巨額の資金調達を行って自社株買いを実施
過去5年における「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の検索数は、2020年4月から5月にかけてピークを迎えたが、その後は右肩下がり。最盛期を100とすると、現在は20を下回る水準だ。「出前館」もほぼ同じである。
アメリカでシェアの高い「DoorDash」を調査すると、2024年2月に一時的に検索数が膨らんで100を形成しているが、60~70で安定的に推移している。この傾向は「Uber Eats」にも当てはまる。
2022年にDoorDashとfoodpanda、DiDi Foodが相次いで日本から撤退したが、コロナ禍ですら海外勢にとって日本は魅力的な市場ではなかったということだ。
出前館は2021年9月にZホールディングス(現:LINEヤフー)などから834億円もの資金を調達した。出前館は2024年8月期に37億円もの純損失を出しているが、これは資金調達による潤沢なキャッシュがあってのものだ。
しかし、出前館は2024年7月に最大50億円の自社株買いを行うと発表した。すでに9億円近い自社株を買い取っている。
巨額の資金調達は成長に必要な投資を行うことが目的だったはず。配達員の獲得やマーケティングに投じる計画だったのだろうが、今やその一部が、株価対策の自社株買いに使われているのだ。
白旗をあげているようにさえ見える。
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度重なる価格改定と発注数の減少で稼げない職種に?
市場縮小の影響を真正面から受けるのが配達員だろう。
フリーランス協会は配達員の実態調査(「フードデリバリー配達員実態調査」)を行っているが、それによると、1週間の平均報酬で10万以上15万円未満との回答は2024年が4.2%で、2021年の6.5%から2.3ポイント低下している。
15万円以上20万円も1.1%から0.7%に下がった。その一方で、1万円以上10万円未満のゾーンがそれぞれ増加している。
つまり、かつてのように稼げる仕事ではなくなっているのだ。
出前館は2023年8月に配達員の基本報酬を引き下げた。同年は3月にも値下げ基調の改定を行っていた。
配達員への報酬を引き下げているのはUber Eatsも同じである。
フリーランス協会の調査では、個人年収に占める配達員としての収入割合が100%と回答した人は、26.9%で最も多い。調査した2万6550人中、7153人だ。次に多いのが2~3割で19.0%。1割が17.3%と続く。
つまり、専業配達員と1~3割程度の軽い副業配達員で二極化している。
フードデリバリーの市場が本格的に縮小するのであれば、この傾向は更に進むだろう。そして、稼ぎたい一方で仕事が少ない専門配達員は別の職種を選択するケースも増えるのではないか。
そうなるのであれば、出前館やUber Eatsなどのサービス提供者は、配達の質を高めるためのモチベーション維持に注力する必要があるだろう。
市場の停滞と利益を出しづらいというビジネス構造の中、難しいかじ取りを迫られる可能性もある。
取材・文/不破 聡