ファミリースキー場である湯沢中里はフリーライディングこそが面白い

湯沢中里スノーリゾートはスキー場の配分が初級者コース40%、中級者30%、上級者30%と全体的に初級者に優しいコース設計となっている。しかし、近年はその恵まれた降雪量と上級者コースの全てが非圧雪という類稀なるポテンシャルが注目され、パウダーフリークやフリーライドスキーヤーに人気だ。さらに昨季には巨大なウッドレールとウッドジャンプが新設された。いま滑り手たちに話題の湯沢中里を地元ライダーとともに巡った。

大雪が降る「雪国」のスキー場

「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった」。この一節から始まる川端康成の小説「雪国」の舞台である新潟県湯沢町は、その言葉通り、深い雪に覆われた町だ。その川端康成もかつては通りかかったであろう、JR越後中里駅に直結しているスキー場が湯沢中里スノーリゾートだ。車で来ても練馬から関越道を走らせて約2時間、湯沢ICから10分と都内から出発しても2時間半程度で着ける抜群のアクセスを誇り、そのために冬季には多くのファミリースキーヤーで溢れる。

この湯沢エリアが豪雪地帯なのには理由がある。その理由とは、新潟県と群馬県の県境にそびえる谷川連峰だ。標高2000m級の山脈が連なり、日本海から吹き付ける湿った雪雲を堰き止め、大量の雪を湯沢町に降らせるのだ。

谷川連峰のお膝元に位置する湯沢中里はエリアのなかでも豊富な積雪を誇る。ゲレンデは横に広くて標高差は大きくないため、比較的斜度の緩やかなコースが多い。それもあいまって初級者に優しいスキー場というイメージが強い。その一方で、初級者だけでなくフリーライディング派の上級者も楽しめるのだが、そのポテンシャルは意外と知られていない。そんな湯沢中里を、地元スキースクールでインストラクターを務める斎木真司さんとともに、地元出身プロスキーヤーの村山将大とプロスノーボーダーの星宏樹が滑った。

まずは2人が滑った2日間の映像エディットをどうぞ。

学生やファミリーで賑わう湯沢中里スノーリゾート

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湯沢中里は特徴が異なる2つの山からなる

湯沢中里はおおまかに2つの山から成る。全体的には緩斜面が多いのだが、向かって右側の山にはジャイアントコースやダイナミックコースなど、斜度が30度を超える非圧雪エリアがあり、雪が降った日は最高の浮遊感を味わえる斜面になる。ところどころ地形変化も豊富なので、壁に沿ってスプレーをあげたり、ギャップでジャンプをしたりとファミリースキー場とは思えないほどのアグレッシブな滑走が可能だ。

コースの横にはツリーランエリアが広がり、自然のままの地形を滑ることができる。最終的にコースに出るので道に迷う心配はゼロだ。FWT ZONEで23-24季からフリーライドの祭典、FWQ1スターの大会が開催され、今年も継続して行われる予定だ。その大会でひときわ注目を集めたのが、ウッドレールとウッドキッカー。積み上げられた木でできた巨大なアイテムがあり、どでかいジャンプを決めることができる。しかもここはベースエリアの正面のコース。オーディエンスの注目も抜群である。ランディングは多少の雪が乗っていた方が安全なので、雪が降った日にトライしたい目玉のアイテムだ。

眼下に湯沢市街を見下ろしながらグルーミングバーンをクルージング


カナダをはじめとした国内外のスノーリゾートを滑りフリーライドの大会を転戦する星宏樹の目には、中里は練習に最適の場所と映ったようだ。

星:「中里は非圧雪エリアが多いのが特徴ですよね。そのなかでも、初級者から上級者までが楽しめる幅広いセクションがあるのが中里らしさです。フリーランを楽しめるコースがあり、ジャンプができる場所もある。ゲレンデに向かって左側のエリアは緩いコースがあって、スノボ初心者でも滑りやすい。中里は2つの山に分かれているって言いますけど、それがまさに形になっていますよね。

23-24季にFWT ZONEに登場したウッドレールとウッドジャンプは僕的には中級者以上の人にオススメかな、という印象です。中級者であればステップアップの練習にうってつけだし、上級者にとっても遊んでいて楽しいアイテムでした。バックカントリーだと、自分で飛べる場所を探すのも大変だし、見つけてもリスクがある。中里のアイテムで練習を積んで、バックカントリーでのジャンプに体を慣らすのは大いにアリなんじゃないかなと思います。

23-24季に新設されたウッドレール。サムネイルの画像はウッドジャンプ

僕は中里に行ったら、朝イチはジャイアントコースとダイナミックコースのパウダーロングランを狙いに行きます。ここは最大斜度32度前後の急斜面がおよそ600m続くので、滑りごたえも十分です。パウダーでメジャーなスキー場に比べて一瞬でズタズタになるということがないのが嬉しいですね。満足いくまでパウダーを滑ったら、次はちょっとクールダウン的にパラレルコースのオンピステでカービングを滑りに行きます。カービングと言いながらパラレルコースにも脇パウがたくさんあるので、ちょっとずつパウダーを当て込みながら、緩くクルージングですね。

そしたら、まだパウダーが残っているツリーランへ。ツリーランエリアも広いので、探せばまだまだ雪が残っています。あらかた雪を滑り終えても、凸凹の斜面はフリーライドの練習になります。なので、最大斜度32度のFWT ZONEの急斜面は練習に最適です。ここで満足するまで滑るのが僕のお気に入りの1日のルーティンですね」

非圧雪のエクストリームコースを軽快に流す星。最大斜度31度の急斜面だ
エクストリームコースは地形変化が豊富なので、このようにギャップでジャンプもできる
圧雪されたパラレルコースの上に乗った新雪で豪快なスプレーをあげる
チャレンジバーンもギャップが豊富にある。フリーライドのコンペティションを転戦中の星には良い練習にもなったようだ
最大斜度32度のチャレンジバーンはゲレンデの麓にあって、注目度も抜群
今回二人を先導してくれた斎木真司さん。普段は舞子スノーリゾートでスノースクールの校長を務めている
滑り終えて一息ついた瞬間。自分たちのラインを見合っては、どこのラインが良かったか感想を話し合う