雨の日に濡れた路面でズルッと足を滑らせ、転んだ拍子に手をついたら手首をボキッ! 若かりし日には想像もしなかったシチュエーションで、骨折してしまうのはシニアの定めか‥‥。いやいや、骨密度を意識した生活習慣で、老後のQOLを守り抜こうではないか。

 骨が劣化して骨折しやすくなる疾患を「骨粗しょう症」と呼ぶ。初期症状こそほとんどないが、その病状が進行することで体の見た目にも変化が現れる。京都市右京区にある「なか整形外科」の樋口直彦理事長が解説する。

「よく見られる症状の1つが『猫背』。背中が丸くなります。主に背骨の圧迫骨折が原因です。いわゆる『いつのまにか骨折』で、痛みを伴わないことも少なくなく、気づかないうちに進行してしまうこともある。背骨の椎体が押しつぶされるように変形し、背中が丸くなるだけでなく、身長が縮んでしまうこともあります」

 20歳の頃よりも2センチ以上の身長変化は骨粗しょう症の疑いアリ。背骨のみならず、手首や股関節の骨折にも用心が必要となる。

「特に女性は男性よりも骨密度の低下が顕著。というのも、閉経後にホルモンバランスが変化してエストロゲンが減少することで、骨を溶かしてしまう『破骨細胞』が活性化。どうしても女性は骨折のリスクが高くなってしまいます」

 もっとも、男性にとっても他人事ではない。加齢に伴い骨粗しょう症の有病率が増加するのは、男女共通だ。骨を脆くしてしまう原因の1つがカルシウム不足で、

「魚類、野菜、乳製品を食べる習慣がないのは黄色信号。カルシウムが不足してしまい、骨の健康を維持できなくなります。食生活がファストフード中心の場合も要注意です。特に過剰な脂肪はカルシウムの吸収を妨げてしまいます。他に注意しなければならないのが、塩分とカフェインの過剰摂取でしょう。いずれも尿中へのカルシウム排泄を促進してしまいますからね」

 同様に飲みすぎに注意なのがアルコール飲料だ。

カルシウムの吸収を妨げて、古い骨を壊して新しい骨を生成する『骨代謝』にも悪影響を及ぼします。さらに、喫煙も骨に悪影響を与えることが知られています。タバコに含まれる有害物質は、骨の成長を妨げるとともに骨密度を低下させるリスクもあるのです」

 そして、夜型生活の場合は「日光浴のススメ」が効果的だとか。

「太陽光を浴びることで生成されるビタミンDはカルシウムの吸収を助ける栄養素。カルシウムは吸収されにくいので、例えば、毎日牛乳を飲むだけでは不十分なのです。生活サイクルで太陽光を浴びられなくても、食品からビタミンDを補うこともできます。献立に魚類やきのこ類を加えるといいでしょう」

 血肉と同じように食生活が骨を形成しているのだ。

【「骨粗しょう症」チェックシート(12)】

セルフチェックで5点以上は近くの医療機関へGO!

(1)週に5回はファストフードを食べる 1点
(2)1日に350グラム以上の野菜を食べない 1点
(3)日中外に出る習慣がない 1点
(4)1日にカルシウムを600グラム以上摂取していない(牛乳なら60ミリリットル)1点
(5)毎日アルコールを飲む 1点
(6)喫煙習慣がある 1点
(7)毎日カフェイン飲料を2リットル以上飲む 2点
(8)学生時代に文化部あるいは帰宅部だった 2点
(9)女性で閉経している 3点
(10)過去に食事制限を伴うダイエットに成功している 3点
(11)周囲から背中が丸くなったと指摘を受けた 6点
(12)身長が縮んだような気がする 6点

(つづく)

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