[天皇杯決勝]G大阪 0-1 神戸/11月23日/国立競技場
11月23日、国立競技場で天皇杯の決勝が行なわれ、64分の宮代大聖のゴールで、神戸が5大会ぶり2度目の優勝を果たした。
試合後、チームメイトたちが喜びの輪を作っていくなか、涙をこらえきれない男がいた。日本代表にも名を連ねるGK前川黛也である。
この日は陽が刺す前半はキャップを被りながらプレーするなど、試合を通じて集中力を切らさなかった前川は大一番でもクリーンシートを達成。初優勝を手にした2019年度大会の決勝は控えだったが、今回はピッチで戴冠に貢献した。
一方で、今は神戸の正守護神である前川だが、天皇杯では2回戦から準決勝まで、同僚のオビ・パウエル・オビンナ、新井章太にゴールマウスを任せてきた。
それだけに決勝の舞台のみに出場することに、後ろめたさもあったという。しかし、大一番に向けては先輩の新井から「お前がこのチームの守護神なんだから。俺らのバトンをつないでくれ」と背中を押されたという。
【動画】神戸・宮代の決勝弾
だからこそ、強い覚悟を持ってピッチに立った。
「僕自身がベンチ入りもしたことがない大会で、最後こういう起用になって、いろんな感情がありました。今まで章太くんや、オビが出ていたところで、急に僕になった時に、なんて言うんですかね、今日の試合に対しては、優勝したいという気持ちもそうなんですが、キーパー陣のためにという想いが強くて、僕はそのプレッシャーとの戦いでもありました。だから勝ってキーパー陣のバトンを受け継げたというのは、本当に良かったです」
試合終了のホイッスルを聞いてすぐ、前川はベンチへ走り、この日もエールを送り続けてくれた新井を探して熱い抱擁をかわした。涙が止まらなかったという。
その姿に、新井も感情を揺さぶられ、前川からの「章太くんのお陰だよ」という言葉に自然と涙が溢れ出てきた。そこにシジマールGKコーチも加わる。
リーグ連覇も目指す神戸にとって、より勢いを得ることになりそうな、そして常勝クラブとなっていくために、大きな2度目の天皇杯制覇と言えるだろう。
その栄冠を、ルーキーの高山汐生を含めたキーパーチームの絆が支えたことは忘れられないドラマである。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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