優れたラリードライバーならF1でもきっと戦える! 8度のWRC王者オジェは確信「ファンも見たいと思っているはず」

 モータースポーツ業界で取材を続けていると時折、「真に速いドライバーであれば、どのようなマシンを走らせても速い」といったようなフレーズを聞くことがある。8度の世界ラリー選手権(WRC)チャンピオンであるセバスチャン・オジェも同様の考えを示し、いかなる路面でも全開で駆け抜けることができる良いラリードライバーであれば、F1をはじめサーキットレースでも高いパフォーマンスを発揮できるはずだと語った。

 オジェが2017年にレッドブルのRB7を走らせたように、これまでもコリン・マクレーやセバスチャン・ローブなどWRCのスタードライバーがF1マシンをテストしており、直近ではトヨタのカッレ・ロバンペラがレッドブルリンクでレッドブルのRB8をドライブした。

 ローブやオジェ、ロバンペラなどのようなレッドブルを通じたF1テストだけでなく、今年トヨタがハースF1とパートナーシップを結んだことで、トヨタ系のドライバーとしては、ハースのリザーブドライバーに起用されるという選択肢も生まれた。

 2022年のル・マン24時間レースにLMP2クラスで出場した経験も持つオジェは、FIA F2をはじめとするジュニアフォーミュラなどサーキットレースでの成績に応じて付与されるFIAスーパーライセンスポイントによって、WRCドライバーがF1公式セッションに出場することが難しい現状を指摘。才能のあるラリードライバーであれば、畑違いのF1でも競争力を発揮できるはずだと語った。

 WRCドライバーはサーキットレース、特にF1でも通用すると思うかと尋ねると、オジェは次のように答えた。

「残念なことに、最近はそういう機会がなくなってきている。ファンもそれを見たいと思っているはずだから、残念だと感じることがある。もちろん、難しい挑戦になるだろう。それは間違いないけど、興味深いことだ」

「カッレはまだ若いし、まだ学ぶことができる。なら彼に(F1の)機会を、そしてモータースポーツファンにそういったチャレンジを見る機会を与えてみないか? と僕はまず言いたい」

「でも、それを実現するには、残念ながらライセンスやポイントなど多くの障壁がある。優れたラリードライバーであれば、パフォーマンスという点で近づけると僕は確信している」

「もちろん、最も難しいのは詰めの部分で、長年フォーミュラカーで戦ってきたドライバーと比較して、求められていることに対して僕らのどちらが応えられるかを判断するのは不可能だ」

「学ぶべきことが沢山あるというのは確かだろうけど、少なくとも僕は実現してほしいと思っている」

 一方で、F1からWRCへという流れは現在も続いている。2009年から2011年にかけてはF1世界チャンピオンのキミ・ライコネンがWRCに挑戦。2022年には、F1世界チャンピオンであるマックス・フェルスタッペンの父で元F1ドライバーのヨスがWRCデビューを果たした。今年のラリージャパンにも、元F1ドライバーのヘイキ・コバライネンがRally2で参戦している。

「例えば、ここ数年はF1ドライバーや他カテゴリーから参戦しているドライバーもいる」とオジェは言う。

「しかしコドライバーとの作業やペースノートの作成など、非常に難しい挑戦でもある。僕らのスポーツでは経験も重要な要素だ。彼らの中で、トップレベルでしっかりと活躍できたドライバーはいなかった」

「個人的には、他カテゴリーのチャンピオンが合わさって走るのが見たいね」

 F1現役最年長となるフェルナンド・アロンソは、同シリーズで2度にわたり世界タイトルを獲得した他、過去にインディカーや世界耐久選手権(WEC)のみならずダカールラリーに挑戦と、フォーミュラという枠にとらわれず様々なカテゴリーでその多才ぶりを発揮してきた。

 アロンソがWRCに参戦したらどうなると思うか? と尋ねるとオジェは次のように答えた。

「フェルナンドは色々なことをやっているし、もしかしたら(WRC参戦が)実現するかもしれない」

「彼にラリーカーを走らせる才能があるのは間違いない。それは確かだけど、問題は彼がコドライバーとどれだけ仕事ができるかということだ。少なくとも、本当のチャンスを与えるためには時間が必要になるだろうね」