東大首席→財務省官僚→弁護士→ハーバード留学。輝かしい経歴を持ちながらも、「自分を天才とは思わない」と言う山口真由氏が、努力の具体的な実践方法を伝授する『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』(扶桑社新社)より一部抜粋・再構成してお届けする。自分自身の得意分野や適性を簡単に知る方法とは。
たった4分野の評価をすればいい
得意分野でプロフェッショナルになる、そう思ったときに、では、自分の得意分野はどこなのかがわからない、と思われる方のほうが多いのではないかと思います。
これはしごく当然のことです。誰でも、自分を基準に考えているので、自分がその分野で秀でた能力があると気付かずに、部下や後輩に対して「どうしてこんな簡単なことができないんだろう」と不満に思うものだからです。
私も、高校生のときには、自分が「特に読むのが速い」と思ったことはありませんでした。自覚したのは、何回かまわりの人に「もうこんなに読んだの?」と驚かれたから。周囲の反応を見ながら、能力について気付いて、それに自信を持つようになっていったのです。自分が得意なことを探すのは、案外難しいのではないかと思います。今いる環境が自分に合っていなければ、見つけることすらできないかもしれません。得意なものと出合うこと自体、運の要素も大きいと思います。
だから、ここでは自分の「得意分野」を測るための指標を使いたいと思います。ビジネスにおいて求められるのは、「アウトプットする力」です。そして、精度の高いアウトプットをするためには、必ず「インプットする力」を組み合わせる必要があります。「インプットする力」としては「読む」ことと「聞く」ことが、「アウトプットする力」としては、「書く」ことと「話す」ことが挙げられます。
つまり、自分の得意分野を見極めるために、誰もが小さい頃から日常生活のなかで行っているこれらの4つの行動について、自分の能力を評価すればいいだけなのです。もし、自分での評価が難しければ、自分のまわりの人と比べるのがよいでしょう。
また、「読む」と「聞く」は内向的タイプで、「書く」と「話す」は外交的タイプと、ここでは便宜的に分けることとします。
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ひとつの分野を5段階で評価
私を例にとると、私の場合は圧倒的に「読む」ことに特化した人間であるといえます。ここは5段階でいえば「5」です。その次に得意なことは「聞く」ことで、「4」だと思います。次は「書く」ことで「3」くらいとしておきましょう。もっとも苦手なのは「話す」ことで、これは「1」です。
すると、私はやや内向的な方向に寄った、インプット型人間であることがわかります。ですから、私が努力すべきことは、やはりインプット作業を主としたものとなります。
ほかの例を出しましょう。
たとえば、小学校時代の親友の話をすると、彼女は「話す」ことは文句なく「5」でした。誰もが彼女の話に魅了され、彼女がいるだけで、その場に笑いが起こり、ぱっと明るい雰囲気になりました。次に、話を「聞く」のは「4」でした。相づちの打ち方もうまく、彼女に話しただけで悩みが解決した、と思ってしまうくらい聞き上手だったのです。
一方、「書く」ことについては苦手で「2」です。実際に、彼女と交換日記をしたことがありました。話しているときは気にならなかったものの、彼女の文章は飛躍が多くて、主語や述語もはっきりしなくて、なかなか読みにくいなと思いました。
そして、もっとも苦手なのは「読む」こと。大人になってからの彼女は、教科書以外の本を読むことはなかったと公言していました。評価でいえば「1」になるでしょう。
すると、彼女が努力すべきところは、「聞く」と「話す」に特化した外交的なこととなります。ちなみに彼女は、いま美容師をしています。彼女によると、美容師というのは技術はもちろんですが、お客様とのコミュニケーションがとても大事だそうです。話すことも、お客様の話に相づちを打つことも、とても得意な彼女には、まさに天職といえると思います。
ほかの例でいえば、たとえば私の経験してきた分野だと、官僚は、政治家に対して口頭で報告する場合が多く、「話す」能力は、一流の官僚であるための大事な要件でした。これに対して、弁護士、少なくとも企業法務に従事する弁護士は、依頼者に対して文章で答えることが多く、「書く」能力にかけてはプロフェッショナルであることが求められます。