男女お笑いコンビ・パーパーのツッコミとネタ作りを担当している、ほしのディスコ。だが、その活動は芸人の枠にとどまらず、エッセイや漫画原作の執筆、俳優、声優、さらに本名の星野一成名義でCDデビューをはたすなど、多岐にわたる。今年10月23日に35歳の誕生日を迎えた彼が自身のキャリアについて思うことを聞いてみた。(前後編の前編)
20代前半の芸人さんからタメ口で話しかけられてます
今年コンビ結成10周年を迎えたパーパー。一般的には会社に入って10年となれば、中堅社員と呼ばれるのに十分ふさわしい時期だ。
ほしのディスコは、今の自分の立場をどう捉えているのだろう。
「全然若手ですね。中堅だと思えたことはないです。
一応『キングオブコント』とか『R-1グランプリ』とか賞レースで決勝まで行ったことはあるんですけど、毎年ファイナリストとチャンピオンが出るので、さすがにもう価値ないかもな……みたいな(笑)。冠番組もないですし。
冠番組は、持ちたいことは持ちたいです。でも10年やってきた中で、僕は仕切るタイプじゃないなという思いが年々強くなってきてるので、準レギュラーみたいな形がいちばんいいのかもしれないですね。
もしくはワンポイントで出て目立ってる、気象予報士のあまたつ(天達武史)さんみたいな立ち位置が僕の目指すところなのかなと思ってます(笑)」
そうやわらかい口調で話す姿からは、実年齢の35歳よりもずいぶん若い印象を受ける。
「声が高いこともあって、35歳になった今もナメられがちなんです。20代前半くらいのフリーの芸人さんと初めてライブで会うと、タメ口で話しかけられることも全然あって。
33歳まではスーパーでアルコールを買うときに年齢確認もされていて、そのたびにゴールド免許を見せてました。
ゴールドな時点で未成年じゃないことは伝わるはずなんですけど、偽造だと疑ってるのか、逆にしっかり見られたりして(笑)。
35歳って、堂々としたオーラとか渋さが出てきて、徐々にスーツとヒゲが似合う(パンツェッタ・)ジローラモさんに近づいていくと思ってたんですけどね。
漫才衣装で買ったスーツも、いまだに成人式で着させられた感じです(笑)」
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追いつめられて始めた“歌ってみた動画”が大バズリ
35歳という人生の節目を迎えた、ほしのディスコ。
「今まで生きてきた中でいちばん“つまずいた!”と思った出来事は?」と尋ねると、2017年に出場した『キングオブコント』を挙げてくれた。
「その年は1月からけっこういい感じできていて、夏には『お笑いハーベスト大賞』っていう大会で優勝して、『キングオブコント』の決勝にも出られて、すごくいい波に乗ってたんです。
まわりからの“これでブレイクするんじゃないか”っていう期待度も高まってた中で9位という自虐するにも微妙な結果を出して、歯車が狂ったというか、その後の出方がわからなくなっちゃったというか……。
相方(あいなぷぅ)との仲もそれをきっかけにより悪くなっていって、コンビで番組に呼ばれてもうまくいかない、みたいな時期が続いて。2020年くらいまでは、ずっともがいてましたね」
折しも新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、それまであった仕事すら失う事態に。
「なんでもいいから起爆剤になるものが欲しい」という一心で、ピンネタを作って『R-1グランプリ』を目指したり、小説を書いたりする日々が始まる。
すると、その一環で開設したYouTubeチャンネルのTHE FIRST TAKE風に歌ってみた動画が大バズリ。透き通ったハイトーンボイスに一気に注目が集まった。
「このまま消えるのかなって思った時にたった1本の歌の動画に反響があって、しかも幅広い世代の方に知ってもらえて。うれしかったですね。
2010年にデビューして10年間お笑いだけでやってきた時間を無駄だったとは思わなかったですけど、最初から歌やっとけばよかったなぁっていう気持ちにはなりました(笑)」