今から約2週間前。11月9日、流経大柏は日体大柏を4-1で下し、3年ぶり8度目の選手権出場を決めた。
今季は開幕から好調を維持し、U-18高円宮杯プレミアリーグEASTでも前半戦は上位争いを展開。MF松本果成(3年/湘南内定)、MF亀田歩夢(3年/富山内定)らを擁し、高体連屈指のタレント力で大きな期待を寄せられていた。
しかし――。チームはインターハイ予選決勝で市立船橋に1-2で敗戦。「今までやってきたことが半信半疑になってしまった」と榎本雅大監督が振り返ったが、そこからチーム状況は暗転してしまう。
夏以降は勝ち切れなくなり、プレミアリーグでも中位まで順位を下げた。それでも選手権予選では苦しい状況から持ち直しただけに、最後の冬に挑む権利を手にできた喜びは大きい。笑顔が弾け、誰もが待ちに待った大舞台での戦いに胸を躍らせた。
その一方で、複雑な心境だった選手もいる。10番を背負うMF柚木創(3年)だ。
創造性豊かなプレーで2年次から出場機会を掴み、世代別代表も経験。今季もトップ下のポジションで攻撃を牽引し、Jクラブの練習にも参加した。チームを象徴するプレーヤーだが、シーズン後半戦は怪我の影響もあってパフォーマンスが低下。10月下旬にスタートした選手権予選では全3試合でベンチスタートとなり、難しい時間を過ごした。柚木は言う。
「チームが勝つことが一番。自分もベンチスタートを受け入れながら試合を見ていたけど、決勝はフクダ電子アリーナという素晴らしい舞台でみんながプレーしていたので、自分もスタートから試合に出たい気持ちがあった。本当に悔しい想いがあって…」
間近でその様子を見てきた榎本監督は言う。
「彼は選手権で悔しい想いをした。提出してきたサッカーノートにも、『嬉しいけど、自分が出てない状況で勝つことで悔しい気持ちもあった』と書いてあった。彼の進路は決まっていないけど、向き合うことが日々の成長につながると思う」
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そうした経験がきっかけとなり、柚木はより高い意識で日々を過ごした。
「ポジション争いも油断できなくなったし、選手が頻繁に入れ替わるチームなので、練習からアピールしないといけない。この悔しさが自分のメンタルを強くさせてくれたと思うし、悔しい気持ちは練習から出せているので、良い状態で向き合えている。そういった意味では悔しさをバネにできていると思います」
選手権予選後初の公式戦となった11月23日のプレミアリーグEAST第20節・昌平戦(3-0)。久々に先発起用された10番は序盤から持ち前のテクニックと正確なキックでチャンスに絡む。1-0で迎えた21分には、左CKからCB奈須琉世(3年)のゴールをお膳立てした。
その後は強度の高い守備でも貢献し、攻守で躍動する。そして、64分だ。柚木はMF飯浜空風(3年)のラストパスをエリア内で受けると、冷静に左足で流し込んで3点目を奪った。71分に交代となったが、復活を示すには十分過ぎる出来だったのは間違いない。
現時点で大学進学に気持ちは傾いているが、高卒プロの選択肢も諦めていない。進路は決まっていないため、ここから先の戦いはすべて“就職活動”となる。プレミアリーグ、そして12月28日に幕を開ける高校サッカー選手権で自らの価値を証明できるか。「キレは戻ってきている」とは柚木の言葉。新たな扉を開くべく、チャレンジは続く。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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