過去に制作されたアニメには、視聴者の胸を締めつけるような辛いシーンが描かれ、トラウマや鬱展開として語られる作品もあります。どのような描写が視聴者の心に深く突き刺さったのでしょうか。



画像は「『妄想代理人」全話いっき見ブルーレイ」(フロンティアワークス) (C)今敏/株式会社マッドハウス/「妄想代理人」製作委員会

【画像】翌日は「休まなきゃやってらんないよ…」こちらが作画は超かわいいのに鬱展開がずーっと続く今敏監督作品です(4枚)

WOWOW作品は振り返ると名作ばかり

 先日、2024年11月14日に、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売され、「ドラクエ」のために休暇を取る人たちが見受けられました。

 そしてアニメのなかには、観た翌日に「メンタルやられて休みます」と言ったら、分かる人は「それは仕方ない……」と精神の療養を許されそうなトラウマ級の作品もあります。この記事ではWOWOWで放送された作品に限定して振り返ります。

『BRIGADOON まりんとメラン』

 アニメオリジナル『BRIGADOON まりんとメラン』は、『勇者王ガオガイガー』や『ベターマン』を手掛けた米たにヨシトモさんが監督を務め、2000年から2001年にかけてWOWOWで放送されました。

 舞台は昭和の日本、女子中学生の主人公「浅葱まりん」が、突如、空に現れた世界「ブリガドーン」から飛来した生体兵器「モノマキア」に襲われます。まりんが逃げた先で青い瓶を投げると、「メラン・ブルー」と名乗る「モノマキア」が現れ、まりんを守るために戦います。

 一見、かわいらしい絵柄や独特なギャグによって明るい印象を与える作品ですが、物語は過酷な展開を迎えます。「モノマキア」に狙われるまりんは警察からの取り調べ中に暴力を振るわれ、さらに「モノマキア」によって家や家族を失った人びとから恨みを買って攻撃されることもありました。そして被害者から襲われた結果、まりんは両目を失明してしまいます。

 しかし、その悲劇を乗り越えた先には、まりんとメランの絆を感じられる感動的な結末が待ち受けていました。最初は無感情だったメランが人間らしい感情的な姿を見せるシーンは、涙を流した人も多いでしょう。

 ネット上では、「中盤の鬱展開に合わせてOPのまりんの目に光がないのがつらかった」「意外なことが伏線になっていて、後半の怒涛の回収には熱くさせられた」などと高く評価されています。

『妄想代理人』

 2004年からWOWOWで放送された『妄想代理人』も、「トラウマになる」と有名です。監督は『PERFECT BLUE』や『パプリカ』で名高い今敏さんで、この作品は彼が唯一手掛けたTVシリーズです。

 本作は、謎の通り魔「少年バット」を巡る連続事件を軸に物語が進みます。主人公でデザイナーの「鷲月子」をはじめ、次々と被害者が出現するなか、目撃証言があるにもかかわらず少年バットは捕まりません。社会全体が少年バットの話題で持ちきりのなか、事件を追う刑事「猪狩慶一」と「馬庭光弘」は、少しずつ真相に近付いていきます。

 作中にはいじめや売春といった現代に通じる心の闇が鮮明に描かれており、ゾッとするシーンがいくつもあります。例えば、主婦が井戸端会議の話題を求め、少年バットに襲われて血まみれになった夫を助けずに、その状況ばかりしつこく質問するシーンには、背筋が凍った人も多いでしょう。

 また、オープニングもさわやかな曲調とは裏腹に、ビルの上で靴を両手に持って笑みを浮かべる女性や、落下しながら笑っている男性など、不気味な映像が流れます。そのアンバランスさは、一度見たら忘れられないでしょう。

 一方で、先の読めない展開や、考察の余地を残した巧みな構成は「最終回でタイトルの意味が分かり、今敏の凄さを知った」「もう一周観たくなるし、視聴後に気付く題名の秀逸さ」と絶賛されています。ちなみに、今敏監督のオフィシャルサイトでは作品に関する詳細な情報をつづられています。視聴後に読むとより一層、この作品を楽しめるのではないでしょうか?