「アニメはとりあえず3話まで見るべき」かつてはそのような掟がアニメファンの間にあったようですが、ひょっとしたらもう古い概念なのかもしれません。さまざまなコンテンツで面白さの速度が求められるようになった昨今、アニメでも初回の1話で勝負を決める作品が増えてきました。
アニメ『アキバ冥途戦争』キービジュアル (C)「アキバ冥途戦争」製作委員会
【画像】え…っ?タイトル以外「ただカワイイ」だけやないか こちらが今見ても騙されそうな『アキバ冥途戦争』ティザービジュアルです
メイド喫茶のお仕事ドラマかと思いきや?
YouTube動画や小説、マンガ、映画、ネット記事でさえも、令和のコンテンツは冒頭が命です。そうした時代の流れに沿う形で、TVアニメも初回の1話から勝負に出る作品が増えてきました。
※この記事には『アキバ冥途戦争』と『勇気爆発バーンブレイバーン』『【推しの子】』1話の内容を含みます。ネタバレにご注意くださいませ。
例えば2022年秋に放送された『アキバ冥途戦争』は、1話のインパクトでアニメファンの注目をかっさらった作品です。まず同作品の前評判において、CygamesとP.A.WORKSが贈るメイド喫茶のオリジナルアニメが始まるらしいぞ……ということで、当初は秋葉原を舞台にした「お仕事アニメ」だと思っていた人も多かったのではないでしょうか?
実際にP.A.WORKSといえば『SHIROBAKO』や『花咲くいろは』といった、特定の職業にスポットを当てた作品を数多く世に送り出してきたので、前情報の段階でお仕事アニメだと予想する人がいたのも頷けます。
また本PVなどを見てみても、多少様子がおかしい部分はありますが、意図的にいつものお仕事アニメだとミスリーディングさせるように作られていた印象です。ちょっぴりドジだけど真っ直ぐな主人公がメイド喫茶で働き、彼女の成長を通してメイド喫茶という職業にフォーカスしていくような作品になる、と信じながら、アニメファンたちは放送当日を迎えました。
しかしいざ放送されたのは、CygamesとP.A.WORKSのご乱心としか思えないような血と硝煙の第1話でした。お仕事アニメと言われればそうなのかもしれませんが、視聴者からは「お仕事はお仕事でもそういうお仕事かよ!」といった多数のツッコミが入ります。良い意味でアニメファンの期待を裏切り、同クールのダークホース枠として話題になりました。
また視聴者に予想外のジャブを入れた作品でいえば、2024年1月期のロボットアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』も負けていません。同アニメは、まずタイトルから、いわゆる「スーパーロボット系」のアニメだと思われていましたが、実際はミリタリー要素を前面に押し出したリアルロボットアニメでした。第1話では「デスドライヴズ」と呼ばれる人類の脅威に、必死に抗う兵士たちの活躍が描かれたのです。
ところがそうしたゴリゴリのミリタリー描写すら前振りに過ぎず、1話の終盤で物語はまさかの方向に転換します。そしてネット上では「とにかく1話を見ろ!」といった声が広まり、話題が話題を呼んで2024年冬アニメの覇権枠とまで言われるほどになりました。「例の曲」が流れるまでの展開は、ここ数年のアニメで最高のつかみといっても過言ではないでしょう。
先日、原作マンガが完結を迎えた『【推しの子】』のアニメ第1話も衝撃的でした。多くの反響を呼んだ第1話の展開は、いわば物語のプロローグです。原作マンガでは単行本丸々1冊を使って描かれていた部分で、一般的なTVアニメ1話分の尺に収めるには無理がありました。
しかしアニメ『【推しの子】』では、第1話の尺を約1時間20分に伸ばし、壮大なプロローグを見事に描ききったのです。TVアニメではほとんど見ない構成ですが、原作第1巻の怒涛の展開を余すことなく表現したおかげで、結果的にマンガを知らなかった層も引き込み、原作で作画を担当した横槍メンゴ先生も泣かせるほどの神アニメになりました。
令和は時間の効率化が求められる時代です。そのため、アニメの第1話がファンを獲得できるか、とても重要な役割を担っています。今後もインパクト大の1話で魅せるアニメが、どんどん作られそうです。