トヨタのお膝元にホンダ・シビックで行ってきました|WRCラリージャパン2024取材の裏側

 11月21日(木)から11月24日(日)にかけて愛知県と岐阜県を舞台に開催された世界ラリー選手権(WRC)最終戦ラリージャパン。54万人を超える観客が観戦エリアやイベント会場、リエゾン区間に訪れ、世界最高峰ラリーを目撃した。

 motorsport.com日本版も初日から現地でラリーの動向を追いかけ、様々なニュースを発信した。我々が実際にどのように現場で取材をしているのか、普段はあまり見えてこないWRC取材の裏側を赤裸々にご紹介する。

 タイトルにもある通り、トヨタのお膝元である愛知県・豊田市が中心地となるWRCラリージャパンにホンダのクルマで行ってきました。ええ、トヨタではなくホンダですよ。

 今回のラリージャパン出場者の中でホンダ製のクルマを使用したのはナショナルクラスの1台のみ……なのにどうして? と勘ぐる方がいるかもしれないが、理由は単純明快。トヨタよりもホンダの方が都合的に借りやすかっただけだ。使うクルマと取材内容は関係ないですからね。

 メディアルームが設置される豊田スタジアムは名鉄豊田市駅や愛知環状鉄道の新豊田駅からも近く、公共交通機関を使用することもできた。実際に2023年大会は電車通勤スタイルを採ったが、取材のしやすさを考慮して2024年はクルマ移動にしようと心に決めていた。

 もちろんレンタカーを借りることもできたが、ホンダが広報車の貸出を快諾してくれた。

 今回、借りたのはシビックe:HEV LX。今年9月のマイナーチェンジで設定された11代目シビックの新グレードで、新規デザインのアルミホイールやクリーンな印象を与える明るいグレーの内装が特徴だ。

 ラリージャパン前日の11月20日(水)が移動日となった。東京生まれ東京育ち、徒歩と電車で移動しがち……モータースポーツ専門メディアの編集部員としては恥ずかしいばかりだが、さほどドライブする機会も多くないため、緊張で手から水を生み出す超能力に目覚めたかと疑うばかりの手汗をかきながら、豊田スタジアムへとひた走った。

 しかし新たな“相棒”シビックは、そんな心配も受け止めてくれた。途中で別件の取材にも立ち寄ったため、計6時間程度のロングドライブとなったが、渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)がその疲労を軽減してくれた。

 豊田スタジアムに到着すると、まずは事前に申請していたメディアパスを受け取り、豊田市駅前の大通りで実施されたラリージャパン前夜祭イベントへと向かった。サイン会やマシン展示が行なわれた会場は見渡す限り1面の人で埋め尽くされ、この時点から日本でのラリー人気の高まりを実感した。

職場環境は充実

 初日は8時頃に豊田スタジアムのメディアルームへ。温泉か古き良き居酒屋の入口を思わせる暖簾をくぐって中に入ると、大きな会議室に横長のテーブルが並べられ、4ヵ所に国際映像やライブタイミングが映し出される大型モニターが設置されていた。

 もちろん、現代メディアの生命線である電源とWi-Fi完備。またメディアルームの近くには、ラウンジが設けられ、大会スポンサーのひとつであるチェリオのライフガードやお茶などが無料配布された。こちらも非常にありがたい。

 この日の午後には、FIAのメディアペン(Media Pen)が行なわれた。この単語に聞き馴染みのない方も多いかもしれないが、こちらはドライバーやチーム代表などにメディアが取材するエリアのこと。Penには“小さな囲い”といった意味もあるのだ。motorsport.com日本版では、同じタイミングで航空自衛隊ブルーインパルス飛行隊長の江尻卓にインタビューを実施した。

メディアはどうやって働いている?

 その後はセレモニアルスタートの取材。ここでも豊田スタジアムの特設ステージにマシンを止めたドライバーたちに話を聞くことができた。続くスーパーSSはコース全体を見渡せる席から、motorsport.comグローバル版/英国AutosportのWRC担当を務めるトム・ハワードと一緒に観戦。木曜日から2万人以上の観客が集まったことに驚きを隠せない様子だったが、実際に今年のラリージャパンでは合計来場者数が増加し、イベントエリアには子供連れの姿も多かった印象だ。

 翌日からラリージャパンでは本格的な林道ステージが開始され、ここから最終日にかけて、メディアルームでステージレポートを作成しつつ、サービスパークに帰ってきたドライバーに話を聞くことができるメディアゾーンで取材を行なうという日が続いた。

 それ以外にも専用アプリやWhatsAppを通じてFIAからの最新情報を仕入れて、記事として展開していった。本拠地である豊田スタジアム以外にも、午前/午後ループの間にメディアゾーンが隔地に設定されたが、motorsport.com日本版としても、グローバル版としてもラリーの現地取材では基本的に“ワンマンアーミー”。話題に事欠かないラリージャパンでは、メディアルームを離れることはできず、腕が4本あったらいいのにと思う瞬間もゼロではなかった。

F1日本GP取材の際にはトヨタでクルマを借りてみる?

 最終日には、セレモニアルフィニッシュを終えたばかりのラリージャパン覇者エルフィン・エバンス(トヨタ)や今季のドライバーズ/コドライバーズチャンピオンに輝いたティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組(ヒョンデ)、Rally2チャンピオンのサミ・パヤリなどがメディアルームを訪れ、囲み取材が行なわれた。

 これでラリージャパンは閉幕したが、取材の旅はまだ終わらない。翌日25日(月)にトヨタが名古屋で行なった2025年シーズンのWRC参戦体制発表会にも出席し帰路についた。

 6日間に及ぶ出張は長いように感じるかもしれないが、様々なことが次々に起こるラリー取材では、大きく息を吸い込み全力で駆け抜ければあっという間だ。

 今年のラリージャパンでは帰りのロングドライブも含め、計20時間近くシビックを走らせた。詳しい評価は市販車のジャーナリストの方々に任せるとして……個人的には非常に満足感が高かった。よく走り、よく曲がり、よく止まる。そして違和感なく使いこなせるユーザビリティは評価ポイントのひとつだろう。

 今度は逆に、F1日本GP取材の際にトヨタでクルマを借りてみるか……ハースF1と提携済みだから、今回よりは気まずくないかも?

協力:本田技研工業