打ち切りの影には読売ジャイアンツ? 『電脳警察サイバーコップ』が辿ったその行く末とは。



『電脳警察サイバーコップ』DVD第1巻(東宝)

【画像】うわぉ、すっげぇ美人! こちらが「電脳警察サイバーコップ」のヒロイン・上杉智子です(3枚)

東映独壇場のなか登場した、全く新しいヒーロー作品

 時は1980年年代半ば。特撮ヒーロー作品、それもTVシリーズの新作では、東映が戦隊ものにメタルヒーロー、そして久々に復活した『仮面ライダーBLACK』と気を吐いていました。

 そんな東映独壇場ともいえるなか、登場したのが『電脳警察サイバーコップ』です。

 ゴジラで知られる映画会社の東宝に講談社、玩具メーカーのタカラが加わり、鳴り物入りで始まった全く新しい特撮ヒーロー作品で、当時はそれなりに人気がありながらも、実に不運な打ち切りを迎えました。ここではその背景について迫ります。

視聴率上昇が仇となり、番組枠が狙われるハメに…

 作品は、近未来の東京を舞台に、ビットスーツをまとった4人のヒーローが都市型テロリストと戦う物語で、従来の特撮作品と大きく異なるのは、当時フィルム撮影が主流だったのに対し、VTR撮影が導入された点にあります。

 多大な費用がかかるフィルム撮影のオプチカル合成に対して、合成のハードルが格段に減ったこともあり、大胆な画作りが可能となりました。

 一方、当時のVTR撮影といえば、バラエティ番組などのイメージが強く、子供ながらに「画面がチャチ」と思ったのは筆者だけではないはずですが、登場人物の軽妙洒脱なかけ合いなど、ドラマパートの魅力もあってか、徐々に人気を獲得するに至りました。

 放送時間も日曜朝の10時30分と決して恵まれた枠ではありませんでしたが、作品力が功を奏して第13話「衛星が落ちる!! ジュピター殉職!?」では、ついに視聴率10%を獲得。しかしながらその好調だった視聴率が仇となってしまいます。

 本作は日本テレビ系列で放送され、その日本テレビと結び付きの強い読売新聞傘下のプロ野球チーム「読売ジャイアンツ」をテーマにしたアニメ『ミラクルジャイアンツ童夢くん』が、強引にねじ込まれることとなったのです。

 子供の野球への関心を高めるために企画された『童夢くん』は、『サイバーコップ』と同じく系列の読売広告社が製作にかんでおり、放送時間帯として目を付けたのが、第13話以降も安定した視聴率を得ていたこの枠でした。

 読売グループの思惑が見て取れるまさに大人の事情で、製作陣にとっても晴天の霹靂(へきれき)だったことは想像に難くありません。企画の立ち上げから関わったシリーズ監修&監督の村石宏實さんも後年の取材で「アニメに枠を取られてしまって」と悔しさをにじませています。



「ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK vol.13 電脳警察サイバーコップ」(講談社シリーズMOOK)

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最終回なのに総集編?

 かくして、本作は第25話「恐怖の女戦士!ルナ登場」より、毎週水曜日の17時に放送時間帯が移動します。

 同話よりアニメーター・イラストレーターとして人気を博していた、いのまたむつみさんデザインによる新幹部「ビーストマスター・ルナ」を登場させるなど強化策が打ち出されたもの、時間帯移動に伴う痛手は大きく、視聴率は一気に転落します。またタカラが発売していた玩具も、そのクオリティとは裏腹に苦戦を強いられていた事情もあり、第36話で惜しくも幕を閉じることとなりました。

 なお、本編としての実質的な最終回は第34話で、最終2話は「リクエストトップ10特集」と題された総集編で枠を埋める形となりましたが、キャストによる新撮パートを設けるなど、本作にかけたスタッフは最後まで視聴者を飽きさせない工夫を怠ることはありませんでした。

 もしも時間帯移動がなく、人気を維持し続けたら、新たな特撮ヒーローシリーズが誕生していたかも? そんな大いなる可能性を秘めていた本作ですが、映像自体がデジタル主流となった現在では、ルックも当時ほどの違和感はないでしょうし、YouTubeの「タコラチャンネル」では第1話~第27話までの8エピソードが現在も配信されており、手軽に観ることができます。この機会にぜひ『電脳警察サイバーコップ』の魅力を再発見してもらえればと思います。

(参考書籍):
「ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK vol.13 電脳警察サイバーコップ」(講談社シリーズMOOK)
『光を継ぐために ウルトラマンティガ』(洋泉社)