吉井監督は過保護すぎないか
佐々木は長身で、あれだけ速い球を放れるのに、フォークばかり放っているのはもったいない。
私に言わせれば、吉井監督は投手出身なのに本当の指導を知らない、していない。佐々木はどんな練習をしているのか。本気でしっかり練習していたら、試合ではなく練習のときに指や腕が痛くなるはずだ。どんなキャンプを送ったのかも、見ていないのでわからないが「朗希さまさま」で大事にやらせたのではないか。
問題は、キャンプでやるべきことをちゃんとやったうえでおかしくなっているのかどうかだ。
佐々木のやるべきこととは何か。一言でいえば、あんなにフォークボールを投げる必要はないということだ。あれだけ速い球を持っているのだから、アウトコースに速い球をピュッピュッと投げて、打者が前傾でかぶさってきたら、私の西武監督時代の東尾のように、胸元にびっくりするような球を投げて起こしてから、外角に速い球を投げたら楽なピッチングができるはずだ。
ロッテでは2023年に新型コロナで主力選手の大量発熱があったが、こんなことが起こるのは、フロントがチームの健康管理に気をつけず、監督や選手たちに厳重注意をしないことも一因ではないか。
私が広島のコーチのとき、「必勝法70 か条」という冊子を手に入れた。ドジャースの戦術書だが、この本の第1条に「常にベストコンディションを保て」と書いてある。
ベストコンディションを保つにはどうしたらいいか。わかる人がいるだろうか。“how to say” ができる人はいるが、“how to do” を言える人がいるか。
病気のときも、「あなたは生活習慣が悪いから病気になった。病気にならないためにはこういう生活をしなさい」といえる医者がいるか。
「暴飲暴食を避けなさい」「酒はやめなさい」程度のことは言うだろうが、もっと丁寧に生活習慣の改善法を指導する先生がいるか。患者の顔もろくに見ないで、パソコンのカルテを見ながら薬だけ出す医者が多いだろう。
いま、「糖尿病の患者が増えて薬が足りない」とニュースになっているが、医者が日ごろから親身になって生活習慣を指導しないから、患者はおいしいものを好きなだけ食べ、酒をたくさん飲んで糖尿病が増えて薬が足りなくなる。世の中が緩んで贅沢病が蔓延(まんえん)しているのだ。
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いまの佐々木は大リーグで通用しない
新聞によれば、佐々木は2023年末の契約更改後の記者会見で2024年オフのメジャー挑戦について聞かれ、「将来的にメジャーリーグでプレーしたいという思いはありますけど、まずはしっかり目の前のシーズンをプレーすることが大事かなとは思っています」と語った。
ところが日本で最後になるかもしれない2024年シーズンも、右上肢のコンディション不良などで2度も戦列を離脱してチームやファンを失望させた。開幕の4月は4試合に先発登板して3勝(1敗)したが、5月・6月は各1勝、8月・9月は各2勝どまりで、防御率も8月が2.96、9月は3.50と、大リーグを目指すエースの投球とはいえなかった。
そんな大黒柱がやっとスポーツ新聞の1面を飾ったのは10月2日。前夜、4位でAクラスに迫る楽天を1失点10奪三振でかわし、やっとロッテの2年連続CS進出を決めた。
佐々木にとってはプロ生活5年目にして初めての10 勝で、オリックス戦で完全試合を達成した2022年4月以来2年ぶりの完投勝利だから、驚くよりあきれてしまう。
10月になってやっと帰ってきたエースを、吉井監督は「いままでは65%の朗希だったが、今日は90%だった」と称賛したというから、新聞も監督ものんきなものだ。私に言わせれば、ファンに最後までBクラス転落を心配させたロッテも、ひ弱なエースがしっかりしていれば楽に2位にはなれただろう。
そんな佐々木を見るにつけ、私は巨人で一緒にプレーをした堀内恒夫を思い出す。甲府の高校から出てきた右腕は身長178センチ・体重73キロの華奢な体で1年目から33試合に登板し、開幕13連勝を含む16勝(2敗)を挙げた。
その後も1978年までの13年間2ケタ勝利を続け、通算18年間で203勝の記録を残した。
しかも彼は、いまだにフォークボールやスライダーを多投する佐々木と違って、伸びのある速球と大きなドロップ(落ちるカーブ)しか投げなかった。
佐々木がCSでどんな投球を見せるか、大リーグのアジア担当スカウトも見守ったが、先日来日した旧知のフロント幹部が私に「佐々木はどうですかね」と意見を求めたので、「ダメダメ。いまだに1シーズン元気に投げられないのだから、10日も20日も連戦があるアメリカで、中4日のローテーションは守れないね」と答えておいた。