北中米ワールドカップのアジア最終予選、グループCの日本代表は6試合を消化して5勝1分の勝点16で単独首位に立っている。
<グループCの順位表/2024年11月19日現在)
1位/日本/勝点16/5勝1分/22得点・2失点
2位/オーストラリア/勝点7/1勝4分1敗/6得点・5失点
3位/インドネシア/勝点6/1勝3分2敗/6得点・9失点
4位/サウジアラビア/勝点6/1勝3分2敗/3得点・6失点
5位/バーレーン/勝点6/1勝3分2敗/5得点・10失点
6位/中国/勝点6/2勝4敗/6得点・16失点
順位表を見ても分かるように、2位以下は大混戦。その5か国に背中さえ見せない日本の強さは異次元と言えるだろう。
アジア最終予選は勝点を積み上げればいいと考えられた頃から、8大会連続出場に向かう日本代表は今回、勝点以上にアジアでの「勝ち方」により強くフォーカスし、それをW杯に向かってつなげているかに見える。
今回お届けするのは、森保一監督(56歳)のインタビュー後編(取材は11月22日)。6試合続けてベンチ外の長友佑都をそれでも招集した理由、今後4試合の戦い方などについて答えてくれた内容を記す。
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──選手全員が高い経験値を持って、しかし経験があるからとおごらない姿勢もこの結果の要因でしょうか(今回の初戦・中国戦に選出された27人中実に17人が前回最終予選経験者)
森保監督「選手たち全員の経験値がとても上がって、誰か1人が、というのではなく皆がリーダーとなりました。それは試合だけではなくオフ・ザ・ピッチの時間を含め、準備期間が少ない中でも自分たちの良さを御互いで引き出し合って、意思統一をしてコミュニケーションを取っている。ピッチ外でもそういう姿勢を強く感じます」
──38歳、最年長の長友選手が3月シリーズで代表に復帰してからその存在感、好影響は誰もが認めています。一方最終予選ここまで6試合全てでベンチ外でした。
森保監督「申し訳ない、のひと言です。メンバーに入りたいとの気持ちがとても強く、本人も試合前日までその思いでトレーニングをしている。その中でベンチ外を受け入れて、バックアップメンバーとしてしっかり、本当に最高の働きをしてくれた。彼を選出している理由にはもちろん、経験値をチームのレベルアップに活かして欲しいとの思いはあります。ただバックアップメンバーとして呼んでいるのではない。J1でも出場を続けていますし(今季J1で28試合に出場中)、実は練習中に薫(三笘)を止める回数は佑都が一番多いんです。6試合悔しい思いをしているけれど、ピッチでもベンチでも、ベンチに入れなくても自分にできることを全力でグイグイ、背中で見せてくれる、と言いますか、いやもう背中だけじゃなくて全身で見せてくれる」
──想像できます。長友選手は2010年のW杯南ア大会のアジア予選から4大会全てで予選から突破し今回は5大会目。10月シリーズで、ベンチ外が続く状況について難しいのでは? と取材で問われ、難しくて誰もができることじゃないからこそ自分がここに(選ばれて)いる、と答えていました。
森保監督「長友や(最終予選からスタッフに入った)長谷部(誠)コーチは選手として最終予選の修羅場を何度もくぐっていますから、彼らがいることでチームの安定感や結束力は高まったと思います」
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──最速での王手、突破がかかった3月に向けてどんな準備を考えていますか?
森保監督「最速かどうかよりも先ずは来年3月からの試合で、(W杯の)出場権を確実に掴み取らなくてはなりません。一戦、一戦、勝利にこだわって、できればW杯出場を早く決めたい。そこから本大会での選手起用だったり、戦術の幅を持たせられるようステップアップしたいのですが、(インターショナルマッチウイーク)に選手を招集できる時間も限られているんですよね。見たい選手は本当に大勢いるんですが…今後の日本サッカーのレベルアップにつながる高く、強い頂点を目指して3月からも戦いたい」
──本大会でのメンバー編成については何か考えていますか。
森保監督「今選ばれている選手だけではなく、若い選手たちや、代表招集がこれまでなかった選手、代表招集から時間的に遠ざかっている選手たちは自分のチームで存在感を見せまくって欲しいですね。ヨーロッパにいる選手たちは普段、何を、どのポジションでやっているのか、本当に細かく見せてもらっていますし、日本代表の戦術として戦い方に反映していますから」
──過去の最終予選は、アジア独特の厳しい戦いを乗り越えて、次はW杯でヨーロッパ、南米を相手にどうするか、と2つの違う問題を解いてW杯に臨む感覚でした。今回は少し違うように見えます。
森保監督「例えばサウジアラビア戦で経験した、押し込まれている時間帯はW杯でも絶対的にあり得る状況です。押し込まれても我慢して勝っていく。また、自分たちがボール保持率を高くして試合をする場合もあります。インドネシア戦ではジャッジを想定して、相手のシュートの際には(ハンドを取られないために)皆、腕をしっかり畳んでいましたし、雨の中のスライディングでもイエローを受けないためにとても慎重でした。選手たちは相手との力関係でイケイケにならなかった。アジアだから、とか世界とアジアの違うと考えるよりは、選択肢の違いだと捉えているからです。もし、ブラジルやアルゼンチンがアジアの試合に来たとして、アジアは違うから、と戦い方を変えるかといえば、多分そんなことはしないでしょう」
──アジアの戦いと世界は違う、と考えるのではなく、どちらも戦い方の選択肢のひとつと。
森保監督「そう言っておきながら、やはりアジアの気候だったり、ジャッジ(審判の判定)、ピッチは独特で別の感じはあります。目の前の局面を戦って、乗り越えて、だけどその先(W杯)もあるんだよと選手と共有しながらやっています」
──前回の予選中、監督は世界一になるために、とか、世界一を目指してなど世界一というワードは使っていませんでした。突破した後は、まだ見ぬ景色といった表現で史上初のベスト8を掲げましたが、今回はもう世界一と。言葉の選び方に理由はありますか?
森保監督「目の前の一戦一戦に全力で勝利を目指す、と言いながら、世界一を目指して、とも話していますから矛盾していますが、(カタール)W杯で日本は優勝できると思いました。日本代表は2050年までにW杯優勝と掲げています(2050年にW杯を開催し、日本代表は優勝チームとなる=JFA2005年宣言の中の”JFAの約束2050”の一つ)。でももう2050は取っ払っていいんじゃないかなと。優勝を目指すのは当たり前なんで20年以上先よりも、今の目標としての優勝、世界一を目指せばいいんじゃないかと、50年に、ではなくて今のレベルからコツコツ積み上げれば、自分がその時監督かどうかではなくて自然とそこ(優勝)には到達するでしょう。私はコツコツ派なんです。隙なく、油断なく、堅実に。これが私にとって原点というか、この仕事の好きなところです」
取材・文●増島みどり(スポーツライター)
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