蝶野正洋(C)週刊実話Web
11月11日、自由民主党(以下、自民党)の石破茂総裁が第103代内閣総理大臣に指名され、早くも第二次石破内閣が発足した。
俺は石破さんが総裁選に勝利したときから、あまり長くは持たない中継ぎ投手のような役割になると予想していたけど、それが現実になりそうな状況だね。
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自民党は衆院選で過半数を取れなくて、野党に協力を求めている。
その一党が国民民主党だが、玉木雄一郎代表に不倫スキャンダルが発覚したことで、もはや総崩れのような感じになってしまった。
アメリカ大統領選ではトランプさんが勝利し、国際情勢も待ったなしの状況になっているのに、日本の政治がこんなに不安定なのは問題だよ。
与党も野党も自分たちのことしか考えてなさそうで、国民のために何がしたいのか見えない。
プロレス団体のユニット抗争に例えると、個性も主張もなく、なんとなく集まってるだけのようなユニットばかりで面白みがない。
もっと反体制のヒールユニットとか、独自路線を進む個性派軍団があってもいいと思うんだけどね。
自民党は盛大な総裁選をやって、終わったらノーサイドでひとまとめになって頑張っていこうという思惑だったんだろうけど、かえって派閥の対立を深めてしまった。
衆院選で裏金議員を比例代表から外し、非公認候補にも政党交付金から2000万円を配布したことで、石破さんの求心力が失われ、自民党はバラバラとなって弱体化してしまった。
これだったら、高市早苗さんのほうが良かったんじゃないかなという意見もある。
彼女が適任だったかどうかはともかく、トランプさんとは相性が良かったかもしれないけどね。
指揮系統が今まで以上に混乱する
そんな石破首相の肝いり案件に「防災庁の設立」がある。
政府の災害対応をリードする司令塔という触れ込みで、さっそく設立準備室を設けて、2026年度までには発足を目指しているという。
防災にずっと携わってきた俺からすると、この案はストレートには賛成できない。
なぜなら現在の日本の防災において大きな役割を負っているのは、やっぱり自衛隊なんだよ。
自衛隊は国防を基本としながらも人命救助が第一目的で、実質的に災害時の実働部隊として機能している。
救命・救助に関しては人材も機材も揃っているし、経験に基づくさまざまな対応マニュアルもある。
何よりも、指揮系統が一本筋になっているのが心強い。
だから防災という観点でも、自衛隊を中心に発展させたほうが機能的だと思うんだよね。
新たに省庁を作って、情報集積や指揮系統が分散してしまうのはあまり良くない。
今ですら自衛隊、消防、警察、そして各自治体といった防災体制があって、その横の連携を取るのが難しいという状況なのに、さらに司令塔が増えるとなると、現場が混乱するんじゃないかな。
それでもわざわざ省庁として立ち上げるのは、ポストを作りたいとか、予算を取りたいといった利権絡みなんじゃないかと裏読みしちゃうよね。
まずは防災庁となることで、具体的に何が良くなるのかというメリットをしっかり説明していくべき。そこが曖昧だと、石破さんがいなくなった途端に、この話も立ち消えになってしまうかもしれないよ。
「週刊実話」12月5・12日号より
蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。