カフェで楽しみたいのは「コーヒー」と「建築」
建物の洋館の部分はカフェ。こちらではコーヒーが楽しめる。いやコーヒーと建築が楽しめると書き直しておこう。天井の高いこの部屋はダンスホールであったらしい。個人宅にダンスホールがあったとは! 天井からは大きなシャンデリア、壁にはマントルピース。シャンデリアは新調されたものだが、マントルピースや窓枠は当時のままだそう。
コーヒーをゆっくり味わっていると、何十年も昔のホームパーティーの様子が頭に浮かび、人々の会話や当時のざわめきが聞こえてくる気がする。住宅街ゆえに不可能なことは百も承知だけれど、ここでパーティーをやってみたい。大きなスピーカーを置いて音楽をかけ、お酒と一緒に楽しんだら気持ちいいだろうなあ。お酒はちょっといい赤ワインやシングルモルト・ウイスキーかなんかをたくさん並べてね。なーんてことを想像したくなってしまう空間なのだ。
コーヒーを監修しているのは原宿の「ノージー・コーヒー」。コーヒーのシングル・オリジンという概念を定着させた集団だ。ちなみにシングル・オリジンとは、ワインのように農場という単位でコーヒー豆を取り扱うこと。なんてことも、こちらのセミナーで知った。時々ノージー・コーヒーの創業者である能城政隆さんがセミナーを行なっている。
北橋カフェではコーヒーのティーバッグが販売されていて、最近コーヒーのハンドドリップに凝っている私は、内心「ティーバッグ?」なんて思ったのだけれど、使ってみて最初に心の中で謝りました。ハンドドリップの余裕がない時にはこれで充分だった。
先日は海外から帰国して鎌倉に遊びにくる友人をランチの後にどこか案内したいと相談され、北橋のカフェを推薦したら、とても喜ばれた。
さて、小腹も空いてきたことだし、パソコンを閉めて、北橋に時間旅行に出かけよう。
写真・文/甘糟りり子
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鎌倉だから、おいしい。
甘糟りり子
2020年4月3日発売1,650円(税込)四六判/192ページISBN:978-4-08-788037-3
この本を手にとってくださって、ありがとう。
でも、もし、あなたが鎌倉の飲食店のガイドブックを探しているのなら、
ごめんなさい。これは、そういう本ではありません。(著者まえがきより抜粋)
幼少期から鎌倉で育ち、今なお住み続ける著者が、愛し、慈しみ、ともに過ごしてきたともいえる、鎌倉の珠玉の美味を語るエッセイ集。
お屋敷街に佇む未来の老舗(イチリンハナレ)、自営の畑を持つ野菜のビーン・トゥー・バー(オステリア・ジョイア)、カレーもいいけれど私はビーフサラダ(珊瑚礁 本店)、今はなき丸山亭の流れをくむ一軒(ブラッスリー・シェ・アキ)、かつての鎌倉文士に想いを馳せながら(天ぷら ひろみ)……ガイドブックやグルメサイトでは絶対にわからない、鎌倉育ちだから知っているおいしさと魅力に出会える1冊。
素材が豪華ならいいというものでもない、店の内装もまた味わいの一端を担うもの、いいバーとバーテンダーに出会う喜び……著者自身の思い出や実体験とともに語られる鎌倉のおいしいものたちは、自然と「いい店」「いい味」ってこういうことなんだな、という読後感をくれる。
版画のように精緻なタッチで描かれた阿部伸二によるイラストも美しく、まさに読んでおいしい、これまでなかった大人のための鎌倉グルメエッセイ。