今年が2回目の開催となったF1ラスベガスGP。関係者たちはこのラスベガス・ストリップで行なわれるグランプリをより良いものにするべく尽力してきたが、ドライバーやチームが直面する課題、勝敗を分ける要素については何も変わっていない。
豪華絢爛なサーキットのパドックビル屋上には新たにスケートリンクが作られたが、これは皮肉にもコースの路面状態を暗示しているようだ。6.2kmのコースは、市街地コースということもあって路面が滑りやすくなっており、気温・路面温度は10℃を少し超えるくらいという超低温。これはドライバーやチームのエンジニアを悩ませるもので、セッション中にもスリップやスライドを抑えようとするドライバーの姿が多く見られた。
決勝レースでは、各車がさらに苦しむことになるだろう。特にこのストリートコースはセッション後の深夜に一般道として通常通り開放されたりしているため、グリップレベルはまた下がってしまう。そしてドライバーたちが最も苦しむことになるであろうと考えられるのが、グレイニングだ。
グレイニングとは、タイヤの温度が理想の作動温度領域よりも下回ってしまうことで、表面のゴムが粒状に荒れてしまう現象を指す。これによって接地面積が減り、グリップ力が低下してしまう。マクラーレンのアンドレア・ステラ代表もグレイニングを抑えることが課題になるとして、「FP3でのレッドブルのロングランを見ていると、ミディアムタイヤで数周走っただけで使い物にならなくなっていた。これは戦略的にも厳しいだろう」と話していた。
またタイヤサプライヤーであるピレリの責任者マリオ・イゾラは、ドライバーが走らせ方を工夫することでグレイニングの影響を軽減させる必要があると指摘する。特に燃料搭載量が多くマシンの重いレース序盤が、グレイニングとタイヤの性能劣化を抑える上での鍵になるという。
一方で、グレイニングを完全に防止することはほぼ不可能。そして一度起きたグレイニングを解消することもまた、一筋縄ではいかない。考え得る最良の手段としては、タイヤに横方向の負荷をかけてタイヤに熱を入れることだが、ラスベガスのコースにはタイヤにストレスがかかる高速コーナーがほとんどないため、それも難しいのだ。
イゾラはこう説明する。
「通常、タイヤがかなり摩耗してくるとグレイニングも綺麗になってくる」
「タイヤの摩耗が少ない場合は、グレイニングを解消できない。何とか生き延びるしかない。ただグレイニングを可能な限り最善な方法でやりくりすれば、パフォーマンスへの影響を小さくできる。グレイニングはコントロールできるものだと思っている」
またピレリは今回のタイヤ戦略に関して、ミディアムからハードへと繋ぐ1ストップ作戦を推奨しており、グリッド後方からスタートするドライバーはリバースストラテジーとしてハードからミディアムの1ストップを組むことも有効だろう。ソフトタイヤはレースに適していないと見られているが、セーフティカーや赤旗などでレース展開が動いた際は、有効なオプションになり得るかもしれない。
1ストップレースは基本的に各車が似たようなピット戦略をとることになるため、レース中のアクションは少なくなってしまいがちだ。しかしながら昨年のレースではスペクタクルなレースが見られたことも記憶に新しい。今回は各車ローダウンフォース仕様の小さいウイングを使っているためDRSの効果は薄くなってしまうが、ラスベガス・ストリップのロングストレートではスリップストリームの効果も強大。見応えのあるレースが期待される。