衝撃が走った。
11月3日に行なわれた高校サッカー選手権の埼玉県予選準々決勝。夏のインターハイを制した昌平が聖望学園に3-4で敗れ、全国行きを逃したのだ。筆者は当日、別会場で取材していたが、グラウンドにいた他校の選手たちもニュースが飛び込んできたスマホに釘付け。それほどまでに驚きが大きいトピックだった。
それから20日後。11月23日、昌平は新たな目標に向かい、U-18高円宮杯プレミアリーグEASTの戦いに臨んだ。しかし――。結果は流経大柏に0-3の完敗。立ち上がりから相手の強度の高い守備とハイプレスに飲み込まれ、決定機をほとんど作れずに終わった。
「球際の部分や攻守の切り替えが圧倒的なチームで、僕たちはそれに屈してしまった。自分たちは選手権予選で負けて、そこから気持ちを切り替えようという話をしたけど、引きずっている選手もやっぱりいたと思う。そういった意味でも今日は圧倒された試合でした」(MF大谷湊斗/3年)。
1年間チームを引っ張ってきたキャプテンの言葉からも、気持ちの整理ができていなかった様子が見て取れる。
もちろん、切り替えようとしていたはず。しかし、表面的には乗り切ったように見えても、ダメージは予想以上に深かったのだろう。首位と勝点3差で優勝の可能性を残しているプレミアリーグでアクセルを踏み直したが、あくまでも自分たちに言い聞かせるように、前を向いていただけだったのかもしれない。
玉田圭司監督も選手のメンタル面について、「選手たちのせいだけではない」と前置きしたうえでこう振り返る。
「今の状況は難しい。正直、自分も選手の心の中まで読めていない部分があるかもしれない」
最大の目標だった選手権出場を果たせなかった現実を受け止めるのは、簡単な作業ではないだろう。衝撃の敗退から約3週間が空いたとはいえ、選手たちがショックから立ち直って前に進んでいくためには、もう少し時間が必要だったのかもしれない。
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だからこそ、玉田監督は自身の経験を踏まえ、選手たちに伝えたいことがある。
「この負けをどう捉えるかが大事。それが次に繋がる。勝ち続けていくことなんて、もちろんできないのは、選手も分かっていたはず。インターハイの後を見ていても、それは理解していたと思う。だからこそ、どう捉えるかが僕は重要だと思っている」
考え方ひとつで敗戦の意味合いは大きく変わる。確かに選手権出場を逃した悔しさはあるし、自責の念に駆られる選手もいるだろう。しかし、時計の針は動き続けている。次のステップに進むためにも、下を向いている時間はないのだ。
自身も高校サッカーで悔しさを味わったが、プロになり、J1優勝やワールドカップ出場も果たした。そんなレフティの言葉には重みがある。
「選手にも伝えたけど、自分は高校サッカーで良い思い出なんてひとつもない。全部、市立船橋に持っていかれたから。そういう言葉は伝えたから、あとは選手がどう感じるかですよね。勝って終われるのは1チームだけだし、全国大会に出場できるのも1チームだけですから」
指揮官は「選手権はひとつの区切りでもあるから、難しいところはある」と語る一方で、「でも、サッカー人生が終わるわけじゃない。これがあったから、“俺は良くなった”と思えるような感覚を持つ選手は上にいく」と期待している。
プレミアリーグはあと2試合。優勝の可能性が残っても、潰えても、選手たちは自分の未来を切り開くために全力を尽くすしかない。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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