達成できたそうです。この顛末は77巻の質問コーナー「SBS」で紹介されています。堀越先生は当時の歓喜の気持ちを、X(旧:Twitter)にも投稿していました。

 このような背景もあり、尾田先生が描いたスモーカーの扉絵には特別な感動があります。堀越先生のイラストで「ONE PIECE」と描かれていた部分が「HERO ACA…」に変更され、「23UGK(23巻ウソップギャラリー海賊団)」という文字が刻まれるなど、細かなアレンジが加えられています。これには読者からも「胸アツすぎ! ジャンプ買ってくる」「最高のファンサービス」など、感動の声が多く見られました。

 過去作品では、『NARUTO-ナルト-』(作:岸本斉史)最終話への、766話「スマイル」の扉絵に、作品を意識した粋なイラストが描かれています。この話では「ONE PIECE」のロゴがアレンジされ、「木ノ葉隠れの里」のマークが入ったチャイナドレス姿の「ナミ」が登場しました。その背後では、「うずまきナルト」と思しき人物が骨付き肉を食べ、向かいには「モンキー・D・ルフィ」が一楽のラーメンを食べています。

 さらに、背景のメニューの頭文字には「ナルトおつかれさんでした」というメッセージが仕込まれており、細部に『NARUTO-ナルト-』要素が、散りばめられていました。

 また、40年にわたり連載された『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(作:秋本治)の最終話では、839話「クソお世話になりました」の扉絵に、尾田先生の深いリスペクトが感じられました。このサブタイトルは『ONE PIECE』の序盤で「サンジ」が恩人「ゼフ」との別れ際に放った名言であり、839話の回想シーンとしても登場するため、内容に沿った演出とレジェンド漫画家への熱いメッセージが見事に重なります。

 また「両津勘吉」の懸賞金「965011」が記された手配書の上には、ルフィが両さんの眉毛に見立てて逆さまの「3」を描いています。この手配書の数字は「110ごくろうさん」と読むことも可能で、秋本先生と両さんへのメッセージも感じられました。

 ファンからも「ダブルミーニングになっててうまい」「次元が違う天才」といった感嘆の声があがっています。

 他の漫画家へのリスペクトや愛をユニークに表現する尾田先生の、細部まで凝ったメッセージ性の高い扉絵には、『ONE PIECE』の物語に通じる魅力が詰まっているのではないでしょうか。