息苦しさを感じながら戦い抜いた天皇杯決勝。際立った神戸DF酒井高徳の「観客を熱狂と興奮に導き、輝く表情を生み出した」活躍

[天皇杯決勝]G大阪 0-1 神戸/11月23日/国立競技場

 11月23日に開催された第104回天皇杯の決勝で、ヴィッセル神戸はガンバ大阪と対戦。64分に宮代大聖が奪ったゴールを守り切り、1-0で接戦を制した。

 吉田孝行監督、選手たちが揃ってチーム一丸での勝利を強調したなか、個人的に特に印象に残ったのが、右SBでフル出場した酒井高徳だ。

 日本代表で42キャップを誇る33歳は、随所で対人の強さを発揮し、クリーンシート達成に大きく貢献した。58分にはピッチに入ったばかりでフレッシュなウェルトンに対し、粘り強い守備で応戦。最後は必死に足を伸ばしてかきだし、突破を防ぐと、サポーターを煽り、聖地国立に詰めかけたサポーターを大いに沸かした。

「やっぱタイトルが懸かった試合は、取ると取らないとでは全く違う。神戸が今まで歩んできた、この4年間も含めて、非常に成長した姿が試合に出たのかな」

 5年ぶり2度目の天皇杯制覇をそう振り返った酒井は、明らかな鼻声だった。「熱もなかったし、具合が悪いわけではなかったけど、最近流行ってる喉からくる風邪みたいなので、少し咳だったり、鼻が詰まって、普通ではない状態。今日もちょっと息苦しかった」という。
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「声もこんな感じなので、万全ではなかったけど、それは絶対に言い訳にはしたくなかった。100%このチームに貢献できるタイミングまで、自分の状態を引っ張りたかったというのもあったので、前節のリーグ戦を回避させてもらった。それは別に決勝に合わせたというより、これからまだリーグ戦とか試合があるなかで、自分がチームの力になれることを考えた時に、今リスクを冒すところじゃないと思った。 

(欠場した前節の)リーグ戦以降は、とても有意義に使える時間があったので、コンディションは最低限しっかり作りながら、怪我やちょっと自分の良くないところをしっかり直す時間にも当てられた。まだ正直、今日も100%じゃないなって感じだったけど、だからこそ細かいポジションのところとかを意識してやっていた」

 酒井は大会全試合の中から最も記憶に残る感動的なシーンを演出し、観客を熱狂と興奮に導き、輝く表情を生み出した選手に贈られる「SCO GROUP Award」を受賞。セレモニーで自身の名が呼ばれた際は、驚いていたが、ハードワークを体現した背番号24は受賞に相応しかった。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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