NASA(アメリカ航空宇宙局)のボイジャー1号は今年10月、一時的に通信が中断。その後、通信できる状態にはなっていたものの、通常使用していたXバンド送信機の電源が落とされてSバンド送信機での通信に切り替わり、科学データなどの受信ができなくなっていました。Xバンドに比べSバンドは消費電力は少ないものの信号は弱く、ボイジャー1号は1981年以来、地球との通信にSバンド送信機を使用していませんでした。(参考)ボイジャー1号との通信が一時中断。通常運用にはまだ戻らず(10月31日公開記事)

NASAによると、11月初旬、ボイジャーの運用チームはXバンド送信機を再起動させ、11月18日の週に稼働中の4つの科学機器からのデータ収集を再開。現在、ボイジャー1号を問題発生前の状態に戻すため、3つの搭載コンピューターを同期するシステムのリセットなど、いくつかの残された作業をしているとのことです。

障害保護システムが送信機を切り替えた

10月中旬に、ボイジャー1号のヒーターの一つの電源を入れるコマンドを送信した際、探査機の障害保護システムによってXバンド送信機の電源が切られてしまいました。

障害保護システムはこれまで、利用可能な電力が少なすぎることを検知すると、重要なシステムに電力がいくように、飛行に不可欠ではないシステムを自動的にオフにする措置をとっていました。ただボイジャー1号はすでに、科学機器以外の重要でないシステムはすべてオフになっています。そのため、障害保護システムはXバンド送信機をオフにして、消費電力の少ないSバンド送信機をオンにしました。

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老朽化によりコンピューターモデルでの予測が不確実に

ボイジャー探査機は原子力電池を搭載しており、プルトニウム238の崩壊熱を利用して電力を得ていますが、利用できる電力は年々低下し続けています。ヒーターやその他の機器がどれくらいの電力を使用するかはコンピューターモデルで予測できます。

ただ打ち上げから47年以上が経過し、2機のボイジャー探査機は老朽化が進んでいます。そのため、ハードウェアが期待通りに動作するとは限らず、コンピューターモデルの予測が確実とは限りません。NASAは、技術的な問題の発生頻度やその複雑さが増していることが、ミッションの工学チームの新たな課題になっているとしています。

(参考記事)ボイジャー1号、2号の現在地は? 今どこにいるのか

Image Credit: Caltech/NASA-JPL

(参照)Voyager – NASA blog